Month: May 2009

ちょっとした夢の実現-AmazonのVine Program

今のところ米国と英国だけのようですが、Amazonが選んだレビューアーが発売前(または新発売)の本や品物を無料で受け取り批評をAmazonに載せるVine Programというプログラムがあります。 「マーケティング操作だ!」という批判もありますが、Vine Programで得た本や品物の評価にはCustomer review from the Amazon Vine™ Program というマークがついていますし、私がこれまで購入した本のVine Programレビューは率直で役立つものが多いと思っていました。それよりも、ずっとVine Programに選ばれたレビューアーに嫉妬していたのでした。 嫉妬の理由は「無料で読める」ということではなくて(もちろんそれもプラスですが)、「発売前に読める」ということです。シリーズの続編が出るのをずっと待っているときにVineのレビューアーが既に読んでいることを知り、何度地団太をふんだことか…。 これまでもARCsをBook…

今注目の11歳の少女が主人公のミステリー The Sweetness at the Bottom of the Pie

著者:Alan Bradley 2009年4月 ミステリー(1950年英国が舞台) むかしの英国が舞台のミステリーって、必ずといっていいほど紅茶とお菓子が出てきますよね。私が英国ものに弱いのは、そのせいもあるかもしれません。この本にFortnum and Masonのアッサムティーの温めなおしをInspectorに出すシーンがあるので、私もTaylors of Harrogateのアッサムティーの温めなおしを飲みながら書くことにします。 (あらすじ) 第二次世界大戦後の1950年の英国の小さな村Bishop Laceyが舞台。この地方の旧家de Luceの11歳の末娘Flaviaは、エキセントリックな大叔父と亡くなった母親が残した化学の実験室で毒の実験をするのが趣味だ。愛する妻を失ったFlaviaの父は切手蒐集の趣味に没頭し、17歳と13歳の姉たちは異性や本の世界に心を奪われていて誰も彼女の相手をしてくれない。ひとりだけFlaviaを気にかけてくれるのは戦時中に父の部隊で一緒に闘った庭師のDoggerだが、彼はトラウマの後遺症でときどき奇妙な言動を取る。 ある日、屋敷にくちばしに1ペニー切手をつけた死んだJack snipe(シギの一種)が届き、Flaviaの父は青ざめる。Flaviaはその日父を尋ねた謎の人物が翌朝庭で息を引き取る場面に立ち会う。殺人罪で逮捕された父のぬれ衣をはらすために、Flaviaはひとりで探偵を始める。…

図書館司書ジェンが選んだ「今年出版されたおすすめ本5冊」

私の元義理の妹で図書館司書をしているジェンは、昔から本の虫。図書館のために本を選ぶ役割もつとめていますから、本が出版される前から多くの本をすでに読める立場にいます。とくに、文芸小説のなかでも、商業的にも成功するものを選ぶのが得意です。 というわけで、ちょっと前にジェンに尋ねた「今年出版されたおすすめの本」を5冊後紹介します。 1. Reliable Wife 2. Little Bee 3. Cutting for Stone 4. Shanghai Girls…

Amazonに対抗する有力なe-book販売業-Scribd

未開でしかも最も伸びているe-bookの業界は水面下で敵を出し抜く激しい競争がくりひろげられている様子です。KindleのうえにStanzaを買い取って独走しそうな勢いのAmazonですが、カラーインクの電子ブックリーダーの発売も予定されていますし、決して勝負が終わったわけではありません。 そこに、最近ソーシャルネットワーク系パブリッシャー(social publisher)のScribdがe-bookの販売業を始めたというニュースです(Publishers Weeklyの記事)。 大手出版社から個人まで誰でも利用でき、販売の方法(オンライン購読のみ、PDFダウンロード可能、PDF,DRM, ePub全部、携帯へのダウンロード可など)が選択でき、しかも販売者が売り上げの80%を受け取ることができるという魅力的なものです(Kindle版で著者や出版社が受け取る額はその作品によって異なるが、はるかに少ない。「ええ~っ!あんなに売ったのに、これだけしかくれないの?」というレベル)。 私も出版社の無料購読キャンペーンなどでScribdはよく利用し、著作権侵害の作品が載っていることは気になっていました。Scribdは、その厳しい管理にも乗り出すようです。

