September 2013

ゴーストストーリーが混じったノスタルジックなキングのミステリ『Joyland』

著者:Stephen King

ペーパーバック: 288ページ

出版社: Hard Case Crime

ISBN-10: 1781162646

発売日: 2013/6/4

適正年齢:PG15(高校生以上)、描写は露骨ではないが性的コンテンツあり

難易度:上級レベル(英語ネイティブの普通レベル)

ジャンル:ミステリ/ホラー

キーワード:青春物語、ロマンス、涙ぐむ、スリルがある、ノスタルジック

 


 

初老の男Devin Jonesは、ノースカロライナで過ごした21歳の夏を振り返る。ニューハンプシャー大学の学生だったDevには相思相愛のガールフレンドがいたが、彼女の提案で大学の夏休みを別々の場所で過ごすことになる。ノースカロライナにある遊園地(カーニバル)の「Joyland」で職を得たDevは、面接した占い師からガールフレンドが彼の過去の存在であり、未来に2人の子どもに会うと告げられる。ひとりは赤い帽子をかぶった少女で、もうひとりは犬を連れた少年だという。そして、ひとりは救えるが、もうひとりは救うことができないと。

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ユダヤ教伝説とアラビア神話が19世紀末のニューヨークで出会う幻想的なラブストーリー『The Golem and the Jinni』

著者:Helene Wecker

ハードカバー: 496ページ

出版社: Harper

ISBN-10: 0062110837

発売日: 2013/4/23

適正年齢:PG15(高校生以上)、描写は露骨ではないが性的コンテンツあり

難易度:上級レベル(英語ネイティブの普通レベル)

ジャンル:現代文学/歴史小説/ファンタジー

キーワード:伝説(アラブ、ユダヤ)、ラブストーリー、宗教、スピリチュリティ

 


移民たちが世界から押し寄せて来る混乱の19世紀末のニューヨーク市で、一組の男女が偶然に出会う。彼らは、互いに相手の異様さを察知し、興味を抱く。ポーランドから来た女Chava(ハバ)はユダヤ教の呪術師が作ったGolem(ゴーレム)で、Ahmed(アーメッド)は1000年前にシリアで魔術師に捉えられたJinni(ジーニー)だった。

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現代日本の陰と陽を描いた豊潤で感動的な小説『A Tale for the Time Being』

著者:Ruth Ozeki

ペーパーバック: 432ページ(英国版)

出版社: Canongate Books Ltd

ISBN-10: 0857867970

発売日: 2013/3/11

適正年齢:PG15(アダルト)高校生売春、性的なイジメのシーンあり。その他は特に露骨な描写はない。

難易度:上級レベル(英語ネイティブの普通レベルだが、日本人なら中級レベルでも理解しやすいだろう)

ジャンル:現代文学/マジックリアリズム(魔術的リアリズム)

キーワード:ポップカルチャー(日本文化)/いじめ/第二次世界大戦(特攻隊)

賞:2013年ブッカー賞候補作(9月現在)

2013年これを読まずして年は越せないで賞候補

 


カナダ ブリティッシュ・コロンビアのさびれた沿岸に住む作家のRuth(著者本人)は、ビーチに打ち上げられていた大きなゴミを捨てるために持ち帰る。だが、中からは出てきたのは腐った食品ではなく、プルーストの『À la recherche du temps perdu(失われた時を求めて)』と手紙などだった。さらに驚いたことには、プルーストの中身はフランス語の原書ではなく、日本語で書かれた日記だった。日系人のRuthは、自分が読めるペースですこしずつこの日記を読んでゆくことにする。

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ミステリ好きの小中学生にピッタリの新シリーズ『Mister Max: The Book of Lost Things』

著者:Cynthia Voigt

ハードカバー: 400ページ

出版社: Knopf Books for Young Readers (2013/9/10)

ISBN-10: 0307976815

発売日: 2013/9/10

難易度:中級レベル(高校英語をマスターしたレベル)/表現はやや難しめ

適正年齢:PG10(小学校高学年から中学生向け)

ジャンル:児童文学/ミステリ

キーワード:探偵/冒険/ユーモア


 

20世紀初頭のイギリス(と思われる架空の町)が舞台。

12歳のMaximilian Sterlingは、小さな劇場を経営している俳優夫婦のひとり息子である。家庭でもドラマチックな演技を忘れない両親に育てられ、必要なときには子役や端役をやらされてきたMaximilianは、たいていのことでは驚かなくなっていた。

だが、両親が自分を残してインドに旅立ってしまったのは、さすがにショックだった。

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「がん」との闘いの歴史がこの1冊で分かる、『The Emperor of All Maladies』

著者:Sidhartha Mukherjee

ペーパーバック: 608ページ

出版社: Scribner

ISBN-10: 1439170916

オリジナル発売日:2010年11月

難易度:中級レベル(高校英語をマスターしたレベル)

適正年齢:PG15(高校生以上)

ジャンル:ノンフィクション

キーワード:医療(がん)、歴史

賞:ピューリッツアー賞、全米批評家協会賞(National Book Critics Circle Awards)最終候補など多数

 



日本でも「がん」について書かれた書物は沢山あるが、アメリカの医学専門書を翻訳した経験がある私からみると、あまりにも偏った情報、情報不足が目立つ。

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混沌とした展開がリアリスティックな世紀末小説『MaddAddam』三部作ついに完結

私にとってマーガレット・アトウッドは、本当に複雑な作家です。

登場人物には感情移入させてもらえないし、読後に「どよよ〜ん」とすることが分かっている。それなのに、なぜか新しい本が出るたびに手に取ってしまい、「これから、悪いことが起きるぞ〜。どんどん悪くなるぞ〜」と思いつつも途中でやめられず、最後まで読んでしまう。そして、ふたたび何日も「どよよ〜ん」としてしまうのであります。

その究極の作品が、10年かけて完結した三部作の『MaddAddam Trilogy』かもしれません。

混沌としたこの三部作を説明するのはとても面倒なのですが、アトウッドがノーベル文学賞を受賞することを期待している私としては、この大作を無視するわけにはゆきません。ちょっと努力してみることにしました。

慣れていない人には理解しにくいと思いますので、少々ネタバレいたします。

 

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