あけましておめでとうございます

2008年の年末に始めた洋書に関するブログ「洋書ファンクラグ」と「洋書ニュース」は、洋書というニッチな分野ながらも、おかげさまでこの1年の間に1月のアクセス数が2万5千を超えるようになりました。出版社や著者から献本をいただきレビューや感想を求められることも増え、翻訳者や出版関係者との出会いもありました。何よりも嬉しかったのはブログ読者の皆さまとの出会いです。皆さまのおかげで、年末には洋書ファンクラブ「これを読まずに年は越せないで賞」といった読者参加型の企画も行うことができ、実り多き1年でした。

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もうひとつのブログ「ひとり井戸端会議」や「才能を殺さない教育」「子供の才能を殺さないために親が読む本」などで私は以前から教育の問題点について何度か語ってきましたが、この1年は、ソーシャルネットワークを通じて交流した方々や得た情報の刺激で「私自身ができること」について考えるようになりました。

そうしてたどり着いた2010年の新企画が「洋書ファンクラブ ジュニア」です。

ピクチャ 7
 

この企画についてご説明する前に、私に強い印象を与えた2つの視点についてお話しさせてください。

まずは、ミューズ・アソシエイツ社長 梅田望夫氏の「知の英語圏日本語圏問題」です。
 日本人の前にそびえたつ「言語の壁」で梅田氏はこう語っています。
 

「英語圏に生まれ育った若者たち」は、それが世界のどこであろうと、別の意味でリアル世界の物理的制約を軽々と超えていく。

日本語圏で生まれ育った若者たちについてはどうでしょう?

学ぶことから働くことまで、ネットがさまざまな意味で「人生のインフラ」そのものへと進化する今、「言語の壁」と言語空間特有の文化に封じ込められるゆえの「文化の壁」がそびえたってくるのを、改めて感ずるのである。

もうひとつの視点は、Googleがいかにして生まれ現在に至ったかを描いた「Googled」というノンフィクションから得たものです。

著者のKen Aulettaは、Googleの成功に不可欠なものとして情熱とビジョンを挙げ、「ビジョンなしの情熱は焦点が絞れていても電池が入っていない機械のようなものである」と説明しています。テストの点が過剰に尊重されている日本の教育では、1つの問いに対して1つの”正しい”答えを高速ではじき出すことがあたかも知性や能力と勘違いされています。「情熱とビジョン」はそういった教育からは生まれません。かえってその可能性を殺してしまうことでしょう。

私が「洋書ファンクラブ ジュニア」の企画を具体的に考え始めたのは、オンライン産経ニュースでの梅田氏の「進化を遂げる英語圏」を読んだときです。特に次の部分が印象的でした。 

インターネットは既存産業に破壊的なインパクトを及ぼすと同時に、利用者には圧倒的な利便性や生産性向上をもたらすものだ。私は勝手に「知の英語圏日本語圏問題」と呼んでいるのだが、世界語と化した英語の非対称性ゆえの構造問題と理解しつつも「これだけの知的興奮の可能性が英語の世界にしかもたらされないのか」と個人的には残念な気持ちが勝る。「日本語で学べる環境」や「日本語による知の創造の基盤」の競争力をいかに維持するのか。ウェブ進化の恩恵を受けて新しい地平が拓(ひら)かれる英語圏を見つめながら、日本人として考えるべき課題は山積だなあと悩む昨今である。

アメリカに住むアジア系移民の子供たちを見ていると、次の世代を担うのはこれらの「世界のどこであろうと、リアル世界の物理的制約を軽々と超えていく」英語圏の若者だと確信させられます。彼らには、世界語としての英語の能力だけでなく、Googleが誕生できる創造的な土壌で培われた情熱やビジョンがあります。日本語圏で育つ子供たちが彼らに対抗できるように、わずかでも貢献できないものかと考えた末に思いついたのがこの「洋書ファンクラブ ジュニア」なのです。

小学生の時点から洋書を日本語の本と同じように楽しむ癖をつければ、たとえネイティブのレベルに達することができなくても、大学生になったころから世界中の情報をリアルタイムで得ることができるようになるでしょう。また、ディスカッションやレビューを書くことを通じて自分でものを考える習慣が生まれます。点数獲得にこだわらず知識を得ることそのものを愛するようになれば、波乱が予想される将来で生き残る柔軟性も生まれるでしょう。