スティーブン・キングが選んだ「この夏の推薦書7冊」

「この夏何を読もうか?」と迷っている方のために、スティーブン・キングがエンターテイメント・ウィークリーでおすすめ本を7冊挙げています。ディケンズの古典も1冊含まれていて、バラエティに富んでいます。 1.Shatter オーストラリアのNed Kelly賞受賞作品。心理スリラーで、バイオレンス、アクション、そしてぞっとする怖さがあるようです。私は怖いの苦手なんで、どうしようかなぁ… http://rcm.amazon.com/e/cm?t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&asins=0385517912&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&fc1=000000&IS1=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=0385517912&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS1=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 2.Quicksilver 冒険、魔法、科学、歴史、ロマンス…と盛りだくさんのバロック大河小説Baroque Cycleシリーズの第一弾です。これは、私がKindleに入れたまま「緊急に読みたい本」が出てきて後回しになっていたもの。キングのリストを見て「そういや、Kindleに入れていた」と思い出して、昨日からトレッドミル用として読み始めました。なかなか詩的で、暗く不穏な雰囲気が漂う作品です。ただし、英語は中級レベルでも読みにくいと思います。 http://rcm.amazon.com/e/cm?t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&asins=0060593083&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&fc1=000000&IS1=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=0099410680&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS1=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 3.The Tourist 俳優のジョージ・クルーニーが映画オプション権を購入したスパイスリラー。クルーニー本人が主人公のMilo Weaverを演じるつもりのようです。…

14歳の少女が書きAmazonが新ビジネス第一弾に選んだファンタジー-Legacy

Cayla Kluver2008年4月自費出版(AmazonEncoreの第一弾に決定すると同時に、このバージョンの発売は停止されました)ファンタジー/ヤングアダルト/ロマンス(やや) http://rcm.amazon.com/e/cm?t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&asins=0980208971&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&fc1=000000&IS1=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 http://rcm.amazon.com/e/cm?t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&asins=1595910557&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&fc1=000000&IS1=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=0980208971&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS1=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 AmazonがAmazonEncoreという出版ビジネスを始めるという記事を読み、その第一作として選んだ作品名を見て、びっくり仰天しました。それは、昨年の春に私がファンタジー好きのわが娘と友人のために買った自費出版の作品だったのです。三部作の第一部のLegacyが爆発的に売れている様子はなく、「このままお蔵入りになったら続編はどうしてくれるのだ?」と心配していたところでした。Caylaによると、すでに完結編の校正に入っているとのことで、Amazonのおかげでちゃんと完結編まで出版することができるようです。 この作品に興味を抱いたのは、私の娘の1学年上でしかない少女の書いた作品がClarion review(料金を払って文芸批評してもらうシステムですが、由緒あるものです)で星5つの評価を得たということです。この目で確かめるために読んだところ、本当に14歳(現在は16歳)が書いたとは思えないできばえでした。もちろん、大人が書いたものに比べると、洞察が足りないと思う部分はあります。けれども、14年間の人生経験(!)で人間関係や社会構造の何が洞察できるというのでしょう?だからそこにけちをつける気にはなりません。「実際に彼女が書いたのか?」という疑問を抱く人もいるでしょう。でも、私は実際にCaylaが書いたと信じています。幼いころから本の虫で、作家になることだけを夢見て書き続けてきた子なのです。14歳が書いたことを実感するのは主人公のプリンセスAleraとその他の貴族の少女たちの会話です。まるで現代の少女のゴシップそのものです。ファンタジーの形をとっていますが、青春小説(ロマンス)なのです。 私がひとりの「お母さん」としてCaylaのために祈るのは、普通の女の子の人生をちゃんと生きてくれることです。早くに才能を認められた子供たちが、大人になってもっと豊かな人生を送る例は残念ながらあまり多くありません。大学に行って大学生らしい恋と失恋をして、就職に苦労して、上司や同僚との人間関係に悩み、またも恋と失恋、希望と絶望を繰り返し、ようやく面白いストーリーが書けるようになると私は思うのです。だから、Caylaの成功には心の底から「おめでとう!」と言い切れない複雑な思いもあります。 (あらすじ)Hytanica国の王妃16歳のAleraは、国家を継承するために父親である王の選んだ相手と結婚しなければならない。しかし、Aleraは王が選んだ高慢なSteldorに反感を抱き、敵国Cokyriから来た謎に満ちた少年Narianと恋におちる。Narianの過去が明らかになるにつれて、Aleraは国と家族への忠誠心に疑問を抱き、自分の選ぶべき道について悩む。ティーンらしい胸のときめきとハートブレイクを象徴するAleraとNarianの恋には感情移入せずにはいられないだろう。会話とアクションにスピード感があり、思春期の少女を虜にしそうなファンタジーである。 ●読みやすさ ★★★☆☆14歳の少女が書いたものですから、難しい単語もありませんし、難解でもありません。けれども、ファンタジーに慣れていない人には、造語の名前や地名がややこしくて馴染みにくく、覚えにくく感じるでしょう。また、物語の進行がスムーズではないところもあります。Amazon版で改訂されている可能性はあります。 ●アダルト度 ★★☆☆☆14歳の子が書いたものですが、読者層はそれ以上と考えてください。ロマンスはキス程度までですが、結婚のテーマもあります。

