作者:Libba Bray
ペーパーバック: 496ページ
出版社: Little, Brown Books
ISBN-10: 0316126101
発売日: 2012/09/18
適正年齢:PG15(高校生向け。性的なシチュエーションはあるが、キス程度までで、セックスについては第3巻まで出てこない)
難易度:上級
ジャンル:YAファンタジー/パラノーマル/ホラー
キーワード:ジャズ時代、ニューヨーク、diviner(預言者)、超能力、eugeics(優生学)、人種差別、移民差別
1926年、禁酒時代のアメリカ。田舎町で失態を犯した若い女性Evie(イーヴィー)は、叔父が住むエキサイティングなニューヨークに移り住んだ。Evieは、駅を降りたとたんにプレイボーイ的な若い男Sam(サム)から20ドル盗まれ、叔父が経営する客が誰も来ないオカルト博物館「the Museum of American Folklore, Superstition, and the Occult」で、無口な青年Jericho(ジェリコ)と出会う。EvieはJerichoに惹かれるが、親友のMabel Rose(メイベル=ローズ)が彼に恋をしていることを知り、身を引くことを決める。
ニューヨークは「コットン・クラブ」などのジャズクラブの最盛期で、奔放なEvieは、コーラスガールのTheta(シータ)と仲良くなり、クラブでのパーティライフを楽しむ。
そんなとき、ニューヨークで奇怪な殺人事件が起こり始めた。犯人は、すでに死んでいるはずの連続殺人犯だった。
物を触るだけで持ち主のことがわかる不思議な能力を持つEvieは、その才能を活かして事件の解決に協力した。だが、それを隠し、博物館の経営にも努力しない叔父に憤ったEvieは、自分の能力を公表し、ラジオ局で番組を持つようになった。
しかし、divinerとしての超能力を持つのはEvieだけではなかった。Sam、Theta、Thetaと恋におちた黒人青年Memphis(メンフィス)、Thetaの親友Henry(ヘンリー)には、それぞれ異なる能力があった。
彼らが能力を得た背後には、国家が関わっていた秘密のプロジェクトがあった。しかも、Evieの叔父Will、そしてMemphisの知り合い、Samの母親も関わっていたようだ。だが、Willはそれについて固く口を閉じていた……。
1巻は、多数の登場人物の紹介と背景の説明で展開が緩慢に感じるかもしれない。しかも、500ページ近いボリュームなので、投げ出したくなるかもしれない。だが、2巻になると、スピードが出て来る。不気味さでも、幽霊が出て来る2巻のほうが強い。
Libba BrayのYAファンタジーは、女性に人気があるくせに、暗くて、絶対に安易なハッピーエンドはくれない。このシリーズでも、3巻はさらに暗くなる。
また、パラノーマル・ファンタジーと言うより、私が苦手なオカルト/ホラーのジャンルだ。
それでもこのYAファンタジー・シリーズをお薦めるのは、Brayが込めたメッセージに同感するからだ。
Divinerの若者たちは、「アイルランド系移民(カトリック教徒)」、「ユダヤ人」、「黒人」、「中国人」、「ゲイ」と、当時差別されていたマイノリティである。それは偶然ではなく、じつはアメリカをピュアな国にしようとする「優生学」の支持者が絡んでいたことがわかってくる。
フィクションに史実を取り入れ、現代アメリカで起こっていることを若者に考えてもらおうとしているところが、Brayの尊敬すべきところだ。
3部で完了すると思い込んでいたので、読み終わった時点で紹介しようと思っていた。
ところが、まだまだ先があるらしい。喜ぶべきか、悲しむべきか……。