Kindle Unlimited(キンドル読み放題)の隠れたメリット

アマゾンがアメリカで2014年7月に始めたKindle Screen Shot 2016-08-25 at 4.45.32 PM.pngUnlimited(キンドル読み放題)のサービスが、今年ようやく日本でもスタートした。アマゾンがリストアップした12万冊以上の本、コミック、雑誌および120万冊以上の洋書作品を、月額980円で読み放題できるというものだ。

アメリカでは、オーディオブックも無料で読める作品があるが、日本のサービスにはそれは含まれていない。だが、その代わりに、コミックを含む和書と洋書の両方が楽しめるというメリットがある。

この記事に書いたが、私はアメリカでの公式スタートより前から2年以上Kindle Unlimitedを試している。その体験から、「毎月980円払う価値があるのだろうか?」といった疑問も含めて、メリットとデメリットを語りたい。

アメリカのKindle Unlimitedについてよく見かける批判は次のようなものだ。

利用者サイド

①読みたいような本があまりない

②Kindle Unlimitedにリストアップされているのは、一定の水準を満たしていない作品ばかり

③自費出版の安い作品の場合には10冊以上読まないと元が取れない。それなら、買ったほうが安い

作家サイド

④タダで借りられるので、読者が本を買ってくれなくなる

 

アメリカの場合、Kindle Unlimitedのリストにはハリー・ポッターのシリーズなど大手出版社の作品も多く含まれている。けれども、大部分はAmazon直営の出版社や自費出版の作品だ。大手出版社から出版できる基準に達していない作品もかなりの量ある。それらの多くは、0.99ドル程度なので、たしかに10冊以上読むのでなければ元は取れない。

しかし、この2年間に様相は変わってきている。
Amazon出版社からもベストセラー作家が誕生し、Marcia Clarkのように大手出版社から移ってきた作家もいる。また、大手出版社アシェットのSF・ファンタジー部門であるOrbitから人気シリーズを出していたRachel Aaronのように、自費出版に切り替え、Kindle Unlimitedで新シリーズを提供している作家もいる。彼らはアマチュアではない。ちゃんと文芸エージェントもついているプロであり、Aaronの「Heartstrikers」のオーディオブックは、賞も受賞している。

文芸の分野はまだ遅れているが、SF・ファンタジー、YAファンタジー、ミステリ、スリラー、ロマンスといった分野では、「Amazon出版社の作品」や「自費出版の作品」に対するスティグマが消えつつある。

日本の洋書ファンにとっては、使いこなせば絶対にお得なサービスだ。

 

では、作家サイドのデメリットはどうだろう?

Kindle Unlimitedは、売れっ子ではない作家にとってはかえって得だという。
トップクラスの作家の場合には、大手出版社はPRに力を入れるし、書店で平積みにもしてもらえる。だが、そうでない作家はなかなか読者に見つけてもらえない。Kindle Unlimitedにリストアップされると、読者の目に触れ、ランキングも上がる。ただでPRしてもらっているようなものだ。
そして、Kindle Unlimitedの場合には、読者が読んだページに応じて支払いがある。この記事で紹介されている例では、定価2.99ドルの作品を売った場合の印税2ドルに比べ、KUでの支払いのほうが0.68ドル高かったというのだ。先に出てきたRachel Aaronも同様のブログ記事を書いている。

刊行した作品がすぐに古本屋で販売される日本の場合、読者が「本」という媒体を買ってくれても印税はまったく入ってこないことが多い。日本の作家の場合には、Kindle Unlimitedで読者が借りてくれたほうがずっとお得なことになる。

 

Kindle Unlimitedには、もうひとつ隠れた(けれども大きな)メリットがある。

それは、「読書依存症の人を増やす」ということだ。

本の販売数が減っている原因のひとつは「時間の奪い合い」だ。かつてのライバルはテレビくらいだったが、インターネットが普及してからというものの、現代人はゲームやソーシャルメディアに時間を奪われ、読書の時間どころか、寝る暇もない。

だが、「読み放題」でいくらでも本を試せるとなると、ビュッフェのような心境になりがちだ。食べ放題のビュッフェでは、お腹がいっぱいでも、あれもこれも皿に乗せてつい食べ過ぎる。キンドル読み放題でも、「面白そうだな」と思った本をどんどんKindleに入れられる(同時には10作品まで)。ちょっと読んで気に入らなければ、さっさと見捨てて別の作品を試せばいいし、これまで馴染みのないジャンル(味)にも手を出せる。

そうしていくうちに、思いがけない作品や作者と出会い、そこからシリーズまるごと読み続けてしまうこともある(私の場合は上記のRachel Aaronの作品がそうだった)。それがコミックであっても、雑誌であっても構わない。読者をインターネットやソーシャルメディアから奪うことができれば、「読書人口」のパイそのものが大きくなるのだから。

「くだらない作品を沢山読んでも仕方がないだろう」という批判は野暮だ。

選択眼は、多くの本を読むことによって身につくものである。「読みたいものを、読みたいだけ読む」そして、多くの作品の中から隠れた名作を見つける。そのゲームを楽しむ人が増えれば、出版業界そのものが活気づいてくれると信じている。

 

 

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