親を失う恐怖と悲嘆を瞑想的に描いた傑作ー A Monster Calls

Patrick Ness
(Siobhan Dowdのアイディアをベースにした作品)
ハードカバー: 224ページ
出版社: Candlewick
ISBN-10: 0763655597
ISBN-13: 978-0763655594
発売日: 2011/9/15

文芸小説/児童書(小学校高学年から高校生)/親の死、悲嘆

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13歳のコナーは毎晩のように悪夢にうなされていた。母親ががんの治療を始めたころからスタートしたその夢のことは誰にも話したことはなかったが、ある夜、悪夢から目覚めたコナーのもとにモンスターがやってきた。

けれども、それはコナーが怖れていたモンスターではなく、裏庭に生えているYew(イチイ)の木のモンスターだった。コナーに呼ばれて3つの「物語」を話すためにやってきたというモンスターは、3つの物語を伝え終わったら、最後にコナーが自分自身の物語を話すことになっていると言う。



7年前に父が家族を捨てて新しい妻とアメリカに行ってから、コナーは母と二人きりで暮らしてきた。家庭ではがんの母に迷惑をかけない良い子として苦しみや悲しみを内部に閉じ込め、学校では虐められるか、腫れ物扱いされて、孤立していたのだが、Yewのモンスターが12時7分に現れて理屈にあわない物語を話すようになってから、モンスターのように暴れ始める。

モンスターが現れて寓話を語るA Monster Callsは、親の闘病と予期される死、という子どもにとっては耐え難い恐怖と悲嘆にまっすぐ向き合う思慮深い小説である。

●ここが魅力!

2010年の「これを読まずして年は越せないで賞」で審査員をお願いしたちょこさんの推薦で、米国発売と同時に手に入れた本です。
ちょこさんが推薦されただけあって、とても素晴らしい作品でした。

以前ご紹介した「London Eye Mystery」の作者Siobhan Dowdは、がんの闘病中に執筆を始めたA Monster Callsを書き終えることなく、亡くなりました。 Patrick Nessは、生前のDowdとは面識がなかったのですが、彼女の意志を継いで作品を完成するよう依頼されました。残っていたのは、登場人物と設定、そして最初の部分だけです。

Nessが作り上げたA Monster Callsは、美しく、繊細で、勇敢で、パワフルです。ちょこさんにあらかじめ注意されていたのですが、やはり、おいおい泣いてしまいました。自宅でひとりで読んでいて良かったです。
イラストもアートとして楽しめますし、使っている紙も、本の作りも上質です。
一応「児童書」ということになっていますが、これはぜひ大人に読んでいただきたい本です。

トレーラーが素敵ですから、ぜひご覧になってください。

●よみやすさ 普通〜やや簡単

簡潔ですが詩的な文章です。これを簡単に感じるか、難しく感じるかは、ふだん読んでいる本のタイプで異なると思います。
小説を読み慣れている方には簡単に感じるでしょう。
ページ数が少ないので、いったん入り込めば、すぐに読み切ることはできます。また、イラストが多いので、雰囲気をつかみやすいと思います。

●おすすめの年齢

小学校高学年からにしていますが、この年齢の場合には、モンスターの3つの物語の意味や、最後のコナーの物語の意味が分からないと思います。ですから、読むとしたら、保護者やそれに匹敵する大人が一緒に読んで説明してあげてください。

大人にはこれらの物語に秘められた意味がよく分かると思いますので、大人にこそおすすめしたい本です。

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