Month: February 2009

思春期の少女の危うさ-Go Ask Alice

作者:Anonymous (実在の少女の日記として出版されたが、最近になって心理カウンセラーのBeatrice Sparksが作者と判明)出版日:1971年ヤングアダルト/思春期の少女の心理/日記(これについては異論あり) http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS1=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as4&m=amazon&f=ifr&ref=ss_til&asins=1416914633 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=1416914633&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS1=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 大学教授の父を持つ普通の少女が、ドラッグ中毒になってゆく過程を日記に綴ったもので、1971年の発売当初は60年代後半にドラッグのオーバードースで亡くなった実存の少女のものだと信じられていた(その後心理学者でこの本の編集者であるベアトリス・スパークスのフィクションだということが分かった)。 フィクションだとしても、ドラッグはいけないことだと信じ、好きな少年と結婚するまで処女でいることを夢見ていた普通の少女がドラッグやセックスの世界にずるずると入り込んでゆく様子は、リアリスティックである。私が小学生のころに書かれたものだが、今の高校生が読んでも古さを感じないようである。高校生の私の娘の感想は、「面白かったけれど、落ち込む本だ」というものである。現実の世界との差をたずねると、「(私が通っている)高校でもドラッグをやっている人はいるし、誰もがそれを知っているけれど、やっていない人を引き込もうとはしない。まあ、パーティに行けば別かもしれないけれど、それは行かなければすむことだし」と言う。またドラッグをしていない生徒たちのほうも、Go Ask Aliceに書かれているような「ドラッグをやっている人だから避けよう」という感じはないらしい。だが、以前取材で娘と同じ高校に通っていた男子生徒は、ドラッグを押し付けられる人間関係があり、そこから抜け出すのが大変だったことを打ち明けてくれた。「高校生がこの本を読んだからドラッグを避けよう、と思うかな?」と娘に尋ねると、「ちょっとだけやってまだ怖さを知らない子には効果があるかも」と答えた。 ●読みやすさ ★★★☆☆先日ご紹介したThe Perks of Being a Wallflowerと同様に、日記なのでとても分かりやすい英語です。200ページ程度の薄い本なので、読了も簡単です。初心者におすすめの一冊です。…

今週のニューヨークタイムズ紙ベストセラー(フィクション・ハードカバー編)

最新ニュース  Dog On Itがベストセラーリスト7位に登場! ほうらね、私が予言したとおりだったでしょう? Still AliceやDaemonでもそうでしたが、私は売れる本を嗅ぎつけることにかけては自信があるのです(売れる本を書く才能はないのは悲しいことですが...)。 自慢話はこのくらいにして、今週のThe New York Times ベストセラーリストです。今週はDog On Itが入ったこともありますが、それだけでなく新登場がすべてそれなりに納得がゆく顔ぶれなので、先週よりもベターなリストと(独断で)断言します。先週までに登場したものは、過去のリストをご覧ください。今週初登場のものだけコメントを加えました。 1….

今週のニューヨークタイムズ紙ベストセラー(ノンフィクション・ハードカバー編)

まずはトップニュース。 本ブログの「注目の新刊」で私が「これは絶対に売れる」と予言したHow We Decideがベストセラーリスト12位に新登場しました!ノンフィクション編でもちょっと自慢しましたが、私は売れる本を予言するのが得意なのです。先週「ベストセラーのみならず、ロングセラーになる可能性があります」と予告したLords of Financeも15位入りしています。 先週までに登場したものは、過去のリストをご覧ください。今週初登場のものだけコメントを加えました。 1. The Yankee Years 2. Outliers 3. Obamaニューヨークタイムズ紙のスタッフによるオバマ大統領誕生までの軌跡。…

現代版の「ライ麦畑」?-The perks of being a wallflower

著者:Stephen Chbosky出版日:ヤングアダルト/思春期の葛藤/現代小説 現代を生きる普通の男子高校生のリアリスティックな姿 http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=0671027344 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=0671027344&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS1=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 友人あての手紙の形を取った小説。主人公のチャーリーは高校一年生の男の子。可も不可もなく、ごく普通の目立たない存在である。パーティで男の子がダンスに誘ってくれない女の子のことを「壁の花」と呼ぶが、チャーリーは男の子版の「壁の花」。内向的で、行動型ではなく分析型なのであまり目立たない。 作者は脚本家で映画監督のStephen Chbosky。 読んだ人はすぐにピンとくると思うが、これはChboskyによる現代版の「The Cather in the Rye(ライ麦畑でつかまえて)」である(内容は異なるので、ご心配なく)。「文学作品として後世に残るか?」とたずねられたら答えは「No」である。けれども、私には「ライ麦畑」よりもずっと面白かった。というのは、主人公のチャーリーが等身大だからである。文芸作品ではないがゆえに、思春期のつらさを正直に描けているような気がする。友人の自殺、家族や友人との人間関係、初恋、性とドラッグの初体験、と多くの葛藤が詰まっているが、あからさまに作り話に感じないのは、実際に思春期とは難しい年代だと知っているからだ。体の成長だけでなく、自分と周囲のティーンのホルモンの変化、それに伴う心身のアンバランスと人間関係のゴチャゴチャ、加えて大学進学とかいろんなことにいっぺんに対応しなければならない。わが娘がいうように「It's tough being a…