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英会話教師の育成学校、アメリカの小学校や中学校でのボランティアと取材、子育ての体験などから生まれた「洋書ファンクラブ ジュニア」は、日本に住む子供を対象とした洋書の読書推進プログラムです。

少数限定の有料読書プログラムの正式スタートに先立ち、必要な情報を得るための無料パイロットプログラムを行いま
ので、ご興味がある方はぜひ「洋書ファンクラブ ジュニア」をご覧ください。

ボストンのガードナー美術館の盗難事件を扱ったミステリー Among Thieves

David Hosp
384ページ(ハードカバー)
Grand Central Publishing
2010/1/11発売
ミステリー/アート盗難

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Rembrandt_Harmensz._van_Rijn_021

(さらに…)

骨董の短刀が伝えようとしているものは何か?愛と贖罪のストーリィ — The Last Will of Moira Leahy

Therese Walsh
304ページ(ハードカバー)
Shaye Areheart Books
2009/10/13
文芸小説

http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=0307461572
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25歳のMaeve(メイヴ)は、大学で外国語を教える以外にはほとんど外の世界との交流がない孤独な生活を送っている。幼なじみでルームメイトのKit(キット)以外の友人は大学で知りあったNoel(ノエル)だけだが、そのノエルもヨーロッパに行ったきり連絡を絶っている。

9年前までメイヴは怖いもの知らずの活発な少女だった。幼い頃からサキソフォンの才能を発揮し、誰からもプロの演奏家になることを期待されていた。けれども人類学者の祖父の影響を受けたMaeveの最大の夢は、一卵性双生児の妹Moira(モイラ)と冒険に乗り出すことだった。メイヴとモイラは二人の間だけしか通じない言語を話し、言葉を交わさなくても互いの考えていることが分かるほど親密だったが、思春期を迎えてモイラは次第に華やかな姉に嫉妬心を抱き、メイヴを拒絶するようになる。
そして、ある日のできごとを境にメイヴはひとり取り残され、音楽を捨て、故郷のメインを去る。母親はメイヴの住む場所を訪問することを拒否し、メイヴは頑に故郷を避けている。故郷と母親だけでなく、親友キットの兄イアンを避け続けているのにも誰にも明かしていない深い理由がある。

ある日、メイヴは骨董のオークションでインドネシアのKerisという短刀をみかける。幼いときに失った祖父からの贈り物にそっくりのそのKerisをどうしても欲しくなったメイヴは金額が予想以上に競り上がったにもかかわらず、競り落とす。そのKerisを入手する前後から、彼女に不思議なことが起こりはじめる。頭の中で音楽や音が鳴り、Kerisが勝手に移動するのだ。そして、オークションでメイヴと競り合いをしたインドネシア人は彼女のドアに謎めいたKerisの本やメッセージを残す。kerisは人の運命を伝える神秘な剣で、彼は実はこのKerisを持ち込んだKeris作りの名人empuだったのだ。彼女はローマへ招待する彼のメッセージを無視するつもりだったが、突然訪ねて来た父親に強くすすめられてローマに出かける。ローマに到着すると、音信不通になっていたノエルが待っていた。

●ここが魅力!

Kris 神秘的な力を持つ短刀Keris(左の写真)と双子の妹モイラに関する謎がこの物語の焦点です。快活だったモイラがどうして何事にも臆病な引っ込み思案の女性になってしまったのか、その心理にも引き込まれます。

また、私は骨董が好きで、買いはしないのですがオークションにも出かけることがあります。ですからKerisというインドネシアの短刀にまつわる神秘的な逸話や骨董好きのノエルという青年(日本で言えば草食系の男性)など、私の好みです。

超常現象が混じったこの物語の雰囲気は、私が以前ご紹介したIn the Country of the Youngを少し思い出させました。どちらも作者はアイリッシュの女性なので、神秘的な伝説や若い女性の心理の描き方が似ているのかもしれません。男性読者にはこういった本は面倒に感じるかもしれませんが、The Time Traveler’s Wifeが好きだった方なら楽しめるでしょう。

