Category: 現代文学

アーヴィングのダイハードなファンのための新作ーLast Night in Twisted River

John Irving576ページRandom House 2009/10/27発売(来週火曜日)文芸小説/現代小説 http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=1400063841 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=1400063841 The World According to Garp (ガープの世界)で有名なアーヴィングの4年ぶりの新作。 1954年、ニューハンプシャーの木材伐採作業地にあるTwisted RiverでAngel Popeと名乗る新人の若者が事故で死ぬ。それは伐採集落の料理人…

最終ページの衝撃が忘れられないラブストーリィーThe Last Time They Met

Anita Shreve352ページBack Bay Books2001年4月初版発売文芸小説/現代小説/恋愛小説(ロマンスブックではない) http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=0316781266 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=0316781266 詩人のThomas JanesとLinda Fallonはカナダでの文学カンファレンスで偶然に再会する。52歳になった現在、Lindaは愛する夫と死別し、Thomasは幼い娘を亡くす悲劇と2度の離婚を体験して孤独な生活を送っていた。これまで別々の道を歩んできたThomasとLindaは、たった2度だけの出会いを思い返す。 最初はふたりが17歳で高校生のときだった。恵まれない家庭で育った問題児のThomasに心のよりどころを与えた最初の人物がLindaだった。そして、2度目はふたりが26歳でケニヤでのことだった。Lindaは Peace Corpsに加わり、Thomasの妻Reginaはユニセフに勤めていた。 お互いにすでに愛する伴侶がいたにも関わらず、ケニアでのふたりは罪悪感に責められつつも情熱的な情事を展開する。 利己的な主人公たちの情事は通常であれば安物のメロドラマになりかねないテーマである。だが、Shreveは、理性が抵抗できない情熱と執着心、罪悪感、 愛する者がいても満たされることのない内面の孤独、それらに操られる人間の哀しさを見事に表現して、作品を芸術の粋に高めている。longingとregretがこの作品のテーマである。…

人の心の痛みの間違った治療法ーRemedies

Kate Ledger384 ページPutnam 2009年8月20日発売文芸小説/現代文学 http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=0399155899 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=0399155899 ワシントンDC地区に住むSimon Bearは疼痛専門医でその妻のEmilyは大手PR会社(アメリカではPRはテレビコマーシャルではなく、広報を意味する)の重役をつとめており、いわゆる「成功者」である。豪華な邸宅に住み、Simonはその邸宅に直結した美しいクリニックで治療する有名医である。 Simonのクリニックを訪れるのは他の医療機関では満足を覚えなかった、あるいは治療を断られた重傷あるいは慢性の疼痛患者である。Simonは疼痛患者を治療し、Emilyは情報をスピンすることでスキャンダルを起こした有名人や会社を救うことに長けている。どちらもRemediesのプロである。だが、どちらも自分たちの関係に深い傷を残している「長男の死」という体験に対して正しいRemediesを見つけられず、どんどん傷を深める。 疼痛のために暗い生活を送る患者に解決策を与える自分の能力と勇気にSimonは誇りを抱いているが、彼が新たに雇用した新人看護師は、Simonの治療法に強く反論する。看護師の疑問に耳を傾けず頑に自分の正当性を押し通すSimonだが、両親を訪問した先で偶然発見した新薬の試験をきっかけに深刻な問題に巻き込まれる。 妻のEmilyは昔の恋人に再会して夫や娘との関係にさらに強い疑問と不満を抱くようになり、そこからの脱出を夢見る。一人娘のJamieもまた、両親に内緒で自分の心の痛みから逃れようとしていた。 ●ここが魅力!タイトルにも書いたように、熟練した文章力と人物描写がRemedies最大の魅力です。とくに主人公の医師とその妻が実存する人物のように見事に描かれています。どちらも自己愛が強く、自己中心的で、読者は不愉快な気分を覚えるかもしれませんが、彼らの(自己正当化の)視点から描きつつも読者に不快感をじわじわ抱かせるところがLedgerの手腕なのです。新人でこれを完璧に実現したLedgerには脱帽しました。unlikable characterですがそれを描ききっているために傑作、という意味でアップダイクのRabbitをちょっと思い出しました。 疼痛治療に関しては東西(米国と日本)とではアプローチの方法が非常に異なります。米国では(発熱もそうですが)すぐに疼痛解熱剤を与えるように指示が出ますが、日本ではウィルスを殺す役割を果たす熱をすぐには下げません。疼痛でもこちらではちょっとした手術で麻薬性鎮痛剤をすぐに処方しますが、日本ではこのように依存性が高い薬剤はめったに使いません。SimonとEmily夫婦の関係も疼痛治療のように東西差がはっきり出ていて、日本人の方には別の意味で興味深く読めるかもしれません。 ひとつだけ難を言わせていただくならば結末。でもその理由はここでは内緒。読んだ方とは意見を交換してみたいです。…

