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Outlander推薦文  by とら次郎さん

小さい頃「赤毛のアン」のアンとギルバート、「あしながおじさん」のジュディとジャーヴィスぼっちゃん、「若草物語」のジョーとベア先生にときめきましたか?今でも読み返すと甘酸っぱさにうっとりしませんか?でも今はオトナだからちょっと物足りないかも…と思っていたりしませんか?そんな方にはロマンス小説がお薦めです。ロマンス小説はオトナの為のおとぎ話であり、現実逃避手段としてもってこい。恥ずかしがらずに読んでください。読んでいるのを公表しなければ誰も白い目で見ませんから(ブックカバーは必須)。 もちろん物語の芯がある程度しっかりしていないとその世界に没頭し現実を忘れることができません。その点、この本は文句なし。ロマンスがメインであっても、歴史あり、冒険あり、サスペンスあり、まるで実在するかのように生き生きとした登場人物たち…娯楽小説の要素をこれでもかとこれでもかと詰め込み、圧倒的な筆力でもって読者を掴んで離しません。 馬鹿馬鹿しいほど厚い本ですが読み終わりたくない!いつまでも続いて欲しい!と思うこと請け合い。新聞の書評欄にはぜったいに載らないジャンルですが一読の価値ある本もあるんです、ということでお薦めいたします。 蛇足。私はこの本を読み終えて以来医者じゃないけど肩の脱臼ぐらいを治せたほうがいいかもしれないと思うようになりました。