この表紙から受ける印象よりは、ずっと出来の良い作品です。

●読みやすさ ★★★☆☆

メイヴの一人称の語りとモイラの三人称の回想が交互に織り交ぜられていて、それを認識して読むとさほど難しくはないでしょう。ヤングアダルトよりもやや難しく、通常の文芸作品よりもは易しいレベルです。

●アダルト度 ★★★☆☆

生々しい描写ではありませんが、性的なシーンは3カ所ほどあります。高校生以上が対象です。

Seth Godin,電子書籍で後ろ向きな大手出版社を叱る

ピクチャ 2 先日ご紹介した無料ebook「What Matters Now」の発案者Seth Godinがまたまた出版界に波紋を投げかけてくれました。今回はgallycat.comの「Seth Godin Criticizes Simon & Schuster CEO’s Year-End Letter」というセンセーショナルなタイトルつき。

話題の元になったのは、Godinの「You don’t have the power」というブログエントリーです。ここで彼が問題にしたのは、Simon & Schuster CEO Carolyn Reidyが書いた次の部分です。

"We must do everything in our power to uphold the value of our content against the downward pressures exerted by the marketplace and the perception that 'digital' means 'cheap.'

“「電子書籍は(紙媒体に比べて)安いものである」という認識と市場の圧力(つまり消費者主導の電子書籍の低価格)によりコンテントの価値が下がっていることに対して、我々は総力を尽くしてコンテントの価値を守らなければならない”といった内容。

それに対してGodinは次のように語っています。

You don't have the power. Maybe if every person who has ever published a book or is ever considering publishing a book got together and made a pact, then they'd have enough power to fight the market. But solo? Exhort all you want, it's not going to do anything but make you hoarse.

“ あなたにそれを止める力はありませんよ。もし、これから出版を考えている者を含む出版に関わるすべての人物が集まって協定をとりかわすのならば市場と闘うのに十分な力ができるかもしれませんが、御社が単独で?思う存分熱い説教をされるのはけっこうですが、声が嗄れるだけですよ”

詳しくはGodinのブログをご覧いただくとして、彼の意見は次のように集約されます。

If I'm an upstart publisher or a little-known author, you can bet I'm happy to sell my work at $5 and earn seventy cents a copy if I can sell a million.
“立ち上げたばかりの出版社やあまり知られていない作家であれば、もし百万冊売れるのであればよろこんで1冊5ドルで取り分70セントの価格で売りますよ”

Smart businesspeople focus on the things they have the power to change, not whining about the things they don't.
“賢い実業家は自分が変えられないものに対して泣き言を言ったりはしません。自分が変えることができることに焦点を絞るものです。”

Publishers Weeklyの記事によると、 後ろ向きなSimon & Schusterに対して電子書籍で無料ebookなどのマーケティングに力を注いだRandom Houseの2009年の収益は上がっています。特に電子書籍の延びは、パーセンテージで3桁だということです。
“The Random House digital future is a core focus of our company’s overall strategy,”というように、ランダムハウスは電子書籍を将来生き延びるための重要な戦略にしているのです。

humanityの敵は誰なのか?娯楽作品でありながら哲学的なテクノスリラーーFreedom

Daniel Suarez
416ページ(ハードカバー)
Dutton Adult
2010/1/7
テクノスリラー/SF(とも言えないことはない)/コンピューターゲーム

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2009年テクのスリラー最大のデビュー作Daemonの続編。

前作を読んでいない方はネタバレがあるので下記を飛ばしてください

国家の機密を隠すためにDaemonによる大量殺人の罪を着せられて処刑された刑事のSebeckは、DaemonのクリエーターSobolのプログラムにより命を救われ、あるクエストを命じられる。だがそのクエストが何であるのかは誰にも明らかにされていない。

一方、Daemonによる大量殺人の捜査で初期にSebeckを援助し、次いでFBI特別捜査官Roy MerrittとNSA( National Security Agency)の特別チームリーダーNatalie Philipsを援助したJon RossもDaemonが作り上げたD-space(ダークスペースという名のサイバースペースで繋がる社会)に移る。その理由は、民間軍事会社を通じて世界の企業と政府を牛耳るThe MajorがDaemonを乗っ取るのを阻止し、humanity(人間性)を守るためだった。Sobolは最初のうちはLokiのような反社会的な性格異常者をリクルートしていたが、D-spaceは今よりも良い社会を求める理想家たちが集まるようになっていた。通常の名前や肩書きはなく、業績や関わった人々からの評価でレベルが決まるD-spaceはSobolの専門だったオンラインゲームの世界と似ている。

