Imperial Radch三部作(Ancillary Justice)の完結編 Ancillary Mercy

著者:Ann Leckie
ペーパーバック: 368ページ
出版社: Orbit
ISBN-10: 0356502422
発売日: 2015/10/8
適正年齢:PG12
難易度:上級レベル(ここまで読んだ読者には読みやすい)
ジャンル:SF
キーワード:スペースオペラ(昔の感覚ではなく)、宇宙船、帝国、闘い、植民地政策、公正
シリーズ(三部作)名:Imperial Radch、1巻Ancillary Justice 2巻Ancillary Sword
文学賞:2016年ヒューゴー賞最終候補


心から愛しているシリーズや三部作、四部作の完結編を読むのは、待ち遠しいけれど、同時にすごくナーバスになる。

Ancillary Justiceでぞっこん惚れ込んだImperial Radch三部作のAncillary Mercyの場合もそうだった。(これを読んだのは約1年前だが、忙しくてレビューを書き忘れていたことに、最近気付いた)。

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2016年のBEAのパーティにて。著者のAnn Leckieと

結論は、「ああ、良かった」というものだった。

この三部作を理解するためには一部から読む必要があるので、ここではストーリーの詳細には触れないことにする。

それよりも、この三部作の意義について語りたい。

このユニークなSFの主人公は、みずからをBreqと呼ぶAIだ。かつては宇宙船「Justice of Toren」そのものであり、多くのAncillaryの一部であり、One Eskと呼ばれる個体のAncillaryだった。
混乱するだろうが、読み進めるうちにそれがこの本の重要な部分だということがわかる。

Breqは感情を持つAIだ。Radch帝国が宇宙船のAIを作ったときに、感情を入れ込んだのは、「感情抜きだと、重要ではない決断が、終わりがない取るに足らないことの比較で耐え難いものになるから」だった。その結果、Breqはほかの多くの登場人物より慈悲深く、忠誠心があり、愛や友情のニュアンスも理解できるキャラクターだ。
そして、最終的に誰よりも尊敬を得る指揮官になった。

また、現実社会の人種や性のステレオタイプを超越している点でも大きな意義がある。

そして何よりも私がこの三部作を愛するのは、複雑な世界観を扱いながらも、ヒューマニティを信じる暖かさがあることだ。この世界は、読了後もずっと私の中で生き続けている。

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