Category: 現代文学

現代の英国で「ユダヤ人であること」を問いかける2010年ブッカー賞受賞作 The Finkler Question

Howard Jacobsonペーパーバック: 320ページBloomsbury Pub Plc USA (2010/10/12)文芸小説/現代小説/トピック:ユダヤ人、哲学2010年ブッカー賞受賞作 http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=1608196119 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=1608196119 さえない元BBCラジオ番組プロデューサーのJulian Tresloveには、旧知の2人のユダヤ人の友がいる。ベストセラー作家で有名な哲学者の Sam Finklerとは学校時代からの親友だが、その友情は複雑なライバル意識に支えられている。もう1人は、JulianとSamの学校時代の教師Libor Sevcikである。

ある中流階級の家族を通じて自由の国アメリカ合衆国の現代を描いた大作 Freedom

Jonathan Franzen 576ページ(ハードカバー) Farrar Straus & Giroux 2010/8/31刊行 ●筋書きをあまり知りたくない方への短いバージョン Patty, Walter, Richardの3人は、大学時代に知り合う。バスケットボールの花形選手で競争心が強いのに自己評価が低いPatty、Pattyに惚れ込む善良なWalter、Walterの善良さを愛する親友のくせに彼が好きになった女の子に手を出しては捨てるロックミュージシャンのRichard。愛情と競争心で繋がる3人の複雑な関係は、PattyとWalterが結婚した後もくすぶり続けている。

フランゼンの新作Freedomを発端にした文学論争

The Correctionsで米国文学界での地位を確保したJonathan Franzenの新作Freedomは、発売前から多くの文芸評論家たちが絶賛していました。マーサズビンヤードで休暇を取るオバマ大統領が休暇中に読むためにARCを受け取ったというニュースも米国の文学界で話題になりました。 もうひとつ話題になったのが、ニューヨークタイムズ紙の名物書評家ミチコ・カクタニの書評に対する女性作家の批判です。 発端になったのは、ベストセラー作家Jodi Picoultの次のようなツイートです。 それに加わったのが、これまたベストセラー作家のJennifer Weinerです。ツイッターで#franzenfreudeというハッシュタグを作って読者との意見交換を始めた彼女は、こんなツイートをしています。 彼女たちの言い分を大雑把にまとめると、ニューヨークタイムズ紙の文芸評論は、白人男性(特にニューヨーク在住)の作家には大変甘く、chick litやロマンスなど商業的な文芸作品を書く女性作家を見下げ、無視している、というものです。 【追記】これだけだとウェイナーやピコーが一方的にフランゼンを攻撃していてアンフェアだと思われるかもしれません。ですが、フランゼンは多くの場所でミソジニーな発言を繰り返しているのです。たとえば20世紀初頭に活躍した女性作家のイーディス・ウォートンの生誕150周年を祝うニューヨーカー誌のエッセイで、ウォートンが美しくなかったことや、それが彼女のセックスレス結婚、ひいては作品に影響を与えたことを示唆しました。女性の容姿と作品をつなげるような彼の発想は発言のあちこちにあり、女性の図書館司書の間ではフランゼンへ敵意を抱いている人はかなりいるようです。ブックエキスポでフランゼンの新作のARCを抱えていただけで、見知らぬ図書館司書から「あなた、彼の作品なんか読むの?」と喧嘩腰で質問されたこともあります。 知人がフランゼンの教え子だという関係から、(めったに人前に出ない)フランゼンの講演を聞いたことがあります。その時の彼の印象は、傲慢というよりもシャイで職人気質、という感じでした。けれども、文学界が好みそうな、商業的文学を拒むプライドの高さも感じました。 これらのことを念頭に、私はFranzenのFreedomを、やや懐疑的に読んでみました。 その感想は、こちらでどうぞ。

ビンテージドレスの世界を使ったいかにも英国産chick litな物語 – A Vintage Affair

Isabel Wolff 英国では2009年1月発売 米国では2010年6月29日発売予定(私が読んだのは米国版) 現代文学(大衆文学)/Chick Lit 由緒あるオークションハウス、サザビーズを突然辞めたフィービー(Phoebe)は、ロンドン郊外にビンテージドレスの店 Village Vintage を開く。突然思い切った行動に出たきっかけは、幼い頃からの親友エマ(Emma)の突然死と、それが原因になった婚約解消だった。