現状の世界での悪を代表するThe MajorとD-spaceのLokiの戦い、愛するJon Rossの誘いを断って米国への忠誠を誓うPhilips、Humanityの行方、などまったく飽きることがない展開である。

● ここが魅力

Daemonは、発売と同時に読み、見ず知らずの新人作家Suarezに「この本は絶対に売れる!」とemailを出したほど深く衝撃を受けた作品でした。私の予言通りDaemonはニューヨークタイムズ紙のベストセラーになりましたが、実を言うと、続編でがっかりするのではないかとずっと心配していたのでした。
続編のARCを入手してすぐに読み始めなかったのは、The Girl Who…シリーズの第三部でちょっとがっかりしたこともあります。でも、読み始めてそんな心配がまったく無駄だったことを知りました。ともかく、スピーディーだし、D-spaceは、ゲームの世界を知らない私のような人でもインターネットに慣れていれば、「そういえば、こういう世界になってきてるよな」と納得できます。特に、HUD(ヘッドアップディスプレー)眼鏡を装着するとそれぞれの人物の情報がついたcall-out(付記)が現れる、という発想がおもしろいです。付記には、その人の名前(これがハンドル名というところが傑作)、職種とレベル、reputation score(何人が評価して5つ星評価のいくつかというアマゾンの読者評価のようなもの)が現れ、この世界では肩書きよりもそれで判断される、というのは現代の民主主義かもしれません。

DaemonよりもFreedomのほうが面白いと感じたのは、前回この世界の秩序を乱す存在であったDaemonに、Humanityを救うための唯一のツールというアングルが生まれたことです。「現在の社会には民主主義があると思い込んでいるが、実は政府すら操る企業に支配されているだけではないか?」という問いかけは、決して作り事の世界のものではありません。

●読みやすさ ★★★☆☆

ブンガクではありませんから、解釈の必要がない文章です。あれこれテクニカルな用語は出てきますが、IT系の方やゲームに慣れている方はこの世界を把握しやすいので、かえって読みやすく感じるかもしれません。

●アダルト度 ★★★☆☆

ロマンスに関してはほぼプラトニックですが、拷問や殺人の部分がビビッドなので、小学生には向きません。私はバイオレンス苦手なので痛い部分の詳細はけっこう飛ばしました。

●Freedomの前編

Daemon

スティーブ・ジョブズからプレゼンの秘訣を学ぼう ーThe Presentation Secrets of Steve Jobs

Carmine Gallo
256ページ(ハードカバー)
McGraw-Hill
2009/9/11

http://rcm.amazon.com/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yofaclja-20&o=1&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=10FE9736YVPPT7A0FBG2&asins=0071636080
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世界中の若い世代のビジネスマンに「プレゼンテーションが上手な人物は?」と尋ねたら、たぶんスティーブ・ジョブズがダントツ1番でしょう。多くの大企業のCEOが聴衆を居眠りさせてしまうなかで、ジョブズは「聴衆」を「観客」なみに熱狂させてしまうのですから。そして、それらの聴衆たちは雇われてもいない伝道師としてアップル製品を熱に浮かれたようにあちこちに伝えてゆきます。ジョブズはまさにアップル教の教祖です。でも、ジョブズの偉大なプレゼンテーションが生まれつきのものであると思ったら大まちがい。魔術のようなプレゼンテーションは、ジョブズの努力の結果なのです。

自らもプレゼンテーションが巧みなことで知られるコミュニケーション専門家のCarmine Galloは、本書でジョブズのプレゼンテーションの秘密を綿密に分析し、どのレベルのコミュニケーターでも活かせるようにわかりやすく解説しています。読みながらメモを取ったのですが、結局ここで使えないほど溜まってしまったくらい同感した箇所が多い本でした。

