Category: 文芸小説(商業的作品を含む)

寄宿学校で育てられた子供たちの秘密 Never Let Me Go

Kazuo Ishiguro 2005年初版 文芸小説/(心理スリラー/SFといったジャンルとも重なる内容) 31歳のKathyは、Hailshamという寄宿学校で一緒に育ったRuthとTommyとの過去を回想する。 Hailshamは、英国によくある私立の寄宿学校のようである。この学校で最も重んじられているのは芸術的才能であり、時おり訪れるMadam と呼ばれる女性に自分の創作したものをギャラリー展示用として選んでもらうのが最も栄誉なこととみなされていた。その校風に馴染めず、怒りの発作を起こしては同級生たちに苛められるのがTommyだったが、彼にはKathyとそして教師のMiss Lucyという理解者がいた。しかし、Miss Lucyは生徒たちに謎の発言をした後学校を去る。

無垢が恐怖、歓喜、トラウマ、癒しと移り変わる不思議な雰囲気の小説 Room

Emma Donoghue336ページ(米国版、ハードカバー)/ 320ページ(英国版、ソフトカバー) Little, Brown and Company (2010/9/13)Picador; Trade Paperback.版 (2010/8/6)文芸小説ブッカー賞最終候補(発表は2010年10月12日) http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS1=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=0316098337 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS1=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=0330519921 右はキンドル版> http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=B003YFIUW8…

ある中流階級の家族を通じて自由の国アメリカ合衆国の現代を描いた大作 Freedom

Jonathan Franzen 576ページ(ハードカバー) Farrar Straus & Giroux 2010/8/31刊行 ●筋書きをあまり知りたくない方への短いバージョン Patty, Walter, Richardの3人は、大学時代に知り合う。バスケットボールの花形選手で競争心が強いのに自己評価が低いPatty、Pattyに惚れ込む善良なWalter、Walterの善良さを愛する親友のくせに彼が好きになった女の子に手を出しては捨てるロックミュージシャンのRichard。愛情と競争心で繋がる3人の複雑な関係は、PattyとWalterが結婚した後もくすぶり続けている。

フランゼンの新作Freedomを発端にした文学論争

The Correctionsで米国文学界での地位を確保したJonathan Franzenの新作Freedomは、発売前から多くの文芸評論家たちが絶賛していました。マーサズビンヤードで休暇を取るオバマ大統領が休暇中に読むためにARCを受け取ったというニュースも米国の文学界で話題になりました。 もうひとつ話題になったのが、ニューヨークタイムズ紙の名物書評家ミチコ・カクタニの書評に対する女性作家の批判です。 発端になったのは、ベストセラー作家Jodi Picoultの次のようなツイートです。 それに加わったのが、これまたベストセラー作家のJennifer Weinerです。ツイッターで#franzenfreudeというハッシュタグを作って読者との意見交換を始めた彼女は、こんなツイートをしています。 彼女たちの言い分を大雑把にまとめると、ニューヨークタイムズ紙の文芸評論は、白人男性(特にニューヨーク在住)の作家には大変甘く、chick litやロマンスなど商業的な文芸作品を書く女性作家を見下げ、無視している、というものです。 【追記】これだけだとウェイナーやピコーが一方的にフランゼンを攻撃していてアンフェアだと思われるかもしれません。ですが、フランゼンは多くの場所でミソジニーな発言を繰り返しているのです。たとえば20世紀初頭に活躍した女性作家のイーディス・ウォートンの生誕150周年を祝うニューヨーカー誌のエッセイで、ウォートンが美しくなかったことや、それが彼女のセックスレス結婚、ひいては作品に影響を与えたことを示唆しました。女性の容姿と作品をつなげるような彼の発想は発言のあちこちにあり、女性の図書館司書の間ではフランゼンへ敵意を抱いている人はかなりいるようです。ブックエキスポでフランゼンの新作のARCを抱えていただけで、見知らぬ図書館司書から「あなた、彼の作品なんか読むの?」と喧嘩腰で質問されたこともあります。 知人がフランゼンの教え子だという関係から、(めったに人前に出ない)フランゼンの講演を聞いたことがあります。その時の彼の印象は、傲慢というよりもシャイで職人気質、という感じでした。けれども、文学界が好みそうな、商業的文学を拒むプライドの高さも感じました。 これらのことを念頭に、私はFranzenのFreedomを、やや懐疑的に読んでみました。 その感想は、こちらでどうぞ。

