Month: April 2009
Battle of the (Kids’) Books 準決勝第二マッチ
引き続きバトルの中間報告です。ここから入った方はこちらを。バトルのサイトはこちら。審判は邦訳もされているホエール・トークなどスポーツ、人種差別、児童虐待を扱う青春小説の第一人者Chris Crutcherです。 いよいよ決勝に勝ち残る最後の本が決まる準決勝第二マッチです。それぞれの本についてはThe Hunger Gamesの第一ラウンド、第二ラウンドの取り組みと、The Lincolnsの第一ラウンド、第二ラウンドの取り組みを参考にしてください。 ジャンルが異なるから正確に比較できないことを英語で"comparing apples and oranges"とか "apples to oranges"といいます。でも、審判のCrutcherはりんごとオレンジは少なくともフルーツだ、とファンタジーと歴史ノンフィクションの比較の難しさをぼやいています。 これまでの審判誰もが認めるように、The Lincolnsはすべての子供に読ませたい、読ませるべき本という感じです。ふだんファンタジーを読まないCrutcherにとってThe…
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個人ドキュメントをワイヤレスでKindleに送る費用が値上げに
米Amazonが個人のドキュメントをワイヤレスでKindleに送る費用を、これまでの1ドキュメントにつき10セントから、1メガバイト(小数点以下は切捨て)につき15セントに値上げすることを発表しました。値上げは5月4日から。 これまでのファイルタイプ(DOC, HTML, JPEG, GIF, PNG, BMP, TXT, AZW, MOBI, PRC)に加え、RTFも利用可能になります。PDF, DOCXファイルも送れますが、まだ実験的であり、これらが複雑な場合、フォーマットが正確に表示されない可能性があるとのことです。 Amazon.comのブログ。
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オバマ大統領はホワイトハウスのオプラか
アメリカでは、オプラのブッククラブに指定されるとどんな本でも爆発的に売れる、という現象が定着しています。 最近の意識調査で国民の8割以上が「好感が持てる」と答えたオバマ大統領が読む本も(Doris Kearns Goodwinによるリンカーン大統領の伝記 The Team of rivalsなど)爆発的に売れるようなのです。 最近オバマ大統領が読んでいるのがこの小説だということです。ベストセラー対決でオプラと大統領とどちらが勝つか試してみたいところです。 http://rcm.amazon.com/e/cm?t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&asins=0307377040&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&fc1=000000&IS1=1<1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=0007275706&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS1=1<1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1
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素朴なイタリア人たちの切なくてほろ苦いラブストーリー-A Kiss from Maddalena
Christopher Catellani2003年4月文芸小説/歴史(第二次世界大戦中のイタリア) muse & marketplace特集第4回でご紹介するのは、主催の非営利団体Grub Streetの長年のスタッフ兼教師で、この企画の顔であるChristopher Catellaniです。(詳しくはCatellaniのサイトをどうぞ)。 昨年のmuse & marketplaceで人前であまり話さないことで知られるジョナサン・フランゼンがキーノート講演をしてくれたのはCatellaniのおかげなのです(その話はこちらを)。今年も総合的なディレクターとして忙しく飛び回っていました。私とは過去10年間に2、3度会った程度の知り合いなのに、初日に顔を見かけると満面の笑みで「よく来てくれましたね!ハグさせて」と歓迎してくれるところがさすが対人関係の天才だと思いました。Catellaniのチャーミングであたたかな性格は彼の作品にも反映しています。 本作品を「翻訳権がまだ売れていないすばらしい本」のリストに加えました(5/1/09)。 http://rcm.amazon.com/e/cm?t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&asins=B001KZHGEW&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&fc1=000000&IS1=1<1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=0752864130&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS1=1<1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 (あらすじ)舞台は第二次世界大戦中のイタリアの小さな農村Santa Cecilia。17歳のVitoの父親は彼の姉2人だけを連れてアメリカに移住してしまい、最近は仕送りも途絶えている。痴呆が進む母親の面倒を看る思いやりある青年だが、同年齢の青年に比べると身体の成長も遅く振舞いも子供っぽい。徴兵で村にはほとんど適齢期の青年がいなくなってしまったのに、少女たちは道化者のVitoのことを恋愛対象とはみなしていない。村人たちも彼を「いい奴だけれど役立たず」と軽くみなしている。そのVitoが恋したのは、村で最も美しい少女Maddalenaだった。努力を重ねて奇跡のようにMaddalenaの愛を勝ち取ったものの、イタリアが連合軍に寝返り、敵となったドイツ軍の撤退のルートにあるSanta…
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2人の母の喪失と贖罪を描く心理サスペンス-Life Without Summer