昔は私もよくプレゼンをしましたし、外資系の会社に勤務しているころは英語のプレゼンや講演の通訳もやりました。だからダメなプレゼンがどんなものかは熟知していると言っても過言ではありません。最悪なプレゼンは聴衆を無視した自己満足なものです。ジョブズは、プレゼンテーションとはロックコンサートや演劇のパフォーマンスのようなものであり、「お客様」に「素晴らしい体験」をしていただくことが大切なのだと自覚しています。「Your Audience wants to be informed, educated, and entertained」とGalloが説明するように、聴衆は、製品の情報だけでなく、なんらかの学びと楽しい体験を期待しているのです。

ジョブズはプレゼンを古典文学のように3つのAct(劇の幕)に分けています。起承転結という感じですね。そこでGalloも本書を3つのActに分けています。
1幕の「Create the Story」では、まず製品に関する、観客を虜にするようなエキサイティングなストーリーを作り上げる方法を説いています。
2幕の「Deliver the Experience」は製品の実際の内容や使い方を説明する方法ですが、ただ説明するのではなく、観客に「これが欲しい」いや「持たねばならぬ」と思いこませるような体験を与える方法です。
3幕の「Refine and Rehearse」は演出と練習です。演劇を少しでもやったことがある方ならピンとくるでしょうが、単純に見えるシーンの背後には綿密なプランと練習があります。ここでは、衣装からボディランゲージ、声の調子など細部の演出について説明しています。

Galloがジョブズのプレゼンテーションを観ながら読むことを薦めているので、ここにGalloが賞賛するMacworld 2007のジョブズのキーノート講演(12部の1部)を載せました。続きはYouTubeでご覧下さい。

●ここが魅力!

難しい言葉を使って語ろうと思えばいくらでもそうできる複雑な内容を、非常にシンプルな言葉(ジョブズもそう)でシンプルに説明しているところが最大の魅力です。私が気に入ったフレーズの一例は’ Deliver a “holy shit” moment’ 。この一言で多くのことがいっぺんに理解できてしまいますよね。それから‘Sell dreams, not products‘というフレーズなんかも。優れたコミュニケーションがどういうものであるかをGallo自身が実践しているわけですね。

もうひとつの魅力は、多くの聴衆の前でプレゼンをしない人でもビジネスで利用できる知恵が満載されていることです。相手が1人のお客様であっても上司であっても、このコミュニケーション技術は必ず役立つはずです。

こういった本に(私の夫の本についてもそうですが)「繰り返しが多い」といった的外れな批判をする方が出てきますが、それは本当に的外れです。ジョブズのプレゼンでもそうですが、繰り返しはわざとなのです。シンプルな内容もそう。それが理解できない方は、どんなに良いハウツー本を読んでも良いプレゼンテーションはできないと思います。

その逆で、これを読んで「そう、そう、その通り!」とピンとくる方には既に素晴らしいプレゼンターになれる素質ありです。

●読みやすさ ★★★☆☆

難しい言葉を使っていませんから、英語があまりできない方でも挑戦できるでしょう。ビジネスで英語を勉強したい方には、プレゼンと英語の勉強を両方一緒にするというのも良い案かもしれません。

●この本が気に入った方はこんな本も

押し売りアラート!

内助の功ということで、本書に推薦文を寄稿している私の夫の本をご紹介させていただきますね。

The New Rules of Marketing and PR

発売後2年以上経過した今もBusiness Week誌でベストセラーを続けている。多くの大学で教科書として使われるようにもなった。変化の激しい業界なので邦訳された第一版以降、英語版は何度も改訂されている。
下は、2010年に大幅に改訂された最新バージョン。

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World Wide Rave

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スティーブ・ジョブズからプレゼンの秘訣を学ぼう ーThe Presentation Secrets of Steve Jobs

Carmine Gallo
256ページ(ハードカバー)
McGraw-Hill
2009/9/11

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http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=0071636080

世界中の若い世代のビジネスマンに「プレゼンテーションが上手な人物は?」と尋ねたら、たぶんスティーブ・ジョブズがダントツ1番でしょう。多くの大企業のCEOが聴衆を居眠りさせてしまうなかで、ジョブズは「聴衆」を「観客」なみに熱狂させてしまうのですから。そして、それらの聴衆たちは雇われてもいない伝道師としてアップル製品を熱に浮かれたようにあちこちに伝えてゆきます。ジョブズはまさにアップル教の教祖です。でも、ジョブズの偉大なプレゼンテーションが生まれつきのものであると思ったら大まちがいです。これはジョブズの努力の結果なのです。

