Month: June 2009

クラシック音楽演奏家/ファンなら絶対に分かる可笑しさ-Real Men Don’t Rehearse:Adventures in the Secret World of Professional Orchestras

Justin Locke自費出版ユーモア・エッセイ/クラシック音楽 文章のサンプルはこちら 注文は作者のサイトからどうぞ。PayPalで日本からでも注文できるようになってます。 自費出版の薄い本ですから何の期待もせずに読み始めたところ、予想を裏切る(?)面白さ。あまりにも可笑しくて、ひとりでケタケタ笑っていたら、夫に「大丈夫?」と心配されました。作者はBoston PopsのBass(コントラバス)奏者だったJustin Lockeです。 クラシック音楽のファンであれば、ボストン・ポップス・オーケストラの名前は耳にしたことがあるはずです。ボストン交響楽団が夏のオフの間にポピュラーミュージックを演奏するために編成を変えたもので、基本的には同じメンバーで構成されています。でも、ボストン・ポップスには、公演ツアー用のもうひとつのボストン・ポップス、Boston Pops Esplanade Orchestraが存在するのです。Lockeが属していたのは、アーサー・フィードラーとジョン・ウィリアムズが指揮をしていた頃のこのEsplanade Orchestraで、来日したときのエピソードも載っています。それによると、ジョン・ウィリアムズが来日したときにコントラバスが演奏中にくるくる回転したのは、Lockeの仕業だったのです。 クラシック音楽と音楽家はくそまじめ、という印象がありますが、Lockeが描くプロのクラシック演奏家の世界は滑稽なエピソードだらけ。音楽を少しでも知っていると、その可笑しさが倍増します。たとえば、特殊な絶対音感を持った歌手と演奏しなければならなかった困難とか、演奏家に尊敬されようとして見事に失敗した若い指揮者のエピソードとか、シチュエーションを想像しただけで笑いが止まりません。楽器により演奏者の性格が異なるというのも(私は合唱でしたが)、吹奏楽団、オーケストラ、Jazzバンドで楽器を演奏する娘に尋ねると、「まさにそのとおり」とのこと。特にLockeの説では、”Bass Players differ…

時をかける彼と戻りを待つ彼女の時を超えて続くラブストーリー The Time Traveler’s Wife

Audrey Niffenegger Mariner Books 2004年5月発売 560 pages SF/商業的文芸小説/ラブストーリー 図書館司書のHenryは、”Chrono Displacement”症候群という架空の疾患に侵されていているために、予期しないときに予期しない時間と場所に突然タイムトラベルをしてしまう。飛んでゆく時は、未来の場合もあり、過去の場合もあり、予測はできないが、たいていは彼にとって重要な意味を持つ時である。 問題は、タイムトラベルの際に肉体以外は移動できないこと。だから別の時間に出現するHenryは全裸で、きわどいトラブルに巻き込まれる。何度も危機に瀕した彼は問題を解決するために一定のスキルを身につけるようになった。 また、タイムトラベルがHenryにもたらしたのは、ラブストーリーのパラドックスである。 Henryは28歳のときに初めて20歳のClareに出会うが、Clareは彼のことをずっと知っていると言う。実はClareは6歳のときに40代のHenryに出会い、彼が28歳になるまでに何度も会っていたのだ。 図書館での出会いから時間は過去と未来に飛びつつ進行する。現在、過去、未来のHenryとClareの視点を交えるうちに、しだいに過去と未来のタイムトラベルが重なり合ってくる。 現在にとどまってClareと普通の幸福をつかみたいHenryのフラストレーションと、いつ消えていつ戻ってくるのかわからない夫を待つClareの不安を、SFというよりもは、純文学のようにリリカルに、切なく、情熱的に描いている。…

ライ麦畑の無許可続編60 years laterの奇妙な事実

5月15日に「60年後のHolden Caulfield?Are you kidding?」というタイトルでで、新人作家による60 Years Later: Coming Through the Rye という作品が、アメリカより一足先に英国で発売されたことをお伝えしました。 そのとき、「作者が生きてる間に許可もなく続編なんて書いていいのかな?」と書きましたが、やっぱり出版差し止めの訴訟が起こり、英国のAmazonでは販売停止、米国のAmazonでも取り扱い停止、になっています。日本のAmazonだけがまだ「予約受付中」ですが、これは単に対応が遅れているだけでしょう。 それよりも、裁判のせいで奇妙な(ふざけた)事実がだんだん明らかになってきました。 これまで作者(ペンネームJohn David…