Lynne Griffin2009年4月心理サスペンス/現代小説 muse & marketplace特集第3回でご紹介するのは、元看護師でカウンセラーも勤めた医療と心理の専門家Lynne Griffinです。テレビのコメンテーターをするだけあって、スピーチも慣れたものです。明るくて、元気一杯、という印象でした。作者のサイトはこちら。 http://rcm.amazon.com/e/cm?t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&asins=0312383886&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&fc1=000000&IS1=1<1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=0312383886&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS1=1<1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 (あらすじ)ジャーナリストのTessaは4歳の娘Abbyをひき逃げで失う。深い鬱に陥っているTessaは医師にすすめられて心理カウンセリングを受け始める。礼儀を重んじる堅苦しいカウンセラーのCeliaに反感を覚えながらも、Tessaは逃げた犯人への憎しみや、娘を失った後ですぐに復職できた夫への不満などの鬱憤をぶつける。すべてが完璧そうなCeliaだが、実は彼女自身が家庭に問題を抱えていた。アルコール依存症の夫と離婚して大学教授と再婚したが、彼と15歳の息子の関係は敵意に満ちている。Tessaが犯人さがしに執着しはじめる一方で、Celiaの息子は高校で問題行動を起こし始め、離婚した前夫の元に去ってしまう。TessaとCeliaという2人のまったく性格が異なる母親が、ある事件をきっかけに繋がり、それぞれに喪失と贖罪を体験するドラマチックな心理サスペンス。心理と倫理観を取り扱っているためJodi Picoultを連想させるデビュー作。 ●ここが魅力!個人的には、まず元看護師(私もそうです)でカウンセラーをしていた子育て専門家というところに惹かれます。登場人物の設定も実体験から生み出されたためにリアルで、欠陥があるけれども同情せずにはいられなくなります。特に私が評価するのは、子供を失った後の夫婦の心理的危機をよく描いていることです。人によって悲嘆への対処方法は異なり、ある人はTessaのように過去にしがみついて鬱に陥りますが、ある人は過去を忘れたくて仕事に没頭しようとします。死者の持ち物を捨てられない者と捨てることで悲しみを薄らげようとする者、どちらも深い悲しみに傷つけられているのですが、互いに自分とは異なる反応を示す伴侶を「許せない」と感じるのです。ですから、子供を失った夫婦が離婚するのは決してめずらしいことではありません。そういったことや、日記を使ったセラピーなどをごく自然にストーリーに取り込んでいることがこの本の魅力です。わが子を失う、というストーリーは母親として読みづらいところはありますし、先が読めてしまう(私はそうでしたが、他の人はそうでもないようです)ところがありますが、デビュー作とは思えない熟練さを感じる作品です。 ●読みやすさ ★★★☆☆2人の日記の形をとっているので、入り込みやすく、読みやすいでしょう。 ●アダルト度 ★★★☆☆性的シーンは1箇所だけありますが、それほどあからさまな描写ではなく、中学生からOKでしょう。
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米アマゾンiPhone e-bookアプリStanzaのLexcycleを買収
米アマゾンは、27日にiPhone の無料電子書籍リーダーアプリケーションStanzaを製作・配布しているLexcycleを買収しました。アマゾンのKindleのe-bookフォーマットは独自のもので、Stanzaは国際デジタル出版フォーラム(IDPF: International Digital Publishing Forum)が開発し、一般的に将来のe-bookの基準とみなされている e-pub formatをサポートしています。現時点のe-book分野ではKindleの人気が圧倒的ですが、アマゾンはiPhoneが電子書籍リーダーとしてKindleを圧倒することを憂慮しており、最近iPhone/iTouch用のKindleアプリを発表したばかりでした。(4月27日午後4時。Publishers Weeklyより) (写真の左がKindle for iPhoneで右がStanza) スティーブン・キングがKindleのみで購読可能な小説URで言及しているように、Kindleは白黒でカラーはありません。iPhoneの画面はKindleよりHDでクリアであり、そこにカラーが将来加わり、アップルストアでの購買が可能になってくるとするとKindleの最大の競合になることは容易に予想できます。Kindleでもフルカラーのe-inkのスクリーンが数年後には開発されるのではないかと見られています。
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Battle of the (Kids’) Books 準決勝第一マッチ
引き続きバトルの中間報告です。ここから入った方はこちらを。バトルのサイトはこちら。 審判は、日本軍占領下の韓国での幼い兄妹の生活を描いた児童書「When My Name Was Keoko」の作者Linda Sue Parkです。 今日の取り組みはなかなか良い組み合わせです。歴史小説、米国の独立戦争時、黒人が主人公、語りが第一人称と共通点が沢山あります。ParkはThe Astonishing Life of Octavian Nothingの第一巻The Pox…
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Clementineでおなじみの児童書作家Sara Pennypacker
muse & marketplace特集第2回は児童書作家の大御所Sara Pennypackerです(作家のサイト)。 作品と本人のイメージのギャップに驚くことがありますが、Pennypacker の場合はまったく予想を裏切らない気さくで暖かい雰囲気の女性でした。 邦訳もされている人気のClementineシリーズは、「ADHD(注意欠陥・多動性障害)かな」と思わせる小学校3年生の少女Clementineが主人公です。ADHDの子が集中できないひとつの理由は、五感を通じて入ってくる多くの情報の受け止め方が他人とは異なるからです。思考が高速で広範囲に広がるために言葉に出したときには相手に伝わらないという困った現象も大人からは理解されない悲しいところです(私もそんな体験はあります)。意図していないのにトラブルに巻き込まれてしまう子供たちをちゃんと理解しているだけでなく、その子の観点で生き生きと楽しく描いているのがこのシリーズの素敵なところ。Clementineは米国版の窓際のトットちゃん(ちょっと古いですね)みたいです。 Pennypackerの最新作の絵本Sparrow Girlは、社会的なメッセージを持つちょっと深刻な作品です。1958年に毛沢東が雀を抹殺する命を出し、その結果害虫が猛威をふるい中国は大飢饉に襲われることになりました。そのさなか雀を守ろうとした少女が主人公のお話しです。Pennypackerは私に「この歴史を知る人は少ない。歴史を伝え、自然を破壊することの影響を子供たちにも知らせるべきだと強く感じた」と創作の理由を語ってくれました。 この作品の素晴らしいところは、文章だけでなくイラストが優れていることです。 Pennypackerが「彼女はきっとこの世界で大物になるでしょう」と絶賛するイラストレーターは日本人のYoko Tanakaさんです。中国の話に日本人の素敵なイラストレーターを採用してくださったのは嬉しいことです。 Clementineシリーズ 読みやすさは絵本よりもちょっと上のレベルで、対象は小学校の低学年です。 Sparrow…