
作者:Marissa Stapley
Publisher : Simon & Schuster
刊行日:September 24, 2024
Language : English
Hardcover : 304 pages
ISBN-10 : 1668015765
ISBN-13 : 978-1668015766
対象年齢:一般(PG15+,セックス、ドラッグ)
読みやすさレベル:6
ジャンル:ラブストーリー、ミステリー
キーワード、テーマ:90年代ロック、シアトル・グランジロック、カート・コバーンとコートニー・ラブ
1995年、人気の頂点にあったロックンロール・デュオ「The Lightning Bottles」のシンガーElijahが海辺で姿を消し、公式に溺死とみなされた。誰からも愛されたElijahとは異なり、デュオの相棒で妻のJaneはメディアからもファンからも「夫を背後で操作する冷たい女」として憎まれ続けてきたのだが、その憎しみはElijahの死によって更に強まっていた。
実際には、ドラッグとアルコール依存症でコントロールを失いつつあるElijahを救おうとしてきたのはJaneだった。
それから5年経ち、夫の元バンド仲間の執拗な訴訟やメディアからの攻撃から逃れて静かな生活を送るためにJaneはドイツの辺鄙な田舎に隠れた。ところが隣家の17歳の少女HenはなんとThe Lightning Bottlesの大ファンだった。しかも、HenはElijahからJaneへの秘密のメッセージを知っていると主張して執拗にJaneにまとわりつく。
Henの押しの強さに負けたJaneは、Henと一緒にElijahが描いたと思われるストリートアートを追ってヨーロッパを駆け回る…。
偉大なロックミュージシャンとして愛された男性の妻やガールフレンドが、メディアやファンから極端に悪者扱いされることはこれまでにもよくあることだった。例えば、オノ・ヨーコはビートルズ解散の原因を作った女として世界中から憎まれ、コートニー・ラブはカート・コバーンを自殺に追いやったと批判され続けた。でも、実際にはどうだったのかは誰も知らないことだ。天才的なミュージシャンのジョンやカートが誰からの批判も受け付けずに愛した相手なのだから類まれなる魅力があったに違いないと思うのだが、メディアやファンはそういう部分にはあまり興味がないようだ。
私はこの2人の女性が世界中のロックファンの敵として扱われた時代を生きてきたので、2021年公開のPeter JacksonのドキュメンタリーTVシリーズ “The Beatles: Get Back”を観た時に「ほら、Yoko Onoはただ静かに座っているだけで何の口出しもしていないじゃないの!」とオノさんの立場になって憤慨したひとりである。
ヒラリー・クリントンも含め、有名人の伴侶を持つ女性はどんなに才能があっても夫よりも達成することは許されず、夫の犯した失敗や罪を肩代わりしたり、代わりに批判されたりする。彼女たちはそういった不公平な扱いに怯えたり、失望したりしてメディアを避けるので、さらに批判的な記事を書かれたり、誤解されたりする。この小説はJaneの視点を通してこの不条理さを読者に伝えている。
とはいえ、そういう社会正義を訴えるのがこの小説の目的ではなく、Elijah失踪事件のミステリの形を取りながらも「カート・コバーンとコートニー・ラブ」のラブストーリーに別のエンディングを与えてあげるようなラブストーリーであり、90年代のロックシーンそのものへのラブストーリーである。
90年代にロックファンだった人なら、読んでいる途中に休憩してNirvana, Hole, Jane’s Addiction, Pixies, R.E.Mといったバンドの曲を聴きたくなってしまうノスタルジックな小説だ。

