October 2013

ダークでユーモアたっぷりの児童書ファンタジー新シリーズ『The Screaming Staircase (Lockwood & Co. #1)』

著者:Jonathan Stroud

ハードカバー: 384ページ

出版社: Hyperion Book CH

ISBN-10: 1423164911

発売日: 2013/9/17

適正年齢:PG8(小学校3年生以上)/小学校高学年から中学生をターゲットにしている

難易度:中級レベル(文章はシンプルでストーリーは理解しやすいが、中級レベルには難しい表現もある)

ジャンル:ファンタジー(ホラー)/ミステリ

キーワード:幽霊、超常現象、冒険、忠誠心、友情

2013年これを読まずして年は越せないで賞候補(渡辺推薦)、あるいは2014年に持ち越し?


 

ヴィクトリア朝を思わせるロンドンで、50年ほど前から恨みを抱いて死んだ者の霊が現れて人々を襲い、殺害する事件が増えてきていた。事件があまりにも蔓延したために生まれたのが幽霊を駆除するビジネスだった。

このビジネスには生まれつきの霊感が必要であり、特に若いときにその能力が強い。だが、駆除にはスキルが必要である。霊感がある子は会社に入社して年長の経験者の指導のもとにトレーニングを積むのが習わしなのだが、あまりにも危険な仕事のため、成人するまで生き延びる者は少なかった。

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辛抱強く読み続ければ次第に面白くなる今年のブッカー賞受賞作『The Luminaries』

著者:Eleanor Catton

ハードカバー: 848ページ

出版社: Little, Brown and Company

ISBN-10: 0316074314

発売日: 2013/10/15

適正年齢:PG15(高校生以上)、娼婦やアヘン中毒が出てくるが、露骨なシーンはない。

難易度:超上級レベル(英語ネイティブでも読みづらい)

ジャンル:文芸小説/歴史小説(19世紀ニュージーランド)/ミステリ

キーワード:ゴールドラッシュ、占星術、犯罪、復讐、ロマンス、超常現象

2013年ブッカー賞受賞作


 

ゴールドラッシュ時代の19世紀ニュージーランドが舞台。Godspeed船で嵐の夜にHokitikaに到着したスコットランド人の青年Walter Moodyは、The Crown Hotelの喫煙室で12人の男たちと出会う。偶然その場に居合わせたように振舞っている彼らは、出身地も階級も明らかに異なる。本国で弁護士の資格を持つ紳士のMoodyは、速やかに彼らの信頼を得て会話に加わる。12人の男たちは、最近町で起こった事件の真相を突き止めるために集まり、それぞれの秘密を告白しあっていたのだった。

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日本で洋書が買える書店リスト(未完成、進行中)

「もっと多くの方に洋書を楽しんでもらいたい!」というのが、このブログを始めたときの動機のひとつでもありました。

アメリカ暮らしなのでご紹介する情報がネット書店に偏りがちですが、書店でいろいろな洋書の表紙を眺めて楽しんだり、偶然の出会いもしていただきたいといつも思っています。私にも、そういう偶然の出会いで好きになった作家が沢山いますから。

そこで、日本で洋書が買えるお店(ある程度充実している必要あり)のリストを作ってみようと思いました。

SNSやブログでの情報を元に少しずつ充実させてゆきたいと思っていますので、「このお店にはこんなものがあるよ!」といった情報のご協力、よろしくお願いいたします。書店の自己推薦も大いに歓迎です。住所がわかるサイトがない場合には、住所や行き方もお教えください。

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ハロウィーンにぴったりのユーモアホラー絵本『Creepy Carrots!』

著者:Aaron Reynolds(文)、Peter Brown(イラスト)

ハードカバー: 40ページ

出版社: Simon & Schuster Books for Young Readers

ISBN-10: 1442402970

発売日: 2012/8/21

適正年齢:PG6(幼稚園〜小学校低学年)

難易度:初心者向け

ジャンル:絵本/ホラー/パロディ

キーワード:不気味

コールデコット賞オナー作品、ALA(全米図書館協会)Notable Children's Book賞受賞

 


この前にご紹介した『The 13-Story Treehouse』で、「ネットでしか見つけられない隠れた良書もあれば、書店だからこそ遭遇できる本もある」と書いたが、これは大手書店チェーンのバーンズ&ノーブル(しかもボストン界隈では最も大きな店舗)に在庫がなかった絵本である。今年のコールデコット賞オナー作品でありAmazon.comでも人気が高いのだが、児童書部門の書店員は「聞いたことがない」と答えたので驚いた。

ハロウィーン用の絵本ではないが、珍しい「ホラー絵本」なので、ハロウィーンのこの時期にご紹介することにした。

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小学生の男子が夢中になるグラフィック・ノベル『The 13-Story Treehouse』

著者:Andy Griffiths(文)、Terry Denton(イラスト)

ハードカバー: 239ページ

出版社: Feiwel & Friends

ISBN-10: 1250026903

発売日: 2013/4/16

適正年齢:PG6(小学生向け)

難易度:初級レベル(中学英語をマスターした程度)

ジャンル:グラフィック・ノベル(漫画のようなイラストが多く、文章がほとんどない小説)