現代のSFファンが選んだSFの最高作

Goodreadという読書に関するソーシャルネットワークで(現時点で)約2300人が投票している「Best science fiction books」のトップ5(といいながらボケて6つ載せてしまいました)です。 1. Ender’s Game1985年に出版され、1991年に現在の政治状況に合わせるために改訂された。未来の地球。異星人Formics(昆虫のような生物なのでBuggersとも呼ばれる)との2度の戦争をなんとか生き延びたが、将来の侵略が予想される。将来の戦争でのコマンダーを養成するために、世界中から最も優れた才能を持つ子供たちが選ばれ、幼いときから家族から引き離されて養成学校で戦いと戦略のトレーニングを受けるシステムができていた。主人公のEnderはその中でも飛びぬけて優秀であったが、それゆえに孤独を味わう。ネビュラ賞とヒューゴ賞の両賞を受賞した作品。 読みやすさは★★と★★★の中間。文章はさほど難解ではないが、SFなので造語が多く、状況をつかみにくい可能性がある。 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=0765342294&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS1=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 2. Dune1965年出版で、ヒューゴ賞受賞。また、当時新設だったネビュラ賞の最初の受賞作でもある。2000年後の未来、人類は宇宙に散らばり、多くの惑星に居住するようになっている。砂に覆われた惑星アラキスには、全宇宙を支配する力を持つメランジと呼ばれるスパイスがある。このスパイスをめぐる闘いと革命などここでは到底まとめられない非常に壮大なシリーズ。 読みやすさは★★。状況がつかめるまでは、読み進めるのが困難に思えるだろう。 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=0441172717&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS1=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 3. The…

これから出る注目の新刊-Play

これまで何度か別のブログで触れてきたことですが、私は「早期英才教育は時間の無駄だけでなく、有害だ」と強く信じてきました。私がこれまで出会った成功者たちは、たいていがり勉をせずに子供らしく遊んできた人々です。大人になってからも、これらの人々は忙しい合間を縫って真剣に遊びます。それこそ「よく遊び、よく学べ」という感じで切り替えがうまいのです。サーフィンをしたり、テニスをしたり、モデルの飛行機を作ったり、と種類こそ異なれ、ちゃんと遊んでいる人はおおむね仕事もできるし、幸せだし、健康なのです。 この私の感覚を裏付けてくれるような本がもうじき出版されます。 http://rcm.amazon.com/e/cm?t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&asins=1583333339&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&fc1=000000&IS1=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 作者は内科と精神科を専門に学んだのちThe National Institute for Playという非営利団体を設立した医師で、「Play: How It Shapes the Brain, Opens the…

これまで読んだ一番ひどい本(井戸端会議編)

図書館の理事をしている同年代の友達ジャネットと、「これまで読んだ一番ひどい(許せない)本は何か?」という話題でちょっと盛り上がりました。 ジャネットのチョイスは誰でも知っているRobert James Wallerの「The Bridges of Madison County(マディソン郡の橋)」 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=0446364495&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS1=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 「属しているブッククラブで読むことになったのだけれど、読んで後悔した」とジャネットが憤る第一の理由は「文章表現がひどい」こと。そして、「『一緒になることはできませんでしたが、それでもずっと愛していました』なんて筋書きは、いかにも男性に都合のよい言い訳的なロマンス」と思い出すだけでムカつくようです。(ちなみに私は、それを予測したので読んでいません) 私の選んだワースト第一位はJames Pattersonの「Suzanne’s Diary for Nicholas」です!…

不謹慎と知りつつ気軽に読んで笑えるThe Darwin Awardsシリーズ

著者:Wendy Northcutt出版日:2000年ジャンル:ノンフィクション/風刺 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=0452283442&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS1=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=0525950850&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS1=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 知っている人はもう何年も前からこの存在を知っていると思いますが、そうでない人のために一応ご紹介しておきます。世界的なベストセラーになり、邦訳もされているThe Darwin Awardsは、「われわれ人類という種の長期的存続を確実なものにするために、崇高なまでに愚かな方法で自らを遺伝子プールから抹消させた(つまり死なせた)人」を紹介し賞を与えるというものです。インターネットのサイトwww.DarwinAwards.comで有名になったものが書籍の形になり、それが大ヒットして現在まで何冊もシリーズが発売されています。 ダーウィン賞と呼んでいるのは、登場する人々が愚かな種を次世代に継続する前に自ら馬鹿げた方法で死んでいるからです。たとえば車泥棒がその車を放棄する前に中から火をつけたところドアが開かなくて焼け死んだエピソードとか、ブタを盗んだ3人の男がブタが暴れたために衝突事故を起こし、シートベルトを着用していなかった彼らは死んだけれど逃げないように縛られていたブタは生き残った話とか、実話なので不謹慎だと思うのですが、つい吹き出さずにはいられません。一気に沢山読むよりも、疲れたときに2~3ページ読んで笑うというのに適しています。特に小学校高学年から高校生の男の子に人気がある本です。 ●ここが魅力!まったく頭脳を使わずに読める本なので、ちょっと暇ができたときとか、軽く笑える話を読みたいときに適しています。 ●読みやすさ ★★★★☆とても簡単な英語です。ほとんどのエピソードが半ページから1ページで短く、必ず読みきれるのが良いところ。読みにくいエピソードは飛ばして、読めるものだけを選べます。洋書初心者にはおすすめの本です。 ●アダルト度 ★★☆☆☆車を高速で走らせながらオールヌードでセックスしていて衝突死、というエピソードなんかもありますから、「どういう意味?」と尋ねられて困らないように小学校高学年くらいからをおすすめします。