ニューヨーク市を描いた文学賞の予感がする新刊-Let the Great World Spin

Colum McCann Random House 2009年6月23日(明日)発売 ! 368ページ 文芸小説/現代文学/ニューヨーク

ゲイ中年男性のあがきと社会風刺が可笑しい-Alternatives to Sex

muse & marketplace特集第8回でご紹介するのは、ボランティア講師のStephen McCauleyです。 アメリカでは、文芸評論家も重視するのが人物造型(Character development)です。人物描写ではなく、それ以前に登場人物そのものをまるで生きている人のようにちゃんと作り上げることがCharacter developmentで、それを描写するのはまた別のテクということになります。人物造型と人物描写のどちらにも卓越していて、それだけでも本1冊楽しめるのが、Stephen McCauleyの作品です。ジェニファー・アニストン主演の映画The Object of My Affection(邦題「私の愛の対象」)をご存知の方はいらっしゃると思いますが、その原作を書いたのがMcCauleyです。ゲイの男性と同居している妊娠中の女性が、親友だった彼に恋してしまうという切なくて可笑しいこのコメディはアメリカではベストセラーになった作品です。てっきり邦訳されていると思い込んでいたら、「ところが私の作品は日本語には訳されていないのよ。手伝ってくれなくっちゃ!」とチャーミングにせがまれて、びっくり。McCauleyの作品は日本人が楽しめそうなものばかりなので、邦訳されていないのは、本当に不思議です。 Alternatives to Sex…

自費出版からニューヨークタイムズ紙ベストセラー作家へ-Still Alice

muse & marketplace特集第6回でご紹介するのは、今回講師(この会に参加する作家はすべてボランティア)として参加したLisa GenovaのStill Alice(以前にも書いたのですが、あらためて)です。 去年のmuseでパネリストとして参加した私の夫に、パネル終了後に話しかけてきたのがLisaでした。 そのときのことを思い出したのか、再会するなりLisaは「あなたのご主人はとても寛大な人」と褒め称えました。 当時自費出版の作家に過ぎなかったLisaの相談にのり、気前よくアドバイスを与え、その後彼の最新作World Wide Raveで彼女の成功談を載せたことを言っているのでしょう。 World Wide Raveにも載っているLisaのエピソードは作家志望者に希望を与えるものです。Lisa は大学で生体心理学(bio psychology)を学び、ハーバード大学で神経科学(…

2人の母の喪失と贖罪を描く心理サスペンス-Life Without Summer

Lynne Griffin2009年4月心理サスペンス/現代小説 muse & marketplace特集第3回でご紹介するのは、元看護師でカウンセラーも勤めた医療と心理の専門家Lynne Griffinです。テレビのコメンテーターをするだけあって、スピーチも慣れたものです。明るくて、元気一杯、という印象でした。作者のサイトはこちら。 http://rcm.amazon.com/e/cm?t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&asins=0312383886&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&fc1=000000&IS1=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=0312383886&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS1=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 (あらすじ)ジャーナリストのTessaは4歳の娘Abbyをひき逃げで失う。深い鬱に陥っているTessaは医師にすすめられて心理カウンセリングを受け始める。礼儀を重んじる堅苦しいカウンセラーのCeliaに反感を覚えながらも、Tessaは逃げた犯人への憎しみや、娘を失った後ですぐに復職できた夫への不満などの鬱憤をぶつける。すべてが完璧そうなCeliaだが、実は彼女自身が家庭に問題を抱えていた。アルコール依存症の夫と離婚して大学教授と再婚したが、彼と15歳の息子の関係は敵意に満ちている。Tessaが犯人さがしに執着しはじめる一方で、Celiaの息子は高校で問題行動を起こし始め、離婚した前夫の元に去ってしまう。TessaとCeliaという2人のまったく性格が異なる母親が、ある事件をきっかけに繋がり、それぞれに喪失と贖罪を体験するドラマチックな心理サスペンス。心理と倫理観を取り扱っているためJodi Picoultを連想させるデビュー作。 ●ここが魅力!個人的には、まず元看護師(私もそうです)でカウンセラーをしていた子育て専門家というところに惹かれます。登場人物の設定も実体験から生み出されたためにリアルで、欠陥があるけれども同情せずにはいられなくなります。特に私が評価するのは、子供を失った後の夫婦の心理的危機をよく描いていることです。人によって悲嘆への対処方法は異なり、ある人はTessaのように過去にしがみついて鬱に陥りますが、ある人は過去を忘れたくて仕事に没頭しようとします。死者の持ち物を捨てられない者と捨てることで悲しみを薄らげようとする者、どちらも深い悲しみに傷つけられているのですが、互いに自分とは異なる反応を示す伴侶を「許せない」と感じるのです。ですから、子供を失った夫婦が離婚するのは決してめずらしいことではありません。そういったことや、日記を使ったセラピーなどをごく自然にストーリーに取り込んでいることがこの本の魅力です。わが子を失う、というストーリーは母親として読みづらいところはありますし、先が読めてしまう(私はそうでしたが、他の人はそうでもないようです)ところがありますが、デビュー作とは思えない熟練さを感じる作品です。 ●読みやすさ ★★★☆☆2人の日記の形をとっているので、入り込みやすく、読みやすいでしょう。 ●アダルト度 ★★★☆☆性的シーンは1箇所だけありますが、それほどあからさまな描写ではなく、中学生からOKでしょう。

芸術としての文学を楽しむ作品-The Sky Below

Stacy D’Erasmo2009年1月純文学/現代文学 muse & market place特集の第一弾は、ボランティア講師を勤めた作家のひとりStacy D’Erasmo です。D’ErasmoはこれまでにTeaと A Seahorse Yearという文芸作品を2冊上梓しており、The Sky Belowは第三作目です。現在コロンビア大学の助教授として創作を教えています(D’Erasmoのサイト)。都会人らしいシャープで辛らつなウィットに富み、頭の回転が速い(写真よりもずっと)魅力的な女性です。主人公に好感を求める最近の文学シーンに相当反感を抱いている感があります。 http://rcm.amazon.com/e/cm?t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&asins=0618439250&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&fc1=000000&IS1=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=0618439250&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS1=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1…