キーワード:ツリーハウス、ユーモア、空想の世界

 


ネットでしか見つけられない隠れた良書もあれば、書店だからこそ遭遇できる本もある。だから私はときおり近くにあるバーンズ&ノーブルを訪問して書店員さんに「最近どんな本が人気がありますか?」と情報を集めることにしている。

本書はそうやって出会った本のひとつである。Amazonなどのネット書店ではあまり売れていないようだが、それはたぶん手にとって中身を読むことができなからかもしれない。

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『モンテ・クリスト伯』のモデルになった大デュマの父親の実像に迫る 『The Black Count』

著者:Tom Reiss
ペーパーバック: 432ページ
出版社: Broadway Books; Reprint版
ISBN-10: 0307382478
発売日: 2012/9/18
適正年齢:PG12(中学生以上)
難易度:上級レベル(しかし、ストレートな英語なので、日本人にはかえって読みやすいだろう)
ジャンル:伝記/ノンフィクション
キーワード:歴史(ナポレオン戦争時代)、アレクサンドル・デュマ、モンテ・クリスト伯
2013年ピューリッツアー賞受賞作、2013年「これを読まずして年は越せないで賞」候補

『モンテ・クリスト伯』と『三銃士』の作者アレクサンドル・デュマ(大デュマ)とその息子で『椿姫』の作者アレクサンドル・デュマ(小デュマ)は、日本人に馴染み深いフランスの作家である。だが、大デュマの父親のトマ=アレクサンドル・デュマ(Thomas-Alexandre Dumas)将軍について知る人はあまりいない。

デュマ将軍は白人の貴族と黒人の奴隷の間に生まれた混血児で、彼もアレクサンドル・デュマ(Alexandre
Dumas)と呼ばれていた。父親のAlexandre Antoine Davy de la
PailleterieはMarquess(侯爵)の放蕩息子で、母国を離れて現在のハイチであるSaint-Domingueに渡り、金儲けを試みたのだ。

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大都市の孤児を汽車に乗せて里親を探したアメリカの歴史を伝える小説『Orphan Train』

著者:Christina Baker Kline

ペーパーバック: 304ページ

出版社: William Morrow Paperbacks

ISBN-10: 0061950726

発売日: 2013/4/2

適正年齢:PG15(高校生以上)、露骨ではないが性的なシーンあり。

難易度:上級レベル(ネイティブの普通レベル)、シンプルな文章でスムーズに読めるが、ボキャブラリはある程度必要。

ジャンル:歴史小説(20世紀前半のアメリカ合衆国)

キーワード:Orphan Train, 孤児、大恐慌、人種差別、性差別、心あたたまる本

2013年「これを読まずして年は越せないで賞」候補作(春巻きさん推薦)


 

アメリカ東北部のメイン州に住む女子高生のMollyは、面倒をみてくれる親が不在のために何年もfoster homes(里親システムに登録している家庭)の世話になっている。里子への同情や愛情ではなく、小遣い稼ぎなどの動機で里親になる者も多く、Mollyはそういった家庭で摩擦を起こしてfoster homeを転々としてきた。

図書館で古い本を盗んだ罪で少年院に送られそうになったMollyは、思いやりあるボーイフレンドのはからいで代わりにコミュニティサービスをすることになる。それは91歳の独居未亡人Vivianの屋根裏部屋の整理を手伝う作業だった。最初は面倒くさがっていたMollyだが、Vivianが屋根裏にためこんだ物品にまつわる過去の出来事を聞くにつれ、二人は親しくなってゆく。

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タフな爺さんが主人公のハードボイルド・ミステリ『Don’t Ever Get Old』

著者:Daniel Friedman

ハードカバー: 294ページ

出版社: Minotaur Books

ISBN-10: 0312606931

発売日: 2012/5/22

適正年齢:PG15(高校生以上)、性的な話題はあるがシーンはない。過剰ではないが、バイオレンスあり。

難易度:上級レベル(文法はシンプルで入り込みやすいが、ユーモアのセンスを理解するためには、歴史や文化の知識と英語の本を読み慣れている必要がある)

ジャンル:ミステリ(犯罪小説)、ユーモア風刺小説

キーワード:ハードボイルド、ナチスドイツ、ユダヤ人文化、高齢者問題、インターネット

2013年エドガー賞(MWA賞)処女長編部門候補作


 

Buck Schatz(バック・シャッツ)は、かつてメンフィス市殺人課の有名な暴れん坊警官だったが、87歳になって体力も記憶力も衰えた今では、家で(保守的なテレビチャンネルとして知られる)Foxニュースを観るだけの退屈な生活を送っている。

第二次世界大戦を一緒に戦った友人のJim Wallaceから死の床に呼び出されても、人嫌いのBuckはテレビ番組を見逃したくないから無視するつもりでいた。けれども、長年連れ添った妻に促されてしぶしぶ会いにゆく。死を目前にして罪の赦免を求めるJimが告白したのは、収容所でBuckを殺しかけたナチス親衛隊将校のZieglerから戦後に金塊の賄賂を受け取って逃したというとんでもない事実だった。

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