女子集団の陰湿なイジメは世界共通で永久不変。では復讐劇は…? 英国のデビュー心理スリラー She Started It

作者:Sian Gilbert
Publisher ‏ : ‎ William Morrow
刊行日:June 13, 2023
Hardcover ‏ : ‎ 352 pages
ISBN-10 ‏ : ‎ 0063286297
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0063286290
対象年齢:一般(PG12)
読みやすさレベル:7
ジャンル:心理スリラー、destination thriller
テーマ、キーワード:イジメ、復讐、離島バケーション、destination thriller

Annabel、Esther、Tanya、Chloeの4人は子供の頃からの親友グループだったが、大人になってからは疎遠になっていた。学校の女王的な存在だったAnnabelは完璧な結婚生活を送っているように見えるが、実際にはそれは危ういものだった。Estherは仕事人間になっているが、親のコネで就職したという周囲の評価を逃れることができない。イベントオーガナイザーとして成功しているTanyaは昔の友人には知られたくない現状を隠している。そして、Choloeはインフルエンサーとしてフォロワーが羨む生活を送っているが、多くは見せかけだけでしかない。

この4人のもとに10年も会っていない昔の知り合いから招待状が届いた。4人が中学と高校で同級生だったPoppyが結婚することになり、そのBachelorette Party(バチェロレッテパーティ、結婚する女性のために行うパーティで伝統的には女性の親友が集まって羽目を外す独身最後のパーティのこと)をカリブ海のリゾートで行うというのだ。すべての費用はPoppy負担で、飛行機のチケットはファーストクラスだ。4人はそれぞれに「なぜPoppyが自分たちを招待するのか?」という疑問を抱いたものの、タダでリッチなバケーションができる魅力につられて出かけることに決めた。

旅は贅沢だったが、カリブ海のリゾートは美しい場所だったが予期しなかった孤島にあった。しかも、携帯電話がほとんど通じない。そして、4人を迎えたPoppyは別人のように美しい成功者になっていた。

子供の頃とは異なり、自信に満ちたPoppyは4人それぞれに過去の出来事を思い出させるようなゲームを仕掛ける。過去を忘れたい4人はPoppyに対して憤るが、それぞれに友人を裏切る秘密があるので一致団結もできない。予期しなかった事件が起きてからは、全員が疑心暗鬼になる…。

離島リゾートでの復讐劇…というのはLucy FoleyがThe Guest Listで流行らせたもので、あの本の時の新鮮さはない。けれども、「こういう味をもう一度味わいたい」という人を満足させる多くの材料が揃っている。

この本独自の魅力は「学校での女子のイジメ」の陰湿さと、「加害者はまったく後悔しない」という現実を(やや大げさだが)読者に突きつけているところかもしれない「子供の頃には誰でもイジメとかするものだ。人は変わるものだ。成長したらそういう過去を後悔する」とか言う人がいるが、私はまったく同意しない。私は幼稚園の頃からイジメが嫌いだったし、イジメられるか、イジメられている子と友達になるタイプだった。年齢なんか関係ないと今でも思っている。イジメを楽しんだ子供は、「イジメられるほうが悪い」と思うような大人に育つと信じている(マジで)。

それにしても、イジメというのは世界共通であり、国や時代が異なっても内容はそう変わらないことを知らしめてくれる本だ。女子のイジメの陰湿さも、何世紀も変わっていないのではないだろうか。また、加害者の心理もそうだ。

それなので、この復讐劇にはつい心の中で「もっとやれ!」的な応援をしてしまった。「復讐には興味ない」とふだん言っている私なのに…。

これも普段よくあちこちで書いたり話したりしていることだが、イジメられている被害者に伝えたいのは「あなたに何が起こっても、加害者は後悔なんかしない」だから「最高の復讐は、生き延びて、幸せな人生を送ること」ということだ。

娯楽であるこのスリラーからそういうメッセージを得ていただければ、と願っている。

Leave a Reply