アウシュヴィッツで人体実験の材料になった双子のグリム童話のような小説 Mischling

著者:Affinity Konar
ハードカバー: 352ページ
出版社: Lee Boudreaux Books
ISBN-10: 0316308102
発売日: 2016/9/6
適正年齢:PG15(残酷なシーン多し)
難易度:上級+〜超上級(リリカルな文体のため、かえって状況がわかりにくい)
ジャンル:歴史小説
キーワード:ナチス・ドイツ、アウシュヴィッツ強制収容所、人体実験、双子、ヨーゼフ・メンゲレ
賞:ニューヨーク・タイムズ紙notable book、Publishers Weekly2016年Best of the books

一卵性双生児の少女StashaとPearlは、生まれる前から特別な繋がりを持っていた。
相手が考えていることや、体験していることを感じるほど、強い絆だった。

ユダヤ系ポーランド人の二人は、12歳のときに祖父と母と一緒にアウシュビッツ強制収容所に送り込まれた。そこでは、一卵性双生児は「特別扱い」の存在だった。祖父や母から引き離されたStashaとPearlは、悪名高き医師のJosef Mengeleが双子や先天性奇形がある子どもを集めた通称「Zoo(動物園)」で人体実験の対象になる。

ストリート・スマートなところがあるStashaと、共感能力が強いPearlは、異なる種類の残酷な実験の対象になり、強い絆を失っていく。そして、ついに片方が姿を消してしまう……。

今年話題になった文芸小説(歴史小説)のMischlingは、実際にアウシュビッツで起こった双子の人体実験を題材にしたフィクションだ。
フィクションだが、実際に「死の天使」とも呼ばれたヨーゼフ・メンゲレが出て来る。メンゲレは、一卵性双生児に異様な興味を抱き、いろいろな人体実験を施した。それらの多くは致命的で、1500組の双生児のうち生き残ったのは300人ほどだったと言われる。

子どもたちに自分を「おじさん」と呼ばせ、キャンディを与えて優しくした直後で、毒や病原体を注入したり、麻薬なしで致命的な手術をするような異様な人格だったことも記録されているが、この小説を読むと、その不気味さで背筋が寒くなる。

Mischlingの長所は、リリカルな文体にある。
残酷で恐ろしい話を伝えているのに、まるで寓話のような雰囲気なのだ。
「だからこそ素晴らしい」と感じる読者もいれば、「実際にあった恐ろしい歴史をファンタジーのように扱わないでほしい」と思う読者もいるだろう。

小説としても、前半は非常に興味深く読めたのだが、途中から距離感を覚えてしまった。そして、アウシュヴィッツを訪問したときや、回想録を読んだときのように胸をえぐられる思いや、人生観が変わるような感覚を抱かなかった。

また、アウシュヴィッツでの人体実験のことを知らない人にとっては、フィクションとしてそれを知る良い機会だろうが、サバイバーが書いた回想録を読んだ人は、違和感や物足りなさを感じるかもしれない。

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