自らもプレゼンテーションが巧みなことで知られるコミュニケーション専門家のCarmine Galloは、本書でジョブズのプレゼンテーションの秘密を綿密に分析し、どのレベルのコミュニケーターでも活かせるようにわかりやすく解説しています。読みながらメモを取ったのですが、結局ここで使えないほど溜まってしまったくらい同感した箇所が多い本でした。

昔は私もよくプレゼンをしましたし、外資系の会社に勤務しているころは英語のプレゼンや講演の通訳もやりました。だからダメなプレゼンがどんなものかは熟知していると言ってよいでしょう。最悪なプレゼンは聴衆を無視した自己満足なものです。ジョブズは、プレゼンテーションとはロックコンサートや演劇のパフォーマンスのようなものであり、「お客様」に「素晴らしい体験」をしていただくことが大切なのだと自覚しています。「Your Audience wants to be informed, educated, and entertained」とGalloが説明するように、聴衆は、製品の情報だけでなく、なんらかの学びと楽しい体験を期待しているのです。

ジョブズはプレゼンを古典文学のように3つのAct(劇の幕)に分けています。起承転結という感じですね。そこでGalloも本書を3つのActに分けています。
1幕の「Create the Story」では、まず製品に関する、観客を虜にするようなエキサイティングなストーリーを作り上げる方法を説いています。
2幕の「Deliver the Experience」は製品の実際の内容や使い方を説明する方法ですが、ただ説明するのではなく、観客に「これが欲しい」と思わせるような体験を与える方法です。
3幕の「Refine and Rehearse」は練習とリハーサルです。演劇を少しでもやったことがある方ならピンとくるでしょうが、単純に見えるシーンの背後には綿密なプランと練習があります。ここでは、衣装からボディランゲージ、声の調子など細部の演出について説明しています。

Galloがジョブズのプレゼンテーションを観ながら読むことを薦めているので、ここにGalloが賞賛するMacworld 2007のジョブズのキーノート講演(12部の1部)を載せました。続きはYouTubeでご覧下さい。

●ここが魅力!

難しい言葉を使って語ろうと思えばいくらでもそうできる複雑な内容を、非常にシンプルな言葉(ジョブズもそう)でシンプルに説明しているところが最大の魅力です。私が気に入ったフレーズの一例は’ Deliver a “holy shit” moment’ 。この一言で多くのことがいっぺんに理解できてしまいますよね。それから‘Sell dreams, not products‘というフレーズなんかも。優れたコミュニケーションがどういうものであるかをGallo自身が実践しているわけですね。

もうひとつの魅力は、多くの聴衆の前でプレゼンをしない人でもビジネスで利用できる知恵が満載されていることです。相手が1人のお客様であっても上司であっても、このコミュニケーション技術は必ず役立つはずです。

こういった本に(私の夫の本についてもそうですが)「繰り返しが多い」といった的外れな批判をする方が出てきますが、それは本当に的外れです。ジョブズのプレゼンでもそうですが、繰り返しはわざとなのです。シンプルな内容もそう。それが理解できない方は、どんなに良いハウツー本を読んでも良いプレゼンテーションはできないと思います。

●読みやすさ ★★★☆☆

難しい言葉を使っていませんから、英語があまりできない方でも挑戦できるでしょう。ビジネスで英語を勉強したい方には、プレゼンと英語の勉強を両方一緒にするというのも良い案かもしれません。

●この本が気に入った方はこんな本も

押し売りアラート!

