Category: 政治・経済・時事問題・ルポ

世界に波紋を広げるビジネス書-World Wide Rave

「Dummiesシリーズ」でおなじみのWiley社の春季いちおしビジネス本 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=0470395001&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 さてまずは最初に著者が私の夫だということを告白しておきますね。 でも「Dummiesシリーズ」でおなじみのWiley社の春季いちおしビジネス本だというのは嘘でも誇張でもありません。World Wide Raveというタイトルは、World Wide Wave(インターネットのwww.)と一字違い。静かな水面に小石を投げるように、ひとりが発信したメッセージ、アイディア、プロダクトがネット上で多くの人のRave(激賞)となって広がってゆくことを表現した(彼がある日と考え付いた)造語です。この本には、World Wide Rave(WWR)を引き起こすための6つのルールとこのルールに従ってマーケティングに成功した企業や個人の事例が載っています。下はそれをビジュアルに表現したビデオです。参加したのは、この本に登場するWWRの成功者と著者のブログで「私も参加させて!」と手を挙げた世界各国からのWorld Wide Ravesファンたちです。 私が個人的に特に気に入っているのは、本ブログでもご紹介した“Still Alice”の作者リサ・ジェノバさんの例です。文芸エージェントたちが徹底的に無視した本が自費出版で大ブレイクし、大手出版社から再出版されることになったいきさつがこの本に書かれています。その後日談ですが、“Still Alice”はニューヨークタイムズ紙のベストセラーに入り、日本を含め多くの国での翻訳が決まり、1月末から2月にかけてニューヨークタイムズ紙、タイムマガジン、USA…

Life’s a campaign

著者:Chris Matthews2007年10月初刊ノンフィクション/政治 カチンとくる部分が多いけれども、アメリカの政治のカラクリを覗き見するのには最適 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=1400065283&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 著者のクリス・マシューズは、若かりし頃ジミー・カーター大統領のスピーチライターを勤め、現在はMSNBCの「ハードボール」という政治番組の司会をしている自称「政治ジャンキー」のジャーナリストです。政治の世界が好きで好きでたまらない、というのは彼を見ているとよくわかります。共和党か民主党かにかかわらずゲストにいいかげんなプロパガンダをさせない鋭い質問をするところは気に入っているのですが、質問をしておきながら相手に答えるチャンスを与えずに自分で返事をする悪い癖があります。また、唖然とするような偏見に満ちた発言もします。それについては別のブログで書いたので省きますが、「Oh shut up, Chris!」とテレビに向かって言い返しつつも毎日見てしまうのは、夕食の支度と後片付けが彼の番組の時間帯に重なるからというだけではなく、政治ジャンキーを魅了するコツを心得ているからだと思うのです。「Life’s a campaign(人生はキャンペーンだ)」というタイトルをつけるだけあって、マシューズは体験から得た世渡りの知恵をすべて政治の世界の戦略に例えています。私がこの本を「好き」と言えない理由は、マシューズの見解があまりにも独断と偏見に満ちたものだからです。彼は政治家の言動をすべて戦略として分析するのですが、私はそんな単純なものではないと思うのです。(彼が嫌いなヒラリー・クリントンも含めて)政治家だって、自分が本当に信じていることだからこそ実行することがあるはずです。それに、人は勝つことや偉くなるためだけに生きているわけじゃあないと思うのです。この本をそのまま鵜呑みにしたら、とてつもなく空虚な人生を生きることになりそうです。 そういったわけでLife’s a campaignをハウツー本として読んで世渡り上手になることはお勧めできませんが、それを承知の上でしたら読む価値はあります。というのは、政治関係の本の中では飛びぬけて読みやすく、しかもアメリカの政治のカラクリを覗き見させてくれる本だからです。 ●読みやすさ ★★★☆☆ 語り言葉のようで非常に簡単な英語です。ただし、政治に関する専門用語は出てきますのでそれが同じ★数のヤングアダルト本とは異なるところです。でも政治に興味がある人でしたらとても簡単に感じるでしょう。 ●ここが魅力!ともかく読みやすいこと。雑誌で映画スターの噂話を読む感覚で政治の世界を読むことができます。