Olive Kitteridge推薦文  by sosoraraさん

2009年度ピューリッツァー賞受賞作なので、ご存知の方も多いと思います。いわゆる「短編で綴られた小説」。舞台はメイン州の海辺の田舎町クロスビー。とことん保守的な土地柄で、先祖代々この地で暮らし、この土地を強く愛している町民が多く、子供たちもまたそうした親の暮らしを継いでくれるだろうと思っていると、(日本の地方都市でも同じですが)この現代社会の風潮ではなかなかそうはいかない。よそ者は疎まれ、人々の食生活も昔ながらのもので、都会で流行る健康食などとんでもない。  そんななかで暮らす人々の人生模様とその内面が、簡潔ながら深みのある文章で綴られています。13の短編をつなぐ太い糸がタイトルともなっている女性、Olive Kitteridge。長年町の中学で数学教師を勤めてきた彼女は、普通の女性より頭ひとつ背が高いというその体型でまず人目を引き、ついで性格がまたかなり強烈。狷介で容易に人と馴染もうとせず、物言いは辛辣で直截、感情の起伏の激しい彼女は、生徒からも町の人たちからも恐れられています。対する薬剤師の夫Henryは、温厚で誰にでも愛想がよく、皆から愛される人柄、傍目からは完全に女房の尻に敷かれている様子。  こんな夫婦の人物造形がまず鮮やかに提示されるのが、最初の『Pharmacy』。他にも何篇か見られる手法ですが、今や職を退いた老年のHenryが教会へ行って帰るまでの短時間の回想によって、夫婦が中年だった頃のとあるエピソードが語られ、同時に現在の、人生の幾多のしこりや亀裂を共に乗り越えてきて今では喧嘩しつつも強い絆で結ばれている(夫婦どちらもが、相手のいない暮らしには耐えられないと心底思っている)老夫婦の様子が描かれます。エピソードの中心となるのが、当時のHenryの、妻とは正反対で優しく女らしい性格の、薬局で働く若い女性に対するほのかな思い。Henryの憶測では、どうやらOliveのほうも当時同僚教師と何かあった模様(この件はのちに『Security』で、Oliveの側から語り直されます)。そして、ここで提示されるちょっと辟易するような我の強い「謝ったことのない」女Oliveの人物像は、次の『Incoming Tide』では、鋭く賢い観察者として元生徒の内面を推し量り、繊細な思いやりでもって相手を包む姿に変わります。怖いキトリッジ先生は、また生徒から信頼され尊敬される優れた教師でもあったようなのです。  こんな具合に、Oliveとはまったく関係のない物語のなかにも彼女の町での存在感をちらっと見せながら、十三の物語が並んでいるのですが、メインの流れとなるKitteridge夫婦の人生はといえば、田舎町で夫婦で地道に共働きし、一人息子が結婚して同じ町で所帯を持ち、自分たちと同じように子を育てていく姿を見る日を楽しみにしながら、近くに立派な家まで用意してやっていたのに、なかなか結婚しない息子に気をもまされたあげく、やっと結婚したと思ったら、相手は都会から来た(Olive以上に)我が強くて権高で高慢ちきなヨメで(ヨメは内科医で、足病医の息子より収入もずっと上)、ことあるごとにむしゃくしゃさせられ、揚句に息子夫婦は突然遠いカリフォルニアへ引っ越してゆき、Kitteridge夫婦はがっくり、そこへ息子から離婚したと知らせがきてうろたえ(今時、息子の離婚を他人に告げられない夫婦なのですよ!)、喧嘩ばかりしながらも互いにかけがえのない存在だったのに、夫Henryが発作によってただ「生きている」というだけの存在となってしまい、一方息子は子持ちの女と再婚してニューヨークへ移り、、、、という具合。Oliveという頑なな女性の人生とその終盤のうつろいを、彼女の周辺の人々の人間模様とあわせて、じっくりと見せてくれます。  13の短編で描かれるのは、夫婦の愛や気持ちの齟齬(うちの亭主は「めし、風呂、寝る」の三語しかいわないというのは、よく妻の不満として取り上げられるところでありますが、『Starving』に登場する夫は、子供たちが独立してがらんとした家が寂しくてたまらない自分とひきかえ、さっさと新たな生き方を確立して趣味の仕事で金まで稼ぐようになり充実した日々を送る妻が、夫婦の会話といえば「あなた、晩御飯は何が食べたい?」としかいってくれないことに強い不満を持ち、心の繋がりを育める他の女性に惹かれていくのであります)、親子の愛情や思いの行き違い、歪んだ親の愛情に傷つく子供、夫の浮気に苦しむ妻、パートナーに先立たれる悲しみ、などなど、誰にでも思い当たることがあるような、身近なテーマばかり。どの読者も、どこかしらに自分の物語を見つけるのではないでしょうか。  読み進むうちに、Oliveの喜怒哀楽がじつにリアルに迫ってきて、堅いゴツゴツした殻の下にある傷つきやすくナイーヴな彼女の心根が愛おしく、第一話では「嫌な女」だった彼女のイメージがどんどん変わってきます。『A Different Road』での、銃を構える犯人の目の前でOliveが姑に対する昔の恨みを持ち出して夫婦喧嘩を繰り広げる場面は、ドタバタコメディーのようでなんともユーモラスだし、『Security』で、初めて訪ねたNYの息子の新家庭(息子は自慢げなのですが、Oliveにとっては狭苦しい都会のアパートはなんとも惨めったらしく見え、親がせっかくあんなに広々とした美しい家を用意してやってるのに、とつい思ってしまうのであります)であれこれ胸をよぎる思いを、今や聞いても理解できない寝たきりの夫に電話しないではいられない(施設に電話して、いつもぼうっと薄笑いを浮かべているだけの夫の耳に受話器をあてがってもらっては、「前のヨメはタカピーで嫌味な女だったけど、今度のヨメは、ありゃあアホだわ」とか、「ねえねえ、うちの息子ったらねえ、訪ねてきた母親を地下の物置部屋みたいなところで寝かすのよ」とかしゃべるんです)姿や、その夫がいなくなると、今度は、うっとうしがられるのをわかっていながら、なにかあるごとに息子に電話してしまう『River』での姿は、意地っ張りな癖に実は寂しがりの彼女の愛らしさが出ていて、切なくなります。最後の『River』ではそんなOliveにちゃんと救いが用意されていて、温かい読後感が残るのもいいです。  一篇一篇がじつに見事。会話やちょっとした描写から鮮やかに登場人物の人となりや人生のありようを浮かび上がらせる描き方も、構成もすばらしく、13篇どれもはずれがありません。滑稽で悲哀に満ち、それでいて愛おしい「人生」というもの、人が生きるということを、しみじみ考えさせてくれる一冊です。