内助の功ということで、本書に推薦文を寄稿している私の夫の本をご紹介させていただきますね。

The New Rules of Marketing and PR

発売後2年以上経過した今もBusiness Week誌でベストセラーを続けている。多くの大学で教科書として使われるようにもなった。変化の激しい業界なので邦訳された第一版以降、英語版は何度も改訂されている。2010年は大幅に改訂された最新バージョンが新発売される。

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World Wide Rave

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http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=0470395001

電子書籍を拒絶する後ろ向きな出版社は生き残れない

先週大手出版社のSimon & Schuster, Hatchette, HarperCollinsが新刊の電子書籍の発売をハードカバーより遅らせることを発表しました。価格が低くて取り分の少ない電子書籍の売り上げを押さえて、ハードカバーを売ろうとする戦略ですが、私は「読者を無視した後ろ向きの対応しかしない出版社は生き残れない」と感じていました。なぜなら、出版社がなくても大物作家が直接電子書籍を売ることができる時代になってきたからです。

ピクチャ 6スティーブン・キングあたりが出版社抜きで直接電子書籍を売る最初の大物作家ではないかと2年くらい前から予想していた方もいましたが、なんと第一号はこの方、ビジネス書作家のStephen R. Coveyです。The New York Timesの記事によると、Coveyは電子書籍の出版権をSimon & SchusterからAmazon.comに1年契約で移行したとのことです。今後こういう作家が続く可能性がありますから後ろ向きな出版社は要注意ですね。

それから電子書籍でAmazon.comは売るたびに赤字、という記事をどこかで読みましたが、それは間違った情報だと思います。今ちょっと手元に資料がないので控えますが、近いうちにそれについても語りたいと思います。

proReaderのQUE、2010年1月7日デビュー決定!

QUE  Plastic Logic社の電子書籍リーダー(PL社はproReaderと呼んでいる)QUEのデビューが公式になりました。Plastic Logic社からのプレスリリースによると、ラスベガスで開催される「Consumer Electronics Show」にてデモを含めた詳しい内容を公開するとのことです。

Plastic Logic社が「世界初のproReader」と強調するproReaderとは何でしょう?

これは、電子書籍を読むことが中心で、それに新聞と雑誌が加わっただけのKindleやNookなどのe-Readerに対して、PDFのみならず, Word, PowerPoint, Excel などビジネスで必要なファイルもダウンロードでき、書き込みなどもできるというプロビジネス/学術なツールなのです。

プロビジネス/学術の姿勢は「戦略的コンテントパートナーシップ」にも反映しています。小説などの電子書籍は米国最大手のチェーン書店バーンズ&ノーブルからの購入ですが、世界最大の科学技術雑誌「Popular Science」、MITの「Technology Review」などのほか、 PC World, Macworld, CIOWorld, NetworkWorld, ComputerWorld, InfoWorld and Technology Review, Financial Times, USA TODAY, Detroit Free Press, Detroit Newsなどは直接QUEストアから購読することができます。

その他の魅力は、欧州生まれということでしょう。

米国でデザインして中国で製造、というパターンが多い世界で、英国ケンブリッジ大学で誕生しドイツのドレスデンで製造されるQUEは、特異な存在と言えます。

これまでのQUEに関する記事はこちらです。

CESに行けない方は、その時期にデモをFacebookでみられるようです。

米国のトップ実践的先駆者たちが寄稿した「What Matters Now」の無料ebookダウンロード

ピクチャ 4 マーケッティング分野の本で日本でも人気のSeth Godin(セス・ゴーディン)が、米国の種々の分野で活躍する74人(72組)の著名人に呼びかけ、「What Matters Now」というeBookの無料配布を企画しました。ブログをメインストリームにしたArianna Huffington、ベストセラー作家のElizabeth Gilbert、オライリーメディア創立者のTim O'Reillyなどが「来るべき新年に何を考え、どんな行動を取るべきか」というテーマで1ページずつ寄稿しています。分野は異なれど、「Thought Leader(実践的先駆者)」としてまとめることができるかもしれませんね。

寄稿者は下記のとおりで、ゴーディンが選択しただけあってさすがの顔ぶれです。

米国と日本では知名度が異なると思いますので、このうち何人ご存知か試してみてください。
ピクチャ 3

無料ebookのダウンロードDavid Meerman Scott(今回が初めての方のために情報公開:私の夫)、あるいはSeth Godinのブログサイトでどうぞ!

寄稿者の例:

flairDavid Meerman Scott

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flairSeth Godin

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flairArianna Huffington

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flairTom Peters 

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flairChris Anderson

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flairJacqueline Novogratz

The Blue Sweater(Amazon.com)

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flairElizabeth Gilbert 

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flairTim O’Reilly

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flairKaren Armstrong

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