Hot, Flat, and Crowded

著者:Thomas L. Friedman 2008年9月初刊 ジャンル:ノンフィクション/科学/時事問題 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=0374166854&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 http://rcm.amazon.com/e/cm?t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&asins=0374166854&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 人類の抱える緊急問題と解決策がぎっしり詰まった本 Hot, Flat, and Crowdedは、地球の温暖化、人口の爆発的増加といった世界が直面する緊急問題とその解決策を提示したフリードマンの最新作である。周囲の中高年の男性はみんな読んでいる。時間に追われる知人のコンサルタントさえ移動時にiPodで聞いているというので、私も話題に取り残されないように早速読むことにした。 まずは、米国を現在の情けない状況に追いやった元凶の糾弾から始まる。レーガンにブッシュ、自動車産業など先見の明に欠ける横柄な態度の列挙は、まるでわが家の食卓での会話のようで胸がすっきりする。彼がお手本として使うホンダとトヨタにも拍手喝采したくなる。 最初はこうして自国をこき下ろすが、フリードマンのうまいところは、「最終的に米国こそが世界を救うリーダーになるべきだ」と国民の楽観的な性格とヒロイズムに訴えかけることだ。よく考えると実行が難しいことでも、「やれそう」で「やらねばならぬ」という気にさせる巧みさ、そして専門の中近東外交だけでなく世界中のあらゆる産業についての博識ぶり、これがフリードマンの魅力である。 注目すべきは、フリードマンが語るクリーンエネルギー産業の将来性である。オバマ次期大統領(現時点)が宣言したように、最初は赤字を増やしてでもクリーンエネルギーに投資するという政策が実現したら、米国には後からやってきて他国を追い抜く力がある。日本にはこの闘いにぜひ勝ってほしいが。…

Outliers

作者:Malcolm Gladwell 2008年初刊 ジャンル:ノンフィクション/社会心理・応用心理/ビジネス http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=0316017922&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 http://rcm.amazon.com/e/cm?t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&asins=0316017922&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 アメリカ人ビジネスマンに大人気 ベストセラーで邦訳もされている「The Tipping Point」と「blink」の作者マルコム・グラッドウェルの最新刊。アメリカでは2008年11月18日に出版されたばかりだがすでにベストセラーのリストにあがっている。 「Outlier」とは、「他のものとは異なる、外れている」といった意味で異常値とも訳される。グラッドウェルがこの本で扱っているのは、一般集団から外れて並外れた成功を収めた者に共通するファクターである。 たとえばカナダのアイスホッケーのプロの選手には1月か2月の誕生日が多いが、それには意外な理由が潜んでいるようなのだ。また、他人よりもはるかに優れた才能があれば必ず成功するというものでもないことをグラッドウェルは指摘する。成功のためにはもちろんある程度の才能は必要だが、それと同等かそれ以上に育った環境やタイミングが影響を与えていることを彼は例を挙げて強調する。 こういったアイディアをマイクロソフトのビル・ゲイツやビートルズ、モーツアルト、といった誰でも知っている人物をあげて説明するのはこれまでにも使い古された手法だが、語りのテクニックのうまさがグラッドウェルをベストセラー作家にしているのだろう。 また、「なぜアジア人は数学ができるのか?」といったアメリカ人向けの解説は、日本人として別の意味で興味深い。 「The…

The Great Derangement

作者:Matt Taibbi 2008年初刊 ジャンル:ノンフィクション/時事問題 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=0385520344&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 ローリングストーン誌のコラムニストとして有名なMatt Taibbi(マット・タイビ)が、現在のアメリカのかく乱(derangement)を鮮やかに描いた傑作なノンフィクション。 ブッシュ大統領のもと、過去8年間のアメリカ合衆国は、イラク戦争から捕虜の拷問まで他国から「かく乱している」と思われても仕方のない行動ばかりとってきた。 他国の人々はアメリカ合衆国とその住人をひとまとめに評価するが、実際ここに住んでいる者にとっては、Blue States(民主党が強い州)と Red States(共和党が強い州)では人々の考え方が根本的に異なる。ひとつのアメリカなどは存在しない。 私のようにBlue Stateのインターナショナルな地域に住んでいると、アメリカのどまんなかの村から一歩も外に出たことがない田舎者が何を考えているのか想像もつかない。 けれども、そういう「アメリカのどまんなかの村から一歩も外に出たことのない田舎者」が、過去8年間のアメリカ合衆国の方向性を決めてきたといっても言いすぎではないのである。まったく不条理の世界なのだ。…