超なさけなくて悲しい近未来ディストピアの恋- Super Sad True Love Story

Gary Shteyngart 352ページ(ハードカバー) Random House 2010/7/27発売 文芸小説/SF/風刺 近未来のアメリカでは、電柱のようなCredit Poleの横を通るとその人の貯蓄を含めた経済情報が公示される超情報社会になっている。個人情報の全てがランキング化され、iPhoneのようなäppärätというデバイスでスキャンすると誰の情報もすぐ分かる。 万人が軽薄になっている米国での重要な情報は、経済力、性的魅力、そして若さ、である。それらの数字はたとえば800点満点評価で、Personality 746, Fuckability 800といった具合でäppärätに現れる。人々は互いをランキングのみで評価するようになっている。

ビンテージドレスの世界を使ったいかにも英国産chick litな物語 – A Vintage Affair

Isabel Wolff 英国では2009年1月発売 米国では2010年6月29日発売予定(私が読んだのは米国版) 現代文学(大衆文学)/Chick Lit 由緒あるオークションハウス、サザビーズを突然辞めたフィービー(Phoebe)は、ロンドン郊外にビンテージドレスの店 Village Vintage を開く。突然思い切った行動に出たきっかけは、幼い頃からの親友エマ(Emma)の突然死と、それが原因になった婚約解消だった。

残された者の罪悪感を描く心理小説 The Lake Shore Limited

Sue Miller288ページ(ハードカバー)Knop2010/4/6文芸小説/現代小説 http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=0307264211 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=0307264211 両親の愛に恵まれなかったLeslieには子どもがおらず、歳の離れた弟のGusをまるで母親のように愛して来た。けれどもその愛情の対象を2001年9月11日の同時テロで失ってしまう。 高校教師のGusには当時一緒に住んでいた年上の恋人Billy(通常は男性名だがここでは女性名)がいて、Leslieはその後何年も独身でいるBillyに肉親のような責任感を抱いていた。 大学で教える傍ら舞台の脚本家をしているBillyには、Leslieには言えない秘密があった。それは、同時テロが起こる前にすでにGusと別れる決意をしていたことだった。自分を愛しているらしきGusにどう別れを告げるべきか悩んでいるときに同時テロで彼を失い、まるで悲劇のヒロインのように扱われることに後ろめたさを感じつつもそれを口に出すことができないできた。 ある種の生存者の罪悪感をひきずってきたBillyはその思いを最新の舞台劇The Lake Shore Limitedに書き上げ、Leslieと夫のPierceは観劇のためにヴァモントからボストンにやってくる。Leslieはこの機会に友人のSamをBillyに紹介しようとするが、そこには微妙な心理的背景があった。舞台劇The Lake Shore Limitedでは、9/11を連想させるような列車事故が起き、妻の生死が不明な中年の主人公Gabrielの言動が物語の中心になっている。この難解な劇をどう解釈してよいのかLeslieは苦しむ。 LeslieとBillyに加え、劇の主人公Gabrielを演じたRafe、かつてLeslieに恋心を抱いていたSamの男女4人の視点で進行する「喪失のトラウマ」や「生存者の罪悪感」などをテーマにした物語。…

Life of Pieの作者Martelの9年ぶりの新作 Beatrice and Virgil

Yann Martel224ページ(ハードカバー)Spiegel & Grau 2010年4月13日発売 http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=1400069262 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=1400069262 2002年ブッカー賞( Man Booker Prize)受賞作Life of Piの著者Yann Martelによる、なんと9年ぶりの新作。 Yann…