パンク時代をノスタルジックに体験できるとびきりの回想記 Clothes, Clothes, Clothes. Music, Music, Music. Boys, Boys, Boys

著者:Viv Albertine
ハードカバー: 421ページ
出版社: Thomas Dunne Books
ISBN-10: 1250065992
発売日: 2014/11/25
適正年齢:PG15(セックス、ドラッグ、&ロックンロールだから。。。)
難易度:中級+(文章は非常にシンプル。ロックの世界に興味があるかどうかが理解度の鍵)
ジャンル:回想記(音楽、パンクロック)
キーワード:パンクロック、スリッツ、セックス・ピストルズ、クラッシュ、ミック・ジョーンズ、シド・ヴィシャス、ヴィヴィアン・ウエストウッド

パンクブームのさなかの1976年に誕生した女性だけのパンクバンドThe Slits(スリッツ)のギタリストだったViv Albertine(ヴィヴ・アルバータイン)の回想記。

「Clothes, Clothes, Clothes. Music, Music, Music. Boys, Boys, Boys」という風変わりなタイトルは、学校から戻ってきてそういう話ばかりする娘に、「あなたって、服と音楽と男の子の話ばっかりなのね」と呆れた母親の台詞である。タイトルどおりに、ファッション、音楽、恋愛を中心とした著者の波乱に満ちた半生を描いている。


有名人の回想記はプロのゴーストライターが書いていることが多いが、本書はViv本人が書いている。決して美文ではなく、むしろイラストで言えば「ヘタウマ」のような感じで味わいがある。私自身がVivになってパンク時代を生き直しているような気がしてくるのがいい。

私はVivより5歳年下で、81年にキングスロードに面した大学のドミトリーに住んだ体験がある。そういう意味でも、すこぶるノスタルジックになった。

私はパンクの大ファンではなかったけれど、セックス・ピストルズやクラッシュは聴いた。音楽ファンにとって神のような存在だったセックス・ピストルズのシド・ヴィシャスやクラッシュのミック・ジョーンズ(ほかにも後に有名になるロックミュージシャンがいっぱい)が、ヴィヴの回想記では「ふつうの男の子(Boys)」として登場する。これって、年配ロックファンには、普通のロマンス小説より「胸ドキ度」が高いのではないだろうか。

特にティーンのときに出会って、何度も別れや再会を繰り返したVivとMick Jonesのラブストーリーにはぐっとくる。22歳までまったく楽器のトレーニングをしたことがなかったVivと一緒にギターを買いに行き、音楽の世界へ背中を押してくれたのがMickなのだ。

お互いにとって大切な存在であるにもかかわらず一緒にいることができない二人は、最後に別れた後に互いのことを歌にしている。クラッシュの『Train in Vain(You Tube歌詞)』は、Mickがよく汽車に乗ってVivに会いに行ったのにつれなくされて戻ってきた体験を語った歌で、スリッツの『Ping Pong Affair(You Tube歌詞)』はVivがMickについて書いた歌だ。

VivがSex PistolsのSid ViciousやThe ClashのKeith Leveneと一緒にThe Flowers of Romanceという幻のバンドを作っていたのはまったく知らなかった。一曲も作らなかったのに、後に有名になるメンバーばかりというのも面白い。面白いといえば、Vivがお手本として尊敬していたのがYoko OnoとPatti Smithというのも興味深い。彼女の音楽を聴くと当然のような気もするが。

アメリカから日本に向かう旅の途中で(不眠で)すべて読みきってしまったほど面白かったのだが、読者を選ぶ類の本である。

あの時代にロックを聴いて育った私くらいの年代の人にとっては、胸キュンだらけの宝物のような本だ。また、現在のロックファンは、知らない時代を自分のこととして体験できて興味深いだろう。

けれども、ロックに無関心な人にとってはVivの生き方は無責任で無意味に感じるかもしれない。でも、Vivはとても特別な女性なのだから、特別な生き方をしていいのである。今年60歳なのに、いまだに魅力的なVivに憧れる私である。

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