Lives of Mothers & Daughters: Growing Up With Alice Munroの推薦文 by sosoraraさん

作者は、しばしば「短編の女王」と称され、ここ数年毎年ノーベル文学賞候補としても取沙汰されるカナダの短編作家アリス・マンローの長女。海を渡ってカナダへ移住してきた母の祖先の話から語り起こして、母の生い立ち、結婚して子供を育てる傍らつぎつぎと珠玉の作品を生み出してきたこれまでの人生を、その娘として生きてきた自らの物語も交えて記しています。 マンローは、文学の世界ではともすると軽く見られがちな短編一筋に書き続けてきた作家です。よく比較される同じカナダの有名作家マーガレット・アトウッドとはまったく異なり、政治、社会、思想などといった「大きな」テーマには見向きもせず、実験的手法を凝らしたりもせず、愚直に、といっていいくらい、自分が生まれ育ったオンタリオのごく普通の人々の生活(とはいえ、それがなべてごく普通か、というと決してそうではなく、そこにはしばしば目を見張るような強烈なドラマが潜んでいるわけですが)を書いてきました(ちなみに、最新刊『TOO MUCH HAPPINESS』の表題作は、珍しくロシアの歴史上初の女性数学者ソフィア・コバレフスカヤの生涯を綴っています。長編を書いてみようか、という発言もどこかのインタビューで耳にしたことがありますし、78歳のマンローは何かの転換点を迎えているのかも?)。 マンローの作品を読んでいてよく思うのですが、マンローの世代の女性というのは、かつてなかったほどの大きな「女の暮らしの激変」を生き抜いてきたのではないでしょうか。それまでの女性は、妻/母という役割のなかでそれなりに安穏と生きていけた(もちろん抑圧その他に対するストレスは別として、一応は、という意味です)。母の、祖母の人生をそのままなぞっていけばよかったわけです。ところが「自由」という厄介なものがそんな枠組みを木っ端微塵に打ち砕き、見も知らない荒野で自分で道を探さねばならなくなった。マンローの作品で見られる、そんな荒野を彷徨う女性たちの姿は、この本で描かれるマンロー自身の姿にも重なります。 貧しい家庭で育ち、奨学金を得て大学へ進み、学費が続かず結婚。つぎつぎ子供を産んで育てるなかで、マンローはひたすら短編を書き続けます。パーキンソン病で寝たきりの母を抱える実家をいわば「捨てた」、両親が貧しい生活をおくっているのに自分はこんな豊かな暮らしをしていいのか、という後ろめたさ。近所の主婦たちからお茶に誘われると断れず、貴重な執筆の時間を削られる口惜しさを隠して「普通の主婦」を装ってしまう気弱さ。シャイで繊細で実直なマンローの人柄がくっきりと浮かんできます。やがて初の短編集でGovernor General’s Awardを受賞したときの新聞の見出しは『主婦が暇を見つけて書いた短編集』。ちなみに、後に離婚することになる夫は、マンローの作品の最も良き理解者であり、妻の才能を信じ、励まし、支援し続けたそうです。父のためにこれだけは言っておかねば、という勢いで、娘である作者は記していました。この離婚についてもっと書かれているかと、ヤジウマ根性で期待していたのですが、このあたりはじつにあっさり。ま、二人の実の娘としては仕方ないのかもしれません。そうなのです、マンローはその後離婚、再婚をくぐりぬけながら、着々と作家としての業績を重ねていき、カナダにとどまらず世界的な名声を獲得していきます。このあたりからは娘としての作者自身の思い出がかなり入ってきて、興味深いものがあります。ちょうどカウンター・カルチャーの時代に娘たちを育てたマンローの母親ぶりというのは、おそらくこの時代のそこそこ教養のある「ススんだ」母親には共通していたんじゃないかと思いますが、心配しつつも、娘にさまざまな「体験」を煽りたてたりするようなところもあるという、自分の時代からすると夢のような自由を生きる娘たちを眩しく見つめるスタンスであったようです。そしてこの頃から作者は「大作家マンローの娘」という重圧を感じ、劣等感に苦しんだりします。 作家マンローのいわば「生身」の姿が描かれているという面白さ以外のもうひとつの本書の魅力が、マンローの創作の秘密があちこちに散りばめられていること。短編の素材となった実際の出来事が記され、それをマンローがどのように膨らませていったかが語られます。リストを作って、紹介されている作品をもう一度読み直すと面白いだろうな、と思いつつ、まだ実行していません。マンローのファンなら必読。マンローを知らない方でも、激変の時代を作家として生きた女性の伝記として面白く読めるのでは。もしもマンローがノーベル文学賞を受賞したら、ぜひ本書を思い出して読んでみてください。

