
作者:Danielle Valentine (別のペンネーム Danielle Vega)
Publisher : Sourcebooks Landmark
Publication date : August 5, 2025
Print length : 352 pages
ISBN-10 : 1728276918
ISBN-13 : 978-1728276915
対象年齢:一般(PG15)
読みやすさレベル:7
ジャンル:心理スリラー、ホラー
テーマ、キーワード:家族の秘密、夫婦の関係、女性の成功、復讐
素晴らしい料理を出すことで有名だが悪名も高かったレストランのシェフDamien Capelloが姿を消して自殺したとみなされたとき、メディアはあらゆる説を流した。彼の妻のMariaが殺したことを疑う者も少なくなく、死体をレストランの有名なミートボールにしたという噂はサタデー・ナイト・ライブのコントにもなった。だが、残された家族はこれまで何の反論もせずに沈黙を守ってきた。
Damienが亡くなった後はレストランも駄目になるだろうと思われていたが、Mariaは夫以上にビジネスを成功させたばかりか、ベストセラーの料理本を次々と出して業界の大物になった。
出版社の編集者Thea Woodsは、クライアントである政治家の回想録を担当したときに彼の性暴力の被害にあった女性の存在を知り、それを明るみに出してしまったことで業界での信用を失ってしまった。さらに元クライアントの政治家から名誉毀損で訴えられて大金を払わねばならなくなったが、出版社からは解雇されそうになっていて、支払う手段は考えつかない。
危機に陥っていたときに、Maria CapelloがTheaの上司にある提案を持ちかけてきた。他の大手出版社から数多くの料理本を出してきたMariaだが、Theaが担当すると約束すれば、次はこの出版社から本を出すというのだ。しかもそれは回想録だという。Theaを首にするつもりでいた上司は、大ベストセラー間違いなしの提案を喜んで受け入れた。
長年MariaのファンだったTheaにとってこれ以上ない幸運だったが、なぜMariaが自分を選んだのか納得できないでいた。
出版社の職員が発売前に本の秘密を漏らすことを恐れているMariaは、Theaが自分の屋敷があるファームに滞在して編集するという条件を出した。幼い子どもがいるTheaは躊躇するが、このチャンスを逃すわけにはいかない。子育てに普段ほとんど関わっていない夫に子供の世話を頼み、ファームに向かった。
ファームに来たTheaは、屋敷に漂っている不穏な雰囲気を察知する。Mariaと家族は何かを隠しているようだ。Mariaが少しづつ渡す彼女の過去の話と現在ファームで起こっている不可思議な出来事が重なり、Theaはだんだんパラノイアに陥ってくる…。
Mariaはマーサ・スチュワートを彷彿とさせるキャラクターで、温和なおばあちゃん料理人のような雰囲気は表向きのものである。夫よりも優れた才能と技術を持つのに自分のレシピを夫から奪われ、料理人としてのアイデンティティもプライドも奪われ、ただの主婦の立場を押し付けられた妻が、自分自身の成功のために作り上げた仮面である。その部分に共感し、応援したくなる読者はきっといることだろう。
時々入り込んでくる(Mariaが回想録のために書いたことになっている)イタリア料理のレシピは本物なので、つい試してみたくなる(ミートボールもある)。読んでいてお腹がすく珍しいホラー・ミステリである。

