現在アメリカで起こっていることがあまりにもディストピアなので「風刺小説」と呼ぶべきか迷ってしまう。Carl Hiaasenらしさ爆発の2025年新刊 Fever Beach

 

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作者:Carl Hiaasen
Publisher ‏ : ‎ Knopf
刊行日 ‏ : ‎ May 13, 2025
Print length ‏ : ‎ 384 pages
ISBN-10 ‏ : ‎ 0593320948
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0593320945
対象年齢:一般(R, 性的に際どいユーモアあり)
読みやすさレベル:7
ジャンル:風刺小説、現代小説
テーマ、キーワード:フロリダ、共和党の政治家、汚職、トランプ支持者、極右団体、ユーモア

フロリダ州の架空のビーチタウンが舞台。

Dale Figgoは白人優越主義者で極右という自分のアイデンティティを誇りにしている。けれども、2021年1月6日の連邦議会襲撃の時、南北戦争での北軍の将軍で18代アメリカ大統領のユリシーズ・グラントと間違えて南軍のヒーローだったジェイムズ・Z・ジョージの銅像に犬の糞をなすりつけ、その映像がバズってしまったために悪名高き極右団体の「プラウド・ボーイズ」から追い出されてしまった。

「プラウド・ボーイズ」には厳格なルールがあり、そのひとつがマスターベーションの禁止である。セックストーイ販売業で勤務するFiggoはもともとそれに疑問を抱いており、追放された屈辱を自分の正当化に置き換え、自分でヘイト団体を設立した。

Figgoのもうひとつの重要な収入源は、母親が所有する家の管理である。一部は賃貸になっており、それを借りているのはヒスパニック系の女性Vivaだ。

詐欺師と結婚して財産をすべて失ったVivaはゼロから生活を立て直すために安い部屋を借りたのだが、左よりのリベラルであるVivaはFiggoに辟易している。けれどもFiggoの母親には気に入られており、Figgoが母親を恐れていることを知っているので何か問題があるときには母親に言いつけると脅している。

Vivaが新しく見つけた仕事はチャリティ団体なのだが、オーナーは右翼の大富豪であり、汚職政治家のClure Boyette(マット・ゲーツがモデルと思われる) を当選させるために大金を費やしている。

未成年者との性的スキャンダルを起こしたり、浪費したりするだけで仕事ができない息子に愛想を尽かしているBoyetteの父親や、自分の育て方に逆らって差別者になってしまった息子をなんとかしようとする母親、年上の政治家をうまく操る未成年のコールガール、思慮深い暗殺者、正義のために行動するのを趣味にしている金持ちヒッピー、などバラエティある登場人物が揃い、フロリダの沿岸の町では何か大きなことが起こり始める…。

フロリダで生まれ育ち、マイアミ・ヘラルド紙で記者をしていたCarl Hiaasenは、自分の愛する土地が悪徳な政治家やビジネスマンによって破壊されてきたのを苦々しく思ってきた。それが彼の数多い風刺小説の根底にある。Hiaasenは子どもの頃から環境保護に熱心であり、それはHootという大ベストセラーになった児童書でも明らかだ。そして、彼の小説では、たいてい悪者は大自然の犠牲になり、読者は心の中で拍手喝采する。

Hiaasenの最新作Fever Beachも彼らしい風刺小説なのだが、現実に起こっていることと比べるとFiggoやBoyetteといったキャラクターですら「まとも」に感じられてしまう。それが恐ろしい。

今のアメリカに危機感を抱いている読者はHiaasenの世界に逃げ込んで「そうだ、そうだ!」と同感したり、悪い奴らの末路に満足できるけれど、それはつかの間の逃避でしかないと切なくなってしまう。

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