Category: ★★★★(英語ネイティブの普通レベル)

ある中流階級の家族を通じて自由の国アメリカ合衆国の現代を描いた大作 Freedom

Jonathan Franzen 576ページ(ハードカバー) Farrar Straus & Giroux 2010/8/31刊行 ●筋書きをあまり知りたくない方への短いバージョン Patty, Walter, Richardの3人は、大学時代に知り合う。バスケットボールの花形選手で競争心が強いのに自己評価が低いPatty、Pattyに惚れ込む善良なWalter、Walterの善良さを愛する親友のくせに彼が好きになった女の子に手を出しては捨てるロックミュージシャンのRichard。愛情と競争心で繋がる3人の複雑な関係は、PattyとWalterが結婚した後もくすぶり続けている。

超なさけなくて悲しい近未来ディストピアの恋- Super Sad True Love Story

Gary Shteyngart 352ページ(ハードカバー) Random House 2010/7/27発売 文芸小説/SF/風刺 近未来のアメリカでは、電柱のようなCredit Poleの横を通るとその人の貯蓄を含めた経済情報が公示される超情報社会になっている。個人情報の全てがランキング化され、iPhoneのようなäppärätというデバイスでスキャンすると誰の情報もすぐ分かる。 万人が軽薄になっている米国での重要な情報は、経済力、性的魅力、そして若さ、である。それらの数字はたとえば800点満点評価で、Personality 746, Fuckability 800といった具合でäppärätに現れる。人々は互いをランキングのみで評価するようになっている。

たぶん児童書と呼ぶべきではない複雑で深いファンタジー The Lost Conspiracy

Frances Hardinge 576ページ HarperCollins 2009年9月1日発売 YAファンタジー/(小学校高学年〜高校生 Battle of Kids Booksの中継でご紹介した作品のひとつ。   通常であればネタバレを避けるためや自分で発見する喜びを損なわないためにあらすじは最小限にしてますが、この本は非常に良い本であるにもかかわらず、「入り込みにくい」という欠陥があるため、通常よりも詳しく背景を紹介します。ネタバレがありますので、それを避けたい方はあらすじの一部をスキップしてください。 ******************************************************************** Gullstruck Islandでは、異なる風習を持つ多様な民族が共存してきた。どんなときにも笑顔を消さないLace民族はかつて異民族間の争いの仲介役として尊重されていた。200年ほど前にCavalcasteという民族が新たに島に移り住んだとき、Lace族は彼らに火山の麓に住んではならないと警告した。それは火山の怒りを買うからである。だが、よく肥えた土地に魅了されたCavalcasteたちはLaceの警告を無視してそこに住み着いた。その後Cavalcasteが一人一人消えてゆくという事件が起こり、Laceが火山の怒りを沈めるために彼らを誘拐して生け贄にしていたことが判明した。これを裏切りとみなしたCavalcasteはLaceを大量に殺害し、Laceはそれ以来島で最も迫害され軽蔑される民族となる。…

ちょっぴりロマンチックでディテールが面白い歴史ミステリー The Devlin Diary

448ページ(ハードカバー)Pocket 2009/5/12歴史小説/ミステリー http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=1416527397 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=1416527397 アメリカ人歴史学者のClare Donovanと英国ケンブリッジ大学の研究員Andrew Kentが主人公のThe Rossetti Letterの続編。続編だが、前編を読んでいなくても単独の歴史小説として読むことができる。 Clareは、The Rossetti Letterで17世紀のベネチアの謎を一緒に解いたAndrewの計らいでケンブリッジ大学のトリニティカレッジで臨時講師を務めることになった。Andrewとの仲が発展することを期待していたClareだが、大学に到着してみるとAndrewから徹底的に無視され、恋敵の親友からは研究が不可能になるほどの雑務を与えられる。アメリカ人として英国人の同僚から冷たくされているClareにハンサムなDerek Goodman教授が優しくしてくるが、それはClareがWren Libraryでみつけて研究のテーマにしようとした古い日記と研究を盗むためだった。 Clareが図書館で見つけたDiaryは暗号のような速記で書かれた17世紀の女性医師Hannah…

16世紀のオックスフォード大学を舞台にしたインテリジェントなミステリー Heresy

S. J. Parris448ページ(ハードカバー)Doubleday 2010/2/23発売ミステリー/スリラー/歴史小説/宗教 http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=0385531281 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=0385531281 1576年、イタリアの修道院の青年僧Giordano Brunoは知的好奇心のためにカトリック教会が禁じている本を読みあさり、「異教(heresy)」を信仰する者として処刑されそうになる。危機を逃れて逃亡者になったBrunoは、類い稀な頭脳とカリスマ性で逃亡者でありながらフランス国王に哲学者として寵愛されるまでになる。だがそこでも危険を感じるようになったBrunoは、カトリックと敵対関係にある英国に居場所を見つけようと考える。 当時の英国では、イタリアとは逆にエリザベス1世を首長とする英国国教会がカトリックを「異教」みなし、残酷な弾圧を繰り広げていた。Brunoは、エリザベス女王のスパイマスターとして知られる国務長官Walsingham卿の依頼でカトリック教徒の動向を探るスパイとしてオックスフォード大学に送り込まれる。オックスフォードで学者としての地位を得ることを望むBrunoはWalsingham卿の甥で友人のPhilip Siney卿に伴い客人としてオックスフォード大学を訪問するが、学者たちからの徹底的な敵意に遭遇する。Brunoが体験したのは敵意だけではなかった。ある書物に書かれた異教徒への処刑の方法で、教官と学生が次々と殺害されていったのだ。彼はスパイでありながらRector(ここでは総長の意味)のUnderhillに協力して犯人探しをすることになり、危険に巻き込まれて行く。 ●ここが魅力! まず1583年のオックスフォード大学が舞台というのが私にとっては魅力でした。英国ではヘンリー8世がキャサリン・オブ・アラゴンと離婚してアン・ブーリンとの結婚を計ったときにローマ教皇に拒絶され、それがきっかけとなって国王を首長とする英国国教会が作られました。 ヘンリー8世とその後継者エドワード6世の死後、カトリック教徒のメアリー1世がカトリックを復帰させるために残忍な弾圧を行い「Bloody Mary」と呼ばれましたが、彼女の死後エリザベス1世がふたたび英国国教会を復帰させます。 この時代は、欧州(とくにイタリア)ではカトリック以外の異教徒に対する残虐な弾圧が繰り広げられ、英国ではカトリックへの同様の残酷きわまる処刑が行われていました。異教徒の判決を受けた者は、まず絞首され、蘇生されてから生きたままにして内蔵をえぐられるという残酷な刑です。それでも隠れてカトリック教を信仰し続けた信者は多く、オックスフォードはその信者が多かった場所のようです。…