残された者の罪悪感を描く心理小説 The Lake Shore Limited

Sue Miller288ページ(ハードカバー)Knop2010/4/6文芸小説/現代小説 http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=0307264211 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=0307264211 両親の愛に恵まれなかったLeslieには子どもがおらず、歳の離れた弟のGusをまるで母親のように愛して来た。けれどもその愛情の対象を2001年9月11日の同時テロで失ってしまう。 高校教師のGusには当時一緒に住んでいた年上の恋人Billy(通常は男性名だがここでは女性名)がいて、Leslieはその後何年も独身でいるBillyに肉親のような責任感を抱いていた。 大学で教える傍ら舞台の脚本家をしているBillyには、Leslieには言えない秘密があった。それは、同時テロが起こる前にすでにGusと別れる決意をしていたことだった。自分を愛しているらしきGusにどう別れを告げるべきか悩んでいるときに同時テロで彼を失い、まるで悲劇のヒロインのように扱われることに後ろめたさを感じつつもそれを口に出すことができないできた。 ある種の生存者の罪悪感をひきずってきたBillyはその思いを最新の舞台劇The Lake Shore Limitedに書き上げ、Leslieと夫のPierceは観劇のためにヴァモントからボストンにやってくる。Leslieはこの機会に友人のSamをBillyに紹介しようとするが、そこには微妙な心理的背景があった。舞台劇The Lake Shore Limitedでは、9/11を連想させるような列車事故が起き、妻の生死が不明な中年の主人公Gabrielの言動が物語の中心になっている。この難解な劇をどう解釈してよいのかLeslieは苦しむ。 LeslieとBillyに加え、劇の主人公Gabrielを演じたRafe、かつてLeslieに恋心を抱いていたSamの男女4人の視点で進行する「喪失のトラウマ」や「生存者の罪悪感」などをテーマにした物語。…

信仰と温情を扱う人間洞察のミステリー Secrets of Eden

Chris Bohjalian384ページShaye Areheart Books 2010/2/2文芸小説/ミステリー(のジャンルではないが、その要素が強い) http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=0307394972 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=0307394972 「Midwives」「The Double Bind」で有名なChris Bohjalianの最新作。

The Time Traveler’s Wifeを期待すると失望するゴーストストーリィ Her Fearful Symmetry

Audrey Niffenegger416ページ (ハードカバー)Scribner 2009/9/29文芸小説/現代小説/幽霊/ラブストーリー/双子 http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=1439165394 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=1439165394 映画化もされたベストセラーThe Time Traveler's Wifeの作者 Audrey Niffeneggerの第二作は、英国のハイゲイト墓地が舞台のゴーストストーリィである。 白血病で死んだElspeth Noblinは、英国のハイゲイト墓地と地続きの建物にある広いアパートメントを米国シカゴ市に住む双子の姪JulieとValentinaに遺す。彼女たちの母親EdieとElspethはかつてひとときも離れられないほど仲が良い一卵性双生児だったが、ある出来事をきっかけに接触を絶っていた。JulieとValentinaは一卵性双生児というだけでなく、内蔵までが対称的なmirror image twinsである(ミラー・ツイン:やや後期に受精卵の分裂が発生した場合に起こると考えられており、一卵性双生児の25%で発生)。…

米国の金融リッチの内情を文学的に描く The Privileges

272ページ(ハードカバー)Random House 2010/1/5発売文芸小説/現代小説 http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=1400068673 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=1400068673 22歳という若さで結婚したアダムとシンシア・モレィ(Adam and Cynthia Morey)は、頭脳明晰で社交性もある恵まれた(Privileged)カップルだ。アダムはウォール街の投資銀行家として才能を発揮し、ファンド会社の社長からも特別扱いされて高収入を得るようになる。申し分のない生活に見えるが、25歳までに2人の子供を産んだシンシアは、だんだん閉塞感と不満を覚えるようになる。一方のアダムもこの程度の成功では満足できずに、裏で違法な取引を始め、二重生活を送る。 この危機を乗り越え、アダムは自分のファンド会社を作り、シンシアは彼が儲けた金で慈善事業を始め、Morey家は全国的に有名になった。だが、満足している父母の陰で、あまりにも恵まれた環境で育った娘のエイプリル(April)と息子のジョナス(Jonas)は人生の目標を見つけられない。 ●感想 わが家は毎年クリスマスはコネチカット州にある夫の家族を訪問します。そして最近では義弟夫婦が属している某カントリークラブでクリスマスの食事をする習慣になっています。このクラブに属すための手続きはこんな感じです。まずメンバーが候補のカップルをパーティ(仕出し店やウエイターを雇う正装パーティ)に招待し、他のメンバーに紹介します。このパーティの行いが良いと推薦文を書いてもらえます。その後自宅で同様の正装パーティをし、メンバーを招待します。ここでメンバーたちが家の様子などをチェックしてメンバーとしてふさわしいと感じたら、正式にクラブに属す招待状が来ます。大金を払ってメンバーになり、毎年の(私からすれば巨額の)会費を払っても正式メンバーになれるまでに3年間の執行猶予があります。この時期に何も問題を起こさなければ永久メンバーになれるというものです。 かつてのように夫の実家で夕食の準備の手伝いをして皿洗いをするよりずっと楽ですから良いのですが、このカントリークラブで食事をするたびに私たち一家は「ここに住まなくてラッキーだったよね」と語り合います。(その理由を知りたい方は、ぜひこの本をお読みください) この本に登場するアダムとシンシアは、まさにこのカントリークラブに属している人々なので、「The Privileges」もカントリークラブでのクリスマスの夕食ほど楽しませていただきました。ここで描かれている人々は決して誇張した作り物ではないので、日本のみなさんには、そういう意味でおすすめ本です。一生懸命モノを作ったり、育てたりしない、こういう人々がアメリカならず世界を動かしてるんですから、嫌になりますよ。…