アフガニスタンで取材した女性ジャーナリスト-Seeds of Terror: How Heroin Is Bankrolling the Taliban and al Qaeda

アフガニスタンを拠点とするテロリストのタリバンとアルカイーダはどちらもヘロインを資金源にしています。それを止めることがテロ対策では最も重要だということを訴えるルポです。 http://rcm.amazon.com/e/cm?t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&asins=0312379277&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&asins=0312379277&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 注目すべきは、著者のGretchen Petersが女性ジャーナリストであり、アフガニスタンで麻薬取引をしている連中を取材してきたということ。それだけでも読む価値がある本だと思います。彼女が提案する対策は「?」なようですが…

ほんまかいな?と思わず関西弁になる輪廻転生のノンフィクションが売れている

「私の息子は、第二次大戦で死んだ兵士の生まれ変わりだった!」という眉唾のノンフィクションがなぜかすごく売れている様子です。思わず、「ほんまかいな?」と関西弁で反応してしまいました。 Soul Survivor: The Reincarnation of a World War II Fighter Pilot http://rcm.amazon.com/e/cm?t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&asins=0446509337&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=FFFFFF&bg1=FFFFFF&f=ifr&npa=1 こういう本はマクドナルドのハンバーガーと同じようなものなんでしょうね。 私は小学生のころこの手の本大好きでしたが。。。

あなたならこのHaikuをどう和訳する?

TwitterでHaikuを発表しているノルウェイの詩人Erik Boyeさんから英語で書いているHaikuを「ためしに邦訳してくれないかな?」との依頼がやってきました。昔、デンマークの企業で働いているときに、イギリス支社の人に「あななたち、DingishとJinglishで交信していて誤解しあわない?」とたずねられたことがあります。だから、ノルウェイ人が書いた英語の俳句を日本語に翻訳のはかえって面白い発想だと思いました。 下記はBoyeさんのことを書いた記事です。でもノルウェイ語だから私にはちんぷんかんぷん。August 2002: February 2005: Mars 2009 私は現代詩は書いたことがあるけれど、俳句や川柳の知識はほとんどゼロ。「じゃあ、いろんな方の意見をきいてみましょうよ」ということになりました。下はサンプルとして山ほどいただいたHaikuの中から私ごのみの3作です。どれでもいいからお好みのを選んで和訳のアイディアをいただけませんか?コメントに書くのはちょっと。。。という方はメールをいただけると嬉しいです。Erikさんがとっても楽しみにしてるようですから。俳句の形を取らなくてもけっこうですよ。フリースタイルで自由に素敵な発想をお待ちしています。 6/12日追記です。誰も助けてくれないんで、恥をしのんでひとつトライしてみます。 まず最初のリチウムのですが、これは俳句というより時事川柳です。 lithium in drinking water…

iPhoneをeBookリーダーとして使うチョイス-新Iceberg

またもKindleユーザーを悩ませる選択の出現です。 この夏iPhone OS 3.0 の発表にあわせて、eBookのIcebergが新しい機能を発表することになりました。 私はEinkでないと目が疲れるので、iPhoneを主のeBookリーダーとして選択することは将来もないと思いますが、持ち運びが楽なサブとしてはよく使っています。 このたびIcebergが発表したいくつかの新機能はとても魅力的です。そのうち、私が特に気に入ったのは次のものです。 1.文章や単語を検索できること。 2.それをコピーとペーストできること。 3.ノートもこんな風に取れる(Kindleより良い) 4.アップルのiTuneストアで本を買える。しかもけっこう安く、将来は大量の本を抱える予定とのこと。 5.本にざっと目を通すことができる。 これは、実は私にとって最も魅力的な機能です。あまり入り込むことができない本だと、ざーっと速読する癖があるのですが、Kindleではできません。何度苛立ったことか…。これだとそれが簡単にできます。

自傷癖があるヒロインが主人公のミステリー-Sharp Objects

Gillian Flynn 2006年9月初版 ミステリー/心理サスペンス シカゴの三流新聞の記者Camille Preakerは、心理的なトラウマから自傷で精神病院に入院していたこともある。トラウマの原因が存在する故郷のWind Gap(ミズーリ州)には長い間帰省したことがなかったが、その町で少女の連続殺人が起こる。殺害された少女たちの遺体からは歯が引き抜かれていた。インサイダーとしてのスクープを狙う編集者に取材に行くように命じられたCamilleは自分の精神状態が不安定になることに怯えながらも故郷に戻り、長年避けてきた母と異父妹のAmmaに再会する。