EVERYTHING RAVAGED EVERYTHING BURNED推薦文 by sosoraraさん

 生来のザル頭が最近いっそうひどくなり、読んだ片端から記憶が薄れます。短編集は特にそうで、ちょっと時がたつともはやうすボンヤリとした「感触」くらいしか記憶には残らないのですが、このデビュー短編集は、その際立った個性でもって私の記憶の霧のなかからくっきりと屹立しておるのであります。好き不好きはあると思いますが、文学好きの方なら、読んで損はない一冊かと。  人生のとあるところをさくっと切り取って、切断面からその人物や周囲の人間の人生の成り立ちを垣間見せる、じつに短編らしい短編が並んでいます。乾いた筆致で、的確に人物像を描き出すその描き方は、細やかというのではなくて、鋭く、ウェットなところのない独特の情感を醸し出しています。中年男、小学生の男の子、老人、少女。登場する主人公の年齢や性別はさまざまですが、みななんらかの挫折感や屈託を抱えています。とはいえ、挫折感や屈託をまったく抱えていない人間のほうがむしろ稀なのですから、そういう意味では現代人の普遍を描いていると言えるかも。その普遍が、じつにまあヘンテコなのです。人間というのはまったくもってヘンテコな生き物であることよ、とつくづく思わせてくれる作品集。現代のアメリカを舞台にした話が並んだあげく、最後はなんとバイキングの物語。伝説をなぞったかのような淡々とした殺戮の描写に、な、なんでここにこんなもんがくるのっ、しかもこれが表題作? と訝しみながら読み進めていくと、最後に、おおっ、こうきたか、とうならされます。いずれも見事な出来で、とてもデビュー作品集とは思えません。

