作者: Mary Beth Keane (Ask Again, Yesの作者)
Publisher : Scribner
刊行日:May 2, 2023
Hardcover : 304 pages
ISBN-10 : 1982172606
ISBN-13 : 978-1982172602
対象年齢:一般(PG15)
読みやすさレベル:7
ジャンル:文芸小説
テーマ、キーワード:結婚、夫婦の危機
Malcolmにとって、生まれ育った町のバー「Half Moon」はバーテンダーとしての職場であり、「いつかオーナーになる」という人生の夢だった。ハンサムで誰からも好かれるMalcolmは、自分のことを運が良い人間だと思っており、うまくいかないことがあってもいずれはうまくいくと信じる楽天主義者だった。
故郷に帰省したときに客としてHalf Moonに行ってMalcolmに出会ったJessは、自分よりはるかに魅力的なMalcolmが自分に興味を持ってくれるのが信じられない気持ちだった。だが、Jessの母は、弁護士になるために法科大学院に通っている娘がバーテンダーと付き合うことには反対だった。
周囲から不釣り合いだと思われていた2人は結婚してそれなりに幸せに暮らしていたが、子供が欲しいのに何度も流産を繰り返すJessと、妻と相談もせずに引退するボスから口約束でHalf Moonを購入したMalcolmの間に大きな溝が生まれる。引退したボスから騙されて搾取され続けるMalcolmと、自分を突き放す夫に耐えきれずに家を出たJess。そんな最中に、大きな雪嵐が到来し、Half Moonの常連客のひとりが姿を消してFBIまで絡む事件になる…。
結婚するのはわりと簡単だが、維持するのはそう簡単なことではない。子供のこと、お金のこと、他の家族のことなど、多くの要素が影響を与える。自分の不幸をうまく説明することができず、それを理解できない相手に失望する。不満や失望で心が揺れているときに、伴侶ではない相手に心が傾くこともある。自分を裏切った伴侶を憎み切ることができない…。そういった夫婦の関係の複雑さとその心理を静かに語っているのが、Mary Beth Keaneの紡ぐ物語の魅力である。
Malcolmの親友は夫を裏切ったJessを許すことができないが、Malcolm自身はJessの心の迷いの原因が自分であることを察して許す。JessもMalcolmのある意味大きな裏切りを許す。この静かな「赦し」に、読者は希望を感じることができるだろう。
前作のAsk Again, Yesほどのインパクトはないが、それでも読んで損はしない、心優しい本である。