2008年大統領選挙舞台裏ドラマのダイジェスト版 Game Change

副題:Obama and the Clintons, McCain and Palin, and the Race of a Lifetime John Heilemann、…

英国ジョージア王朝時代に花火作りを夢見た少女 The Book of Fires

Jane Borodale368ページ(ハードカバー)Viking  2010/1/21文芸小説/歴史小説(英国、ジョージア王朝時代) http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=0670021067 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=0670021067 ジョージア王朝時代の英国では、労働者階級は慢性的な飢えと闘っていた。その典型の農村に暮らす17才の少女Agnes Trusselは、村の乱暴な若者に妊娠させられてしまうが、彼と結婚したくはない。けれども未婚の母になると汚名は家族にも及ぶ。悩んでも解決策が見つからないAgnesは、急死した隣人の老女の金貨を盗んでロンドンに逃げる。 Agnesは旅の途中で身なりの美しい親切な若い女性Lettice Talbotと出会う。LetticeはAgnesの秘密を察知して仕事を世話すると申し出るが、Agnesはその住所を失ってしまう。行く場所もなくさまよっていたAgnesは偶然の成り行きで花火を制作するJohn Blacklockの元で見習いとして働くことになる。厳格で気分屋のBlacklockだが、Agnesの手先の器用さと感の良さ、熱意にほだされてゆく。せっかく見つけた夢の職だが、妊娠がばれると追い出されるに決まっている。Agnesは嘘に嘘を重ねて秘密を守るが、妊娠が進むにつれ隠しておけなくなる。材料を売る出入りの青年Cornelius Soulが自分に好意を抱いていることを察知したAgnesは、妊娠が明らかになる前に彼に結婚を申し込ませる計画を立てるが…. ●感想 ジョージア王朝時代の労働者階級の女性は、結婚すると頻繁な妊娠で死の危険に晒され、生き延びても子供と家族の世話で心身ともに疲弊するしかありませんでした。また、たとえ上流階級出身でも、未婚で妊娠したために家族から見放されて娼婦になるしかなかった女性もいました。不運なのは女性だけではありません。飢餓に負けて食べ物を盗んだだけで絞首刑になるほど厳しい法のもとでは、人々は生き延びるために嘘をつかなければならなかったのです。The Book of…

良い意味でも悪い意味でもフレンチな現代小説 The Discreet Pleasures of Rejection

Martin Page (英語翻訳:Bruce Benderson)192ページ(ペーパーバック)Penguin2010/1/26発売文芸小説(原作:フランス語)/現代小説 http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=0143116525 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=0143116525 How I Became Stupid の作者Martin Pageの最新作。 パリに住む31歳の独身男性Virgilが仕事を終えて帰宅すると、留守電にあるメッセージが残されていた。それはガールフレンドのClaraが一方的に別れを告げるものだった。だが問題は、VirgilにはそのClaraにまったく心当たりがないことだ。どう努力しても彼女とつき合ったことが思い出せないVirgilは混乱してかかりつけの精神科医を訪問する。Claraが間違えて電話したのではないことは確かだ。彼女はVirgilの名を呼んだし、彼の元ガールフレンドで友人のFaustineも彼らが別れたという話を聞いて友人たちに言いふらしていたからだ。思い出せないVirgilは脳が侵されていて死ぬのだと思い込み、金に糸目をつけず夕食とワインのデリバリーを頼み、自己憐憫に浸る。だが、CATスキャンの結果、疾病がないことがわかり、Claraの謎はさらに深まる。 ●感想 記憶に無いガールフレンドからの別れの告白に現実世界がガラガラと音を立てて崩れて行く、というのは心惹かれる設定です。また、記憶がないときに真っ先に駆けつけるのが精神科医だったり、脳の病で死ぬと思い込んでからの最初の行為が金に糸目をつけずに高い夕食を注文するところがいかにもフランス人で笑いました。自己憐憫に陥り、死ぬ前にちゃんと後始末をしておこうとして電話、電気、アパートを解約してしまう神経症的なところもそうです。これ以外にもこの本は「フランス人だなあ」と思う部分が沢山あります。広告代理店勤務のVirgilが欺瞞を職業として高給取りだということについて友人たちが揶揄しているというのは、日本人や米国人にはちょっと想像できないシチュエーションですが、これもフランス的(パリ的)価値観というものなのでしょう。…