アメリカ北東部のエリート黒人一家に起こった悲劇。数多くの人々の視点から浮かび上がる歴史的背景と悲劇からの回復。 Good Dirt

 

 

Amazon.com

Amazon.co.jp

 

 

作者:Charmaine Wilkerson (Black Cake)
Publisher ‏ : ‎ Ballantine Books
刊行日:January 28, 2025
Hardcover ‏ : ‎ 368 pages
ISBN-10 ‏ : ‎ 0593358368
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0593358368
対象年齢:一般(PG15)
読みやすさレベル:7
ジャンル:文芸小説、歴史小説
テーマ、キーワード:アフリカ系アメリカ人家族の歴史、家族の悲劇、女性の生き方、悲劇からの回復

Freeman家は、アメリカで最も古い歴史を持つニューイングランド地方(マサチューセッツ、ロードアイランド、コネチカット、ニューハンプシャー、ヴァーモント、メイン州)で富と名声を築いてきたアフリカ系アメリカ人のエリート一家だ。

海沿いの裕福な町での暮らしを楽しんでいたFreedman家の幸福は、ある日、何世代も受け継がれてきた大きな壺とともに打ち砕かれた。家に侵入した強盗によって15歳の息子が銃殺され、同時に壺も壊されたのだ。兄の死を目撃した10歳のEbbyの人生も、この悲劇によって変わってしまった。

メディアによって多くの人々から悲劇的な少女のイメージを植え付けられ、母から過剰に保護されるようになったEbbyは、他人からの視線を避けるために事を荒立てないように生きてきた。けれども、裕福で著名な白人の婚約者が結婚式の当日に連絡もなく姿を消して結婚がキャンセルになり、再びソーシャルメディアとメディアから注目されるようになった。

Ebbyは好奇の目から逃れるために、友人が保有するフランスの片田舎の保養地に旅立った。無料で滞在するひきかえにリゾートの貸家の客を案内することになっていたが、ほとんど暇だった。ところが、そこに自分を裏切った婚約者と現在のガールフレンドが客として到着し、Ebbyの心の平和は乱される…。

アメリカに奴隷制度があった時代には、黒人奴隷には人権はなく、文字を学ぶのは命に関わる犯罪とみなされていた。その時代に壺作りの名人として壺に名前と詩を刻み込んでいたDavid Drake (Dave the Potter)が存在したことがよく知られている。この小説に出てくる壺は、その史実に基づいたフィクションの壺であり、この壺を通して作者は奴隷時代の背景を描いている。

この歴史小説の部分に加え、Ebbyだけでなく、Ebbyの元婚約者、そのガールフレンド、事件当時の隣人など数多くの登場人物の視点から多様な人々の生き様が立体的に浮かび上がってくる。タイトルのdirtとは「汚れ」ではなく「土」という意味である。土とは壺を作る土でもあり、人々が住む場所の土でもある。

作者の前作のBlack Cakeも良い作品だったが、今回のGood Dirtはさらに人間造形に優れていて、不完全な人間への赦しと心の傷の回復も説得力があり、作家としての円熟さを感じた。

Leave a Reply