動物ものの児童書にありがちなキュートさを避けた、心に残る児童書 PAX

著者:Sara Pennypacker(文)/Jon Klassen(イラスト)
ハードカバー: 288ページ
出版社: Balzer + Bray
ISBN-10: 0062377019
発売日: 2016/2/2
対象年齢:PG9 (小学校高学年から中学生)
難易度:中級レベル
ジャンル:児童書(9-12)
キーワード:動物と子ども、キツネ、Red fox、戦争、成長物語

特定されていないある国で、戦争がまた始まろうとしていた。
12歳の少年Peterは、父が従軍するために、遠く離れた祖父の家で暮らすことになる。

Peterは、死にかけていた赤ん坊のキツネ(red fox)を救い、Paxと名付けて世話をしてきた。PaxとPeterは、ときどき互いの気持ちに入り込むほど強い絆を持っている。だが、父は祖父の家に行く前にPaxを森に放すよう命じる。

どうしてもPaxのことを忘れることができないPeterは、Paxを救うために300マイル(約500km)の道中を歩いて戻ることにする。だが、それは容易なことではなかった。

これまで自分で餌を捕獲したことがないPaxは、野生の世界で生き残る術を知らない。ほかのキツネと出会い、少しずつ野生のキツネとしての生き方を学んでいくが、Peterのことを忘れたことはない。

これまで互いを支え合ってきた少年とキツネは、単独で困難と対面し、戦う。再び出会う日を夢見て……。

Paxは、少年とキツネそれぞれの成長の物語だ。8ヶ月後に出会ったPeterとPaxは、互いが変わったことに気づく。互いへの愛は変わらないが、それぞれの世界で生きることを学んだことを嗅ぎ取る。

ベテラン作家のPennypackerは、キツネを擬人化しすぎないように専門家から生態について詳しく学んだという。何年か前にお会いして話をしたことがあるが、子どもの視点を忘れない人だ。そして、イラストは、私が大好きなJon Klassen。最高の組み合わせだ。

動物が登場する児童書は、動物を擬人化したり、過剰にキュートにしてしまう傾向がある。むろんそういった本も楽しめるし、存在価値はある。だが、この本はちがう。もっと現実的な成長と、そのビタースイートさを描いている。今後も長く読み続けられていく本だろう。

渡辺由佳里 Yukari Watanabe Scott についてhttp://youshofanclub.comエッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家、マーケティング・ストラテジー会社共同経営者。兵庫県生まれ。 助産師としてキャリアをスタート。日本語学校のコーディネーター、外資系企業のプロダクトマネージャーなどを経て、 1995年よりアメリカに移住。 2001年に小説『ノーティアーズ』で小説新潮長篇新人賞受賞。翌年『神たちの誤算』(共に 新潮社刊)を発表。他の著書に『ゆるく、自由に、そして有意義に』(朝日出版社)、 『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)など。 最新刊『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社) ニューズウィーク日本版とケイクスで連載。 翻訳には、糸井重里氏監修の訳書『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)、『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)など。 連載 Cakes(ケイクス)|ニューズウィーク 日本版 洋書を紹介するブログ『洋書ファンクラブ』主催者 Author, translator, and English book reviewer for Japan Market. Author of "500 best books written in English" for the Japanese market. English book reviewer for Newsweek Japan. Amazon.co.jp Top 500 reviewer.

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中