Category: 本と出版に関する裏ばなし・雑談

私が差し上げたいノーベル文学賞残念賞ーMargaret Atwood

実は私、Margaret Atwood(マーガレット・アトウッド)が2009年のノーベル文学賞を受賞するとけっこう本気で信じていました。ギャンブラーだったらオンラインカジノで賭けてたかも…。「そろそろ北米と女性の番」だというのが単純な理由です。ノーベル文学賞の選考委員たちは米国の文学シーンが嫌いだけれどカナダなら許せるだろうと。その基準を満たしている作家の中では政治的メッセージの強い作品を書き続けているアトウッドが一番近いのではないかと思ったのです。実際に多くの評論家が強力な「穴馬」とみなしていました。 そういう見方だけでなく、Margaret Atwoodは、コンスタントに生み出す作品が文学賞候補になり、しかもベストセラーになる人気作家です。ブンガクなのに売れるというところが村上春樹に似た存在ですね。もうじき70歳という年齢ながらTwitterを軽くこなしてしまう好奇心と実行力も私の尊敬するところです。(写真はLos Angeles Timesの記事より) The Year of the Floodが出版された2009年は、アトウッドにとってはノーベル文学賞だけでなくカナダで最も権威ある文学賞のGiller Prize(ギラー賞)受賞の当たり年とみなされていましたが、Giller Prizeで最終候補に漏れ、数日後にノーベル文学賞も逃してしまいました。 せっかく私の中でノーベル文学賞が盛り上がっていたので、勝手ながらアトウッドの残念賞特集といたします。 初日の今日はまずAtwoodの代表作のご紹介です。後ほど、1冊ずつご紹介しますね(読んでないCat’s…

ロマン・ポランスキー赦免の嘆願書に署名した作家とアーティストたち

32年前、44歳のときに13歳の少女をレイプした罪でロサンジェルスで逮捕され、服役前にフランスに逃亡した著名な映画監督Roman Polanski(ロマン・ポランスキー)のことをご存知の方は多いと思います。これまで逮捕の可能性がある国の訪問を避けて来たポランスキーですが、先月29日にスイスのチューリッヒ空港に到着したときにスイス警察に逮捕されました。 ナチスドイツの迫害をいき伸び、妊娠中の妻シャロン・テートを殺害されたポランスキーの精神的なダメージとはどんなものなのか想像もできません。また、当時13歳だった犠牲者のSamantha Geimerは"I have survived, indeed prevailed, against whatever harm Mr. Polanski may have…

「クリスチャン・ロマンス」ってどんなロマンスなの?

ブログ読者の方からロマンス分野でよく見かける「Christian Booksとはどういうものか?」という質問をいただきましたので、ここぞとばかりに今日のテーマにさせていただきました。 ロマンスブックの定義については以前にも簡単にご説明しましたが、その中でもアメリカ合衆国独自の存在が「クリスチャン・ロマンス」です。マイナーな分野だと想像されるかもしれませんが、 Book Expo Americaに行くと、専門の大きなブースがあってびっくりします。それほど読者が多く、売れているカテゴリーなのです。この分野だけの出版社もありますし、ハーレクイーンのような大手に属するSteeple Hillといった出版社もあります。 ヒロインとヒーローが障壁を乗り越えて最後にハッピーエンドになるのは他のロマンスブックと共通していますが、「クリスチャン・ロマンス」としての特徴はだいたい次のような感じです。 1)ヒロインが男性との関係を通じて人生と自分の存在意義を見いだす。女性は純粋無垢で男性に尽くすタイプ、男性は高圧的で筋肉もりもりのマッチョが多い。(個人的には、登場人物に深みや意外性がないのがロマンスブックの最大の難点) 2)すべてのストーリーの背景にある重要なテーマ:God’s Redeeming Love(神の贖罪の愛) 3)宗教的な葛藤がプロットの中心になる。多くの場合、主要人物がキリスト教の教義に基づいた愛を受け入れることで過去の罪を贖罪することができる。 4)教義に背く非道徳的な行為は文中に出てこない:例えば、婚前交渉、バイオレンス、罵り言葉(f**k、sh*t, h*ll)、ドラッグ、など。…

ディズニーがオンライン・デジタルブック開始。ぜひ皆さんのご意見をお聞かせください!

