
作者:Ry Herman
Publisher : Dial Press Trade Paperback
Publication date : June 17, 2025
Print length : 416 pages
ISBN-10 : 0593733088
ISBN-13 : 978-0593733080
対象年齢:一般(PG15+, 性の話題あり)
読みやすさレベル:6
ジャンル:ファンタジー
テーマ、キーワード:グリム寓話『The Twelve Huntsman (12人の狩人)』の改作、ユーモア、LGBTQ+ロマンス
童話にはイミフのへんてこなものが多いが、グリム童話の『12人の狩人』は特にへんてこである。許婚と愛し合っていた王子様が死の床にいる父親に呼び出される。王様から「死ぬ前の最後の願い」として彼の指名したプリンセスと結婚することを約束した王子様は、婚約者に結婚破棄の通知をする。手紙で別れを告げられた婚約者である娘が落ち込んでいるのを父親は心配し、「何でも望みを叶えてあげよう」という。そこで娘は「私と身丈が同じでそっくりの娘11人を集めて」と頼む。そして、集まった11人の娘と一緒に猟師の格好をし、王様になった王子様の王国にでかけて雇ってくれるように頼む…。
元婚約者がなぜ猟師の格好をしようと思ったのか、なぜ12人でなくてはならないのか、その説明がいつか来ると期待していたらがっかりするだろう。最後まで何の説明もない。おまけに言葉を喋るライオンも出てくるのだけれど、それもなぜなのか不明のままである。元婚約者にとってはハッピーエンドの話なのだけれど、王様が指定したプリンセスはようやく到着したのに登場もさせてもらえず、「自分の国にお戻りください」と追い払われてしまう。非常に理不尽な話である。
Ry HermanのThis Princess Kills Monstersは、『12人の狩人』をメインにしたドイツ寓話の改作で、主人公は12人の狩人でもなく、王子様とハッピーエンドになるプリンスでもなく、王子様でもない。オリジナルのストーリーでせっかく王国に到着したのに追い払われてしまったプリンセスである。
その脇役プリンセスであるMelilotが生まれ育った国には魔法があり、その国の女王である継母はパワフルな魔女だ。きょうだいたちはそれぞれに卓越した魔力を持つのだが、Melilotはどうでもいいような魔法しか使えない。冷酷な継母の命令で数々のクエストに挑戦するたびに危機に陥り、きょうだいたちに助けられてきた。かつて義母に反抗して高い塔に何年も閉じ込められたことがあるMelilotは、他国の王と結婚するという命令も理不尽なクエスト同様に受け入れた。
召使いもガードも同伴しない単独の長旅は決して楽なものではなかった。ようやく王国に近づいた時、Melilotは森でスパイダー・ウルフに攻撃されて絶体絶命になった。その魔物から彼女を救ったのは12人の狩人だった。Melilotが到着した王国には奇妙な雰囲気が漂っており、理解できないままにMelilotは国の水面下にある権力闘争に巻き込まれていく…。
グリム寓話の改作には怖いものが多いけれど、この作品はオリジナルの寓話にツッコミを入れるようなユーモアたっぷりで、しかもLGBTQ+のロマンスも含まれている。
暗いことだらけのアメリカでは現実逃避するのにピッタリの軽さなのだが、この類の軽くて明るいファンタジー(コージー・ファンタジー)が最近増えているようだ。もしかするとアメリカのZ世代の若者の傾向なのかもしれない。