‘The Forgotten Garden’応援文  by ムルハウザー

■無人島本間違いなしの忘れられない1冊! ●導入部の自己流あらすじ   第一次世界大戦前夜の1913年、4歳の少女がオーストラリアのとある港に下船する。しかし、付き添いはおろか迎えの影さえない。夕暮れ迫る埠頭、小さなスーツケースに腰かけ一人途方に暮れる少女。 見かねた港湾部長のヒューが連れ帰るが、少女は記憶喪失で名前さえ名乗れない。スーツケースの中身は衣類、女流作家の手になる1冊の童話集などで、身元の手がかりになりそうなものはない。 各方面に照会するが望ましい返事は返ってこない。そして、ネルと名付けられた少女は、ある罪深い事情からそのままヒュー夫妻に育てられることになる。 17年後の1930年、ネル21歳の誕生パーティの席上、ネルはよかれと信じた父から出自の秘密をささやかれる。その途端、ネルのアイデンティティーは崩壊し、以後、彼女は人が変わったようになってしまう。 さらに時が流れ2005年、臨終の床にある95歳のネル。孫娘のカサンドラが看取るなか、ネルは意味不明の譫言を残して亡くなる。「あの人が、女流作家が待つように言ったの……」。 祖母の死後、カサンドラはネルの妹たちから姉は私たちとは血のつながりのない他人で、じつは戸籍すらないと明かされる。また、弁護士からカサンドラは祖母から遺産として英国のコテージを相続したことを知らされる。 弁護士に英国行きを進められるが、カサンドラは気が進まない。しかし、彼の一言に耳がそばだつ。コテージの立つ地所の元々の持ち主は画家のナサニエル・ウォーカーだという。彼の挿絵はカサンドラのお気に入りだ。そして、それは10歳のとき、母親からネルの許に置き去りにされたあの日、祖母の寝室でこっそり読んだ童話集の挿絵画家ではなかったか。 祖母の遺した小さなスーツケースをあらためているうちに、カサンドラはネルの書いたメモを発見する。祖母は自分の出自がもう少しで明らかになりそうなこと、また、英国への移住を決意していたことを知る。そんな大事な計画を、なぜ祖母は断念したのか。そこで、カサンドラは思い当たる。計画を実行に移す直前、祖母は母から私を押しつけられたのではなかったか? 私のために、私のせいで、祖母は計画をあきらめた? こうしてカサンドラは、ネルの遺志を継いで彼女の出自を探るべく英国行きを決意する。それはマウントラチェット家の忌まわしい秘密を明かす旅でもあり、カサンドラ自身の再生の旅でもあった。 ●読者をリーダーズ・ハイ状態へと誘う語りのテクニック  以上が導入部で、すでに112ページ(Pan Booksのpaberback版)。全体はなんと625ページもあって、正直、厚いです。本が届いた時、予想外の厚さに思わずひるんだほど(背の幅約39mm)。果たして読み終えられるだろうか? 不安におびえながら読み始めたのでしたが……。 印象的なオープニング、小気味よい場面転換、各章の有機的なつながり、効果的に反復されるキーワードといった巧みな語り口に乗せられ、ネルに戸籍がないわけを知った頃には、早くも本書に引きずり込まれていました。しかし、それはほんの序の口に過ぎなかったのです。 洋書読みなら、一度ならず覚えがあるのではないでしょうか? ツボにハマるというか興が乗るというか、読んでいる本の世界の虜になると、あ~ら不思議、未知の単語もなんのその、意味がどんどん類推できて、読む速度も一挙にスピードアップ、なぜか読解力が急に高まるリーダーズ・ハイ状態! たちまち、その状態へと突入していったのです。 それはひとえに構成の妙と語り口のうまさゆえでしょう。導入部以降は、謎の女流作家にまつわる物語(1900~1913年)、ネルの英国での探索行(1975年)、カサンドラの追跡調査(2005年)の三つのストーリーからなるのですが、それらが交互に語られて進みます。その結果、時の隔たりを感じさせず、すべての出来事が現在形のようにいきいきと繰り広げられます。 さらに、ある時点から年代こそ違え、舞台が完全に重なり、過去が現在にも影を投げかけていることがわかってきます。そして、同じ人物や同じものが時代を変えて繰り返し登場します。その結果、あの林檎の木はあの時の林檎の木かとか、彼はあの時の少年だったのかといったように、読者が自ずと思い至る仕掛けになっているのです。この手法はじつに見事です。しかも、謎は明かされると同時に、新たな謎が生まれます。しかし、作者はその謎をもったいぶらず適度な間を置いて解き明かしてくれるというか、読者に気づかせます。こうなるともうページを繰る手は止まりません。 そうして、夢中になりながらエピローグにたどり着いた読者は、ネルの悲劇は単なる事故や過ちなどではなく、人間の織りなす思いや感情のもつれから紡がれた壮大な因果の結果、避けられない必然であったことを思い知らされるのです。そして、本書に挿入された童話の意味にもはたと思い至って、またしても作者の巧緻に舌を巻くことでしょう。そうしたら、ぜひ、もう一度、エピローグの文章を読み直してみてください。作者のネルに対する思いに心打たれずにはおれないはずです。個人的には、読後、これほど深い余韻に包まれた小説は久しぶりでした。 ●読後も副作用が  本書の文章はイメージを喚起しやすく、読後半年近く経った今でもいろいろな場面が思い浮かびます。しかもまるで、この映画の予告編を目にしたかのように、ありありと。本書は本国(オーストラリア)はもとより英米でも好評なようですから、映画化の可能性も高そうです。願わくば、BBCで8時間くらいの連続テレビドラマ化を! というのも、舞台は英国の古いお屋敷、いわく十分の複雑な迷路、四方を壁で囲まれた秘密の花園、崖の上に立つコテージと、まさにBBCにおあつらえ向きだからです。 作者も女性、描かれるのも世代を超えた3人の女性の生き方と女性向け要素が濃い本書ですが、壮大な謎解き、圧倒的な物語の面白さ、それを支える構成や語りの妙など文芸ミステリーとしても極上、小説好きになら老若男女誰にでも自信をもっておすすめできます。 この応援文を書くに当たり、ひろい読みしていたら急に再読したくなって、実際読み始めてしまいました。すると、初読の際に読み飛ばしていた細部にまで作者の神経が行き届いているのにすぐに気づかされました。本書のさりげない、それでいて読者を駆り立てずにはおかない語りの技巧を堪能するには、再読必須かも知れません。個人的には、これからも折ã �«触れて読み返すでしょうし、無人島へも必ず持っていきます。 長々と駄文を弄してしまいましたが、この読者をして思わず熱く語らせてしまうところこそ、何にもまして本書の魅力の証しではないでしょうか? なにしろ、希代の読書家かつ読み巧者のわれらが渡辺由佳里さんも「この本がどれほど好きかをちゃんと説明するにはわが家にご招待してお茶ではなくモルトウィスキーあたりをかかえて一晩中お話するしかない……」とおっしゃっているくらいです。そう、読んだら語らずにはいられなくなってしまう本なのです。一晩中語り合いたくなってしまう本なのです。本書こそまさに記念すべき第一回「これを読まずして年を越せないで」賞にふさわしい傑作だと思います。