Disney Publishing Worldwideがオンラインでのデジタルブック購読サービスを始めました。デジタルコンテントをダウンロードするのではなく、メンバーシップを購入して、コンピューターで読むシステムです。 日本人読者にとって魅力的なのは、読み方がわからない場所を発音してくれるところです。また、子供の読解力によりレベルが3つに別れているので、初心者レベルから入り中学生レベルの読解力まで読み進めることができるのも利点です。 この企画についてディズニーから質問を受けました。私は私なりに思ったことを率直に伝えたのですが、先入観なしのみなさんのご意見をぜひ聞かせいただきいと思います。 なんでもけっこうですから、どうぞよろしくお願いいたします!

洋書のバーゲンブックを狙おう(2)!

以前にも洋書を安く買う方法をご紹介しましたが、読み損ねた方、または読んだけれど忘れていた方のためにもう一度お知らせしておこうと思います。 ドル安/円高のおかげで日本のAmazonでもほぼアメリカと同程度の価格で洋書を購入することができるようになっています。けれども、ペーパーバックが発売されると売れ残りのハードカバーがペーパーバックよりも安いバーゲン価格で売られるのがアメリカの面白いところ。賢い消費者としては、いろんなルートを知っておきたいものですよね。 1. Amazon.comのバーゲン本を狙う(日本への送料は1冊につき4.99ドル) 2. Barnes & Nobleのバーゲン本を狙う(送料はAmazon.comよりやや高く、5.49ドルです。5.99ドルで準速達便"Priority Mail"になります。 3.そしてこれは今回初めてのご紹介AbeBooks. 米国内もそうですが、特に欧州、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの方におすすめです。最も安い本を検索して注文できます。そして、さらにユニークなのが希少なコレクター専門のRare Book Roomのページ。読むだけで楽しめます。

オバマ大統領はバケーションで何を読んでいるのかな?

我が家は今Nantucket島でバケーション中なのですが、Obama大統領一家も2日前からお隣りのMartha’s Vineyard島でバケーションです(規模が異なるバケーションですが….)。 Clinton大統領夫妻はMartha’s Vineyard島滞在中には必ずといっていいほどNantucket島にも資金集めパーティのためにやってきたものですが、Obama一家が訪問する予定はないと地元の警察官が言っていました。混雑がないのは良いことだけれど、せっかくのチャンスだったから残念ではあります。 バケーション中のObama大統領の読書リストが公表されたので、ご紹介することにしました(私と一致するのは1冊だけ。趣味がちがうというか、娯楽で本を読むタイプじゃないのね〜)。 「そう見えないけれど実は読書家なのだ」と何度も聞かされるわりに言動にその証拠が見られなかったブッシュ前大統領と異なり、オバマ大統領の場合は実際に読書が言動に反映しているようです。 1. Hot, Flat and Crowded(既に読んだ本のはずですから再読ですね。私も再読しようかな) http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=0374166854 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=0374166854 2. John…

別荘の本棚が暗示するものは?

まだ東京に住んでいた18年前にナンタケット島に別荘を購入して以来、自分たちが使わないときには貸別荘にしてきました。 そこのマスターベッドルームの本棚に読み終えた本などを残し、「ご自由にお読みください。お持ち帰りOK」と書いておいたところ、けっこう役立ってきたようです。ほこりをかぶっているだけのものもありますが、手あかがついてぼろぼろになってきたもの、消えたものが多く、10冊以上あったThe Cat Whoシリーズは5冊だけになっています。 久々に本棚を探索すると、けっこう面白い掘り出し物を再発見し、それにまつわる懐かしい記憶がよみがえったりします。たとえばこの I Am A Catは日本で印刷されたものです。どうやら昔々に私が夫にプレゼントしたもののようです。1984年に英国で買ったThe Picture of Dorian Grayを発見した娘は、あのころ私がつけたハイライトの選択が奇妙だと文句をつけながらも「すごく面白い!」と感激しています。Wuthering Heightsも私が買ってあげた版よりもここにある古い版のほうが読みやすいと言って、レキシントンの我が家のほうに持って帰るつもりのようです。 久々にみつけてもう一度読み直したいな、と思ったのは1986年に英国で買ったThe…

Nick Hornbyは読者を知らない

High Fidelity などで有名なNick Hornbyは、コンテンポラリーな世界であがく心だけ若者の中年男性を描くことでは卓越した才能があると思っていました。でも、最近の作品はがっかりすることが多くて、読むのをやめてしまいました。 そこにこのインタビュー記事。なんとなくそのわけがわかったような。。。 彼はebookやKindleについてネガティブな意見を持っていますが、読者に触れたことがあるのかしら? 私が知っている英国人たちはみんなKindleの出現を「まだか、まだか」と首を長くしてまっています。Kindleやその他のebookリーダーこそがもしかすると激減している読者層を新たに広める救世主になるかもしれないのに。