北欧の民話をベースにした、マジカルなファンタジー 『The Bear and the Nightingale』

著者:Katherine Arden
ハードカバー: 336ページ
出版社: Del Rey
ISBN-10: 1101885939
発売日: 2017/1/10
適正年齢:PG15(特に問題になる表現やシーンなし)
ジャンル:文芸小説/ファンタジー
キーワード:マジックリアリズム、ロシア民話、北欧民話、伝説、『森は生きている(十二月物語)』、East of the Sun and West of the Moon、Vasilisa the Beautiful、Nightingale the Robber、ラブストーリー

14世紀、モスクワの国王に統治されている北欧の地方が舞台。
地方貴族の末娘Vasilisaは、生まれつき、森や家に棲みついている守り神や妖精が見える。自分を産んですぐに亡くなった母の家族に伝わる特別な能力だ。

田舎の人々は、見えない守り神や妖精を尊重し、お供えをしてきたが、キリスト教の威力が拡大していくにつれ、それらは悪魔だとみなされるようになる。人々に忘れ去られた守護神は、やせ細り、消えつつある。その機会に、森で邪悪な神のBearが目覚め、世界を破壊しはじめる。

Vasilisaは守護神たちを守ろうとするが、ふたつの強力な神BearとNightingaleの戦いに巻き込まれ、家族や故郷の人々からも疎外されるようになる。Vasilisaが大切にしてきたのは、故郷の森と家族、そして自由に生きることだ。けれども、そのすべてを継続することは不可能になる。

1ページめから、北欧の寒い森の美しいイメージに引き込まれる魅力的なファンタジーだ。
主人公はVasilisa the Beautiful、継母が血の繋がらない娘に真冬の森にマツユキソウを取りに行かせるところは『森は生きている(十二月物語)』、破壊的な神のBearはEast of the Sun and West of the Moon、Bearの弟である死の神はNightingale the Robberを連想させる。これまで読んだ多くの北欧神話や民話が、姿を変えて現れ、混じりあう。以前紹介したIceEast of the Sun and West of the Moonを元にしたファンタジーだが、まったく解釈が異なる。
民話や神話だけではない。美貌の狂信的なキリスト教の牧師のキャラクターは、『ジャンル別洋書ベスト500』の古典ジャンルでご紹介したThe Monkを連想させるし、『ドラキュラ』や『嵐が丘』の要素もある。わずかだが、ニール・ゲイマンのAmerican Godsも感じる。新人の作品とは思えない濃厚さだ。

もともと、ファンタジーは民話や神話から発生したフィクションなので、本書は古典的なファンタジーと言えるかもしれない。最近流行ったディストピアもののファンタジーに疲れている読者には、特に心にしみわたるだろう。

本書を読了した直後にストーリーを思い出しながらマイナス20℃のボストン近郊の森を歩いたののは贅沢な体験だった。

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マイナス20℃の森(あまりの寒さに、この直後にiPhoneがシャットダウン)

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