歴史に埋没されたバルト三国の悲劇 Between Shades of Gray

Ruta Sepetys
ハードカバー 344 ページ
出版社 Philomel Books
ISBN: 0399254129
出版日2011年3月22日
ヤングアダルト/歴史小説/スターリン/民族大虐殺

第二次世界大戦でのナチスドイツによるユダヤ人虐殺は、多くの文学、映画の題材にもなり、否定する人も含め、知らない人はいない。
だが、同じ時代に、ソビエト連邦とドイツの両方から侵略されたバルト三国で起こった悲劇を知る人はほとんどいない。その国の子孫でさえも。
1939年、ソビエト連邦がバルト三国(リトアニア、ラトビア、エストニア)を侵略し、これらの国は地図の上から姿を消した。三国にとっての悲劇は、それだけではなかった。侵略の直後からスターリンが指揮するソビエト連邦政府は、医師、弁護士、ジャーナリスト、教師、ビジネスマン、音楽家、アーティストなどの知識階層を「謀反者」として逮捕し、処刑、あるいは強制収容所に送ったのである。
スターリンが率いるソビエト連邦に殺された者は二千万人を超え、それは三国の人口の三分の一以上だったという。
なぜこれほどの大虐殺が知られていないのだろうか?
それは、生存者たちが戦後も「犯罪者」として隔離されてきたからである。彼らの友人や親戚たちも、「犯罪者」のことを語るだけで犯罪者として逮捕され強制収容所に送られる可能性がある。だから、誰もが口をつぐんできたのだ。
1991年、リトアニア、ラトビア、エストニアは、ソビエト連邦による過酷な占領からようやく開放されて独立することができた。けれども、50年間恐怖で支配されてきた人々にとっては、もはや語ることさえ苦痛すぎるのであった。

著者のSepetysはリトアニア系のアメリカ人で、リトアニアを訪問したときに、初めて自分の民族の歴史を知る。そこで彼女の祖父や親戚に起こった悲劇を、小説の形で語ることにしたのである。

日本人がこういった本を読むときに考えて欲しいのは「国」の意味と意義である。
第二次大戦後に日本は米国に占領されたが、ソ連に占領されていたとしたら、まったく異なる国になっていただろう。読者や私が今生存していたかどうかも疑わしい。それがまずひとつ。
もうひとつは、「軍隊なんか不要だ。日本が貧しくなっても平和な国として存在すればいいじゃないか」という考え方の甘さである。
経済力も防衛力も政治力もない小国は、侵略されやすい。侵略されたら、そのたびに虫けらのように殺される。人間としての尊厳などはない。
そういう厳しいものなのだということを、今の日本人は考えもしない。平和はあってあたりまえと思っている。
若い頃の私がそうだった。
英国で出会ったスイス人に「スイスは軍隊が強いから中立国としてやってゆけるのだ」と言われ、「軍隊かぶれ」とか「洗脳されてる」と心の中で揶揄し、「中立国だったのは、ドイツの財産を隠してあげたからじゃないの」などと思っていた。そういった裏取引があったのは否めないが、小国が生き延びるためには、強くなければならないのである。

この本は小説だが、軽い気持ちでは読めない。暗澹とする。
でも、読む価値はあるし、ぜひ読んで欲しい。そして、他人ごととして読まないでほしい。
そして、「政府」まかせではなく、自分自身が日本をどう守って行くのか、考えてほしい。

下記のビデオは著者による、本書の説明である。

Ruta Sepetys discusses her upcoming novel, Between Shades of Gray from Penguin Young Readers Group on Vimeo.

●読みやすさ 普通〜やや読みやすい

一人称の語りであり、率直な語り口なので、読みやすいと思う。
固有名詞以外は、大学受験英語の単語力で読めるのではないかと思う。

●おすすめの年齢層

Prostituteという単語の意味を知らねばならない部分があり、それに含まれた屈辱などの心理を知る必要がある。そういう意味で中学生以上。

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