2009年ピューリッツアー賞受賞作-Olive Kitteridge

Elizabeth Strout 2008年3月発売 文芸小説/短編集 米国北東部メイン州の沿岸の小さな町Crosbyを舞台に、数学教師Olive Kitteridgeを軸に繋がる13の短編集。 大柄のOliveは、町の住民たちから気性が激しく、寛容がなく、頑固で批判的だと思われている。町の小さな薬局を経営する薬剤師の夫Henryは温厚な人物として誰からも親しまれているが、夫の善人ぶりはかえってOliveを苛立たせるだけだ。最初の短編「Pharmacy」では、中年にさしかかったOliveとHenryが別の異性に惹かれる微妙な心理を描いており、読者はHenryに同情心を覚えずにはいられないだろう。だが、OliveとHenry以外のCrosbyの住人を主人公とする短編で脇役として登場するOliveからは異なる人物像が浮かんでくる。現実世界では人とはそういう複雑なものである。読み進むうちに彼女の毅然とした批判精神に対して反感と同時に尊敬も抱くようになり、老齢に達した孤独なOliveのほのかな恋を描いた最後の短編「River」では、(たぶんOliveのひとり息子が感じているように)彼女の欠陥をすべて受け入れたうえで幸運を祈らずにはいられないだろう。 鬱、自殺、親子関係、不倫関係、老化といったテーマを扱った短編はそれぞれが独立したストーリーで、Stroutの卓越した語りに吹き出したり涙ぐんだりしながら、いつのまにか、これまで会った人々を思い出し、自らの人生を振り返っていた。熟練した文芸作品でありながら気取ったところがなく、深い人間理解に基づく優れた短編集である。 ●ここが魅力! 有名な賞の受賞作は疑ってかかる癖があるのですが、久々に心底「これは受賞に値する!」と同感した作品です。3日間連続で睡眠時間5時間以下の寝不足だったにも関わらず深夜まで読みふけってしまいました。 最初にこの本でOliveに出会ったとき、あまりにも好感が抱けなくて「え~、これが主人公!」とがっかりしましたが、読み進めるうちにしだいに彼女に興味を抱くようになりました。Oliveだけでなく、わずかな希望や愛を求める普通の人々の悲喜劇に同情し、最後にはOliveに友達として電話をかけてあげたくなりました。 こういうことを感じさせてくれる文芸作品がPulitzer Prize(ピューリッツアー賞)を受賞したことを嬉しく思います。 ●読みやすさ ★★☆☆☆ 文章そのものは簡潔で難解ではありません。…

子供の才能を殺さないために親が読む本(1)

教育に関するノンフィクションを書く目的でレキシントン公立学校の運営陣と生徒を取材し、実際自分で子育てをした経験から、私は早期英才教育への反論をいくつか「ひとり井戸端会議」や「才能を殺さない教育」のほうに書いてきました。そうしたところ最近になって教育に関する書を多く出版されている糸山泰造さんという方からメールをいただきました。 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=4794216270&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS1=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=4767804639&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS1=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=4890361979&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS1=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=4023303844&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS1=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 日本を離れてずいぶん経つので、恥ずかしながらそれまで糸山さんの存在を存じ上げなかったのですが、お送りいただいた「思考の臨界期」という論文を読ませていただいたところ、あまりにも私の信念に似ていてびっくりしました。糸山さんと私の出会いのきっかけは、National Institute of Mental Healthの神経科学者Jay Giedd医学博士です。5歳から25歳までの脳を研究してきたGiedd博士が発見したのは、脳は思春期で成長・成熟しきるのではなく、無駄な枝を剪定しつつ成長と成熟を続ける大事な時期だということです。おおまかに説明すると、将来の脳を決定するための反復学習が必要かつ有効になるのは思春期でありこの時期に"Use it or lose it(使って伸ばすか、使わずに失うか)"の剪定をするという理論です(詳しくはTimeの記事とグラフィックをどうぞ)。それまでの幼児・児童期はニューロンの接続(可能性)をどんどん増やしてゆく大切な時期であり、そこで剪定(早期英才教育)をするべきではないのです。…