2009年スコシアバンク・ギラー文学賞受賞者発表!

本日11月10日午後9時(ET)にカナダの2009年スコシアバンク・ギラー文学賞(Giller Prize)の受賞者が発表されました。 受賞者はLINDEN MACINTYREです!受賞作The Bishop’s Manの詳しい内容はこちらを。 http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=0307357066 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=0307357066 最終候補作が発表されたとき、AtwoodのThe Year of the FloodやPaulette JilesのThe Colour…

世界各国からネットでOprahのブッククラブに参加してみませんか?

彼女が番組でのブッククラブ(読書会)に選ぶと必ずミリオンセラーになることで有名な、トークショーホストのオプラ・ウィンフリー。作家や出版社は選んでいただくための努力をこれまで続けてきたでしょうが、頑に自分で選ぶことでも知られています。ですからさらに価値が上がるわけですね。 さて、今回オプラは、全世界からネットで参加できる最大のブッククラブを企画しています。11月9日の東海岸時間午後9時(日本時間:11月10日午前11時)からOprah.com, CNN.com, Facebookで同時にディスカッションなどを繰り広げる読者参加型のイベントで、それに先立ち、なんとネットでebookの無料ダウンロードができます。これが今回ブッククラブに選ばれたSay You’re One of Themです。 作者はナイジェリア生まれのイエズス会の修道士で、戦争に引き裂かれるアフリカを描く5つの物語(短編ではなく、けっこう長いらしい)が収められています。 http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=0316086371 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=0316086371 全部を読み切ることができなくても、少し読めばディスカッションの内容が見えてくるのではないかと思います。「ブッククラブ」の雰囲気を味わってみたい方、英語の勉強に利用したい方、などにおすすめです。 ご興味のある方はぜひ、こちらのサイトから招待状に申し込み、無料ダウンロードしてください。

Plastic Logic社の電子書籍リーダーQUE、Bernes & Noble社から発売

このところ何かと忙しい電子書籍リーダー分野です。今度は以前お話した英国Plastic Logic社の電子書籍リーダー(ebook reader)QUEの発売が決まったというお知らせです。 米国ではBernes & Nobleから1月7日に発売されます。「え?Bernes & Noble!だってNookを出したばかりじゃないの」という反応はごもっともです。QUEのサイズは8.5 x 11インチとKindleDXとほぼ同じ大きさ(QUEのほうがやや大きい)で、NookとQUEの関係はKindle 2とKindleDXのような位置づけになりそうです。また、Bernes & NobleにとってはB & Nのebookを売るデバイスが多ければ多いほど書籍